第十六話 仲間と修羅場
スピードを倒した俺はゲヒール盗賊団の一人バブルが蝋人形にされているのを見て仲間にするべく交渉する事にした。
「セワスル、蝋を溶かしてくれ。」
「了解しました。」
「エイルは蝋が溶けたらヒールで蘇生してくれ。」
「はい、御主人様。 ヒール!」
セワスルに指示すると俊足紋が光り蝋を溶かしていく、倒れ込むバブルの身体を支えた状態でエイルにヒールで蘇生してもらう。
「うーん、は!? いや、死ぬのは嫌ああああああああ!! 助けて何でもするちゃら!!」
するとどうだろうか、死後硬直が解け支えていた手に柔らかな感触がありバブルは気が付いたのか殺される前の記憶で錯乱状態になっている。
「ん? 今何でもするって言ったか?」
「何でもするから殺さないで!!」
「安心しろ、俺の側に居れば死なさないから。」
「え、誰ちゃ?」
「全く命の恩人に対して拒絶しまくるとか、どういう神経してんだ?」
「はっ!? ちょっ、何処触ってるちゃ!!」
「あー悪い立てるか?」
「もう大丈夫だから離すちゃ……。」
(あ、あんなとこ触られたらこの人と結婚するしかないちゃ。 顔も好みだし、性格も良くて、それに抱かれてた時に筋肉凄く逞しかったちゃ………抱かれて? もしかして、今のでウチ妊娠したちゃ? 聴いた事あるちゃ、女の子が男の人に抱かれたら子供が出来るちゃて。)
バブルは俺から離れると長々と考え込み怒った表情から急に赤面し、俺の顔や体付きを自分の顔を覆った両手の指の間からチラチラと見てきては何故かお腹を擦る。
「どうした? お腹でも痛いのか?」
「わ、解ってる癖に……不束者ですが宜しくお願いするちゃダーリン♡」
「まあ、よくわからんが仲間になってはくれるみたいだなよろしく。」
「聞き捨てなりませんね。」
「そうですよ御主人様は貴方一人の旦那様じゃないんですから!」
「ワタクシもその一人ですわ!」
「何言ってるちゃ、ウチのお腹にはもう新しい命が宿ってるちゃ!」
「え? 何言ってんのお前?」
「寧田君、見境ななしに女の子に手を出すとかサイテー。」
「ち、違う! 誤解だノコ! 明らかにおかしいだろ!!」
バブルは俺に擦り寄るとエイルとセワスルとヒメルは面白く無さげに自分も俺の嫁候補に名乗りを上げ、ノコは何を勘違いしたのか俺が予めバブルと夜の営みを隠して妊娠させたと思われ修羅場となる。
「何やってんだか……!? センシー、スピードの死体が無くなってる!!」
「キカーヌの時と同じだな、一体何がどうなっている? これは……人形……?」
「一応、持って行くか何かしらの魔道具かもしれないし。」
センシーとスペールはスピードの死体の有った場所へと振り返るとキカーヌ同様、死体が消えている事に驚愕し近くに落ちていた人形を拾い上げ持って行く事にした。
「この人と子作りしたって本当ですか御主人様! 私も欲しいです!!」
「お、落ち着けエイル!」
「ワタシにもネダヤス様の子種を注いでください! そうです、今からでも遅くありません!! しましょう、今すぐここで!!」
「セワスルも!!」
「ネダヤスさん、ワタクシも身体が火照ってしまって駄目そうですわ♡ 暑くて暑くてたまりません!」
「服を脱ぐなヒメル! お前それでも一国の姫か!!」
「残念だけどウチが先に子宝に恵まれたから正妻はウチちゃ、また抱いて欲しいちゃね♡」
「お前は黙ってろ現況!! ノコ違うんだ、俺は何もしてないからな!!」
「あっそ。 何よ、まともなのは私とセンシーさんとスペールさんくらいなものじゃない。」
「違うって言ってるだろ!?」
次々に俺の周りに集まり、エイルは顔を赤く染めワンピースをたくし上げ口に真ん中を加え両手で見える様に縞々模様の下着を見せ付けセワスルはお尻を向け俺の股間に押し付けヒメルは服を脱ぎ捨てピンク色の下着姿で俺の腕に手を回し胸を押し付けバブルは後ろから胸を押し付けながら耳朶をハムハムしてく来て、その光景に目の当たりにしたノコは苛立ちそっぽを向く。
「お前らいい加減にしろ! 目的も果たしたんだから一度報告しに帰るのが普通だろ!!」
「も、申し訳ありませんネダヤス様……わ、ワタシとしたことが……。」
「御主人様を怒らせちゃったごめんなさい嫌いにならないで……。」
「ワタクシもやり過ぎましたわね、反省しますわ……。」
「ダーリンは優しいから許すに決まってるちゃ、ねーダーリン♡」
「はぁ…………。」
「確かにネダヤスの言う通りだな、一度チカック王にバブルの状態とこの惨状を報告するべきだ。」
「あからさまに何者か手の込んだ事をしてるに違いないしね、キカーヌとスピードの偽物まで使って。」
(次に出会す偽物はマッスルだろうね……。)
モテる男は辛いなと思いつつ、その場の空気に水を差すかの様にセンシーとスペールはチカック王への現状報告を提案する。
「ああ、俺も丁度同じ事を考えてた。 一度戻るべきだな、他に聴きたい事もあるしな。」
こうして俺達はゲヒール盗賊団の一人バブルを仲間にし、チカック城へと戻り根城の惨状を話した。
「なんと! その様な事が、しかし何故偽物と解る?」
「これだよ、スピードはこんな人形抱えてねえからな。 おそらくは本物に対するイメージを悪くするのが狙いだろうね。」
「一理有ると私も見ている。」
(ま、センシーとスペールが偽物と思いたい気持ちは解らなくも無いが残念ながら未来の本人なんだよな。 次は俺の予想ではマッスルが来てもおかしくないだろうな。)
「して、その方はゲヒール盗賊団のバブルと言ったか? 何故生かしたのかの?」
「そんなの決まってるちゃ、ダーリンは命の恩人ちゃね。 それに毎晩抱き締めてもらうちゃ♡」
チカック王はバブルを見て俺に惚れている事に気付くと、何も言わず納得したかの様に頷いた。
「うむ、そう言う事なら安心できるの。」
「俺が安心出来ないんだが? ところでキカーヌの遠征先ってこの国であってるか?」
「む、そうじゃが何か?」
「本来ならゲヒール盗賊団とぶつかる筈じゃないのか?」
「いやはや、ネダヤス殿は誤魔化せぬの、確かにキカーヌは元々ゲヒール盗賊団の討伐の為にツヨスギール王国から遠征に来てもらったが緊急事態が起きての。」
「緊急事態?」
「洞窟の方とは逆方向から大量の魔物の群れがこちらに近付いて来とると報告があったのだ。 しかもじゃ、討伐に向かった兵士は皆疲労困憊じゃ理由を聴いてみたらなんと倒しても倒しても魔物が立ち上がり襲って来てを繰り返し挙げ句今もまだ戦い続けている兵士達に物資を贈る毎日を繰り返しておる。」
「なら俺がなんとかしてみる。」
「そうか、気持ちは有り難いが……いやお願いしよう現状を打開する策が思い付かぬのでな。 だが今は休むが良い、明日に向けて体力を回復しておくが良いぞ。」
チカック王に現状報告をし更に遠征に行っているキカーヌの情報を聴き直ぐに向かおうと思ったが止められ休息を摂る事になった。




