第十五話 エルフの縄張りとカニバリスト
スピードの吉報を待つ未来のツヨスギール王はセンシーとスペールの二人を同時にチェスで相手していた。
「ではルークをここに。」
「アタシはビショップをこの位置に置く。」
「中々、攻めて来るではないか……だが甘いぞダブルチェックメイト。」
「御見逸れしました。」
「負けたね、何がいけなかったのか。」
「さて、そろそろチェス盤から離れるとしようかの。」
ツヨスギール王とセンシーとスペールはチェス盤から離れた瞬間、宙にスピードの死体が出現し盤面からコマが散らばる。
「本当にやられてやんの。」
「国王陛下の仰られた通りになるとはな。」
「蘇生させてやるかの、リザレクション。」
「んあ、ここは何処ぜよ? ミカちゃん、ミカちゃんは!? ミカちゃんは何処ぜよ!! キェアアアア!!」
死体を蘇生させるとスピードは手に持っていた筈の人形が無い事に気付き発狂する。
「落ち着かんか馬鹿者!」
「だってミカちゃんが、ミカちゃんがああああ!!」
「駄目だこいつ、てかそんなに大事な物なら持ってくなよな。」
「まだチャンスはあるんだ、次に備えれば良いだろ?」
「ぐぬぅ……己ネダヤスぅ! 必ずミカちゃんの仇は取るぜよ!!」
「フン、速いだけでは務まら無かったようだね。」
「次はマッスルが行くのかの?」
「勿論、自分なら待ち伏せなんてせずに不意打ちが打倒。」
「まあ、無理だとは思うがやれるだけやって来ると良い。」
「フン、行って来る。」
マッスルはスイッチを押し過去へと飛んでいく。
「さてとスピードよ、主にも部屋を用意しておいたぞい。 ワシの力で楽に力を倍増出来る部屋をな。 誰か案内してやれ。」
「はっ! スピード様こちらへ。」
「次は絶対に息の根を止めてやるぜよ。」
スピードは兵士に連れられキカーヌ同様ツヨスギール王の用意した部屋へと入り、センシーとスペールも解散する。
「おい、スペール部屋に戻るのではないのか?」
「ああ、アタシはちょっと魔族の女と遊んで来るよ。」
「遊びねえ、あんまりやり過ぎるんじゃないぞ。」
「分かってるって。」
そう言ってスペールは地下に投獄しているベアトリスの元へと向かう。
「こ、殺せ……何をしたところで貴様らにネダヤス様に関する情報など何も無いぞ。」
「そんくらい知ってるよ、アタシはどうしても魔族の中身がどうなってるのか知りたくてね。」
「これ以上何をする気だ!?」
「今に分かるよ、手足が無いから運ぶのも簡単ね。」
「何処へ連れて行くだ! 止めろ!! うああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ベアトリスを台座に乗せ服を開けさせと首と腰の辺りを拘束するとスペールはメスを取り出し鳩尾の近くに持っていき興奮した表情でゾリゾリと腹膜を丁寧に下腹部まで切り終えると皮膚を外側へと伸ばしピンで止めて行き内蔵が見える様にする。
「あははは♪ ベアトリスちゃんの恥ずかしいところ丸見えだねえ♪ 世の中の男が見たら絶対夜のオカズにされるのは間違いないわね!」
「はっ、はっ、もう気が済んだだろ…………元に……戻して…………。」
「だーめ、まだ実験したりないもの触ったらどんな反応するのかな?」
「いや、止めてお願い! いやああああああああああああああああ!! 触らないでええええええ!!」
「凄い凄い! 脈が早くなった!!」
ベアトリスは涙を流しながら止める様、懇願するが聞き入れてもらえず脈打つ臓物を肺、心臓、胃袋、肝臓、腎臓、膵臓、大腸、小腸の順になぞっていくと更に脈拍が早くなりバクバクと音を鳴らす。
「本当にお願い、もう止めて……。」
「これからじゃない、そうだ味も見ておこう♪」
「ひっ! いや、いやああああああああああああああああ!!」
スペールはさっきとは逆の順序で脈打つベアトリスの臓器をゆっくりねっとりと舐めていく。
「ぺろ、不思議だよね? 大腸とか小腸てこんなに綺麗な色してるのに内側では汚物精製してるんだよ、でも外側はこんなにヌルヌルで味も中々なのよね。」
「そんなとこ舐めないでええええええ!!」
「ん、やっぱり肝臓は舐めても触っても反応しない不思議だねえ。 一番反応があるのはどっちかな? 先に心臓からね。」
「ひぅっ! やあ!!」
「速い速ーい、心臓めちゃくちゃ速くなった! 肺はどうかな?」
「うっく……! あ……ああ…………やぁ………………。」
「あっはは! やだあ、気持ち良すぎて失禁しちゃった? ごめんねえ、刺激が強かったねえ? あら、気絶しちゃたか……つまんないの。 元に戻しておくかな。」
ベアトリスは内蔵を刺激された事により失禁し気を失う、その後スペールら針と糸を取り出し腹を縫い合わせ元に戻し濡れた箇所を魔法で乾かすと再びベアトリスを地下牢へと戻す。
その頃、マッスルは森の中へと転移していた。
「フン、思い通りの場所に出ないのは欠陥じゃないか?」
「貴様何者だ! ここが我らエルフ族の敷地だと言う事を知らない訳ではあるまいな!?」
「フン、囲まれてるな……腹拵えには丁度良いか。」
マッスルの様子を伺う様に弓を引き矢をつがい狙いを定める数人の金髪で翠色の瞳をしたエルフが問いかける。
「聞いているの……か…………!?」
「グチャグチャ。」
膝を曲げ脹脛と太腿に力を込めたマッスルは木の上に居る男のエルフ目掛けて高速で跳躍するとそのまま頭部をバクリとたべ、男のエルフは首から上がなくなり何が起きたのか解らず暫く狼狽えていたが地面に落ちると動かなくなる。
「こいつを仕留めろおおおお!!」
「よくもディーンを殺ってくれたな!!」
「これでも喰らいやがれ!!」
「なっ!? 効いてないだと!!」
「フン、無駄に決まっているだろう? ここは貴様らの狩り場ではなく自分の食卓なのだからな!」
「逃げろ! アーチは里の皆にこの事を伝えるんだ!!」
「だが、私とてエルフの戦士だ! 敵に背を向けるなど!!」
「今は正しい選択をする時だ! 俺達が殿をする、早く行け!!」
「くっ、分かった…………死ぬなよ……。」
「「当然!」」
「フン、友情ごっこで自分に勝てると思うなよ?」
アーチは二人のエルフを残し里へと化け物が現れた事を知らせに走るが残った二人のエルフは生きたままマッスルに手も足も出ずに喰われる事になった。