第十四話 俊足のスピード
翌朝チカック王に呼び出されゲヒール盗賊団の一人バブルのスキルを聞かされ、そのスキルに対抗出来るノコのスキルがスキル無効である事を告げ討伐を願い出た。
「王様さ、バブルのスキルは全身が水になるから誰も手が付けられないからノコに戦わせるのか?」
「左様、他に手が思い付かんのでな。 ノコよ、頼んだぞ。」
「え、その……。」
「安心しろ、俺が何とかするから。」
「うん……。」
「それで場所は何処なんだ?」
「それはワタクシが案内しますわ、遠く離れた洞窟を根城にしているはずです。」
「うむ、娘を頼んだぞネダヤス殿。」
俺達はヒメルに案内され盗賊団のアジトの洞窟に辿り着くと周囲には何かで切り裂かれたかの様な人体がバラバラにされた跡があり腐臭が漂っていた。
「これは酷いな。」
「こんな事出来るのは……。」
(スピード、まさかキカーヌに続いてお前まで……。)
死体を見たセンシーとスペールの顔には誰かやったのか理解しているかの様に悲しい表情が浮かぶ。
「うっ……えほっ……、げほっ…………!」
「ノコ、あんま無理すんな。」
「御主人様……。」
「ネダヤス様、あちらの洞窟の奥から人の気配を感じます。 それも尋常じゃないくらいの狂った殺気を……。」
「俺も感じてる、これはスピード……だろうな。」
「どうします、ネダヤスさん行きますか?」
「奴の狙いは俺だ、下手に入ると皆を危険に晒しちまうな。」
(そうだ! 良い事考えた!!)
俺の脳裏に未来でスピードにされた殺され方がフラッシュバックする。
ー過去ー
「ネダヤスちゃあん、今度は何分息止められるかなあ?」
「ごぼがぼがばばば!」
「え、なに? 聞こえないぜよ?」
俺はスピードに箱状の者を装着され、その中に大量の水を注がれる。
「無駄ぜよ、幾ら水を抜こうとしても密閉してっから漏水する事は無いぜよ!」
「かば…………………。」
「ネダヤスちゃん? あら、新記録ぜよ! 今回は10分も息止めてられたぜよね〜ひはははは!!」
息が出来ず水を出す為に箱を床や壁にぶつけるも頑丈で水を抜こうと逆さまになったところで意味はなく窒息死してしまう。 そんな苦しみをスピードは何度も俺に味わわせ楽しんでいた。
ー現在ー
「さて、未来のスピードに俺からとっておきのプレゼントをしてやるか。」
「ネダヤスさん、何をする気ですか?」
「見てれば分かる、付与発動! 拳に粘着と追跡を付与!! 更にロケットパーンチ!!」
「!?」
俺は洞窟に向かい右手を振り抜くと拳が手首から離れ、物凄い速さでスピードの元へと飛んでいき顔面へとパァンとぶつかる事でスライム状になり鼻と口を塞ぐ。
(何ぜよ!? 息が出来んぜよ!! まさか、こんな手を使って来ようとは…………こんな物!!)
必死に顔にへばり付いたスライムを引き剥がそうとするも粘着質でべったりしており手までがくっつきスピードは地面に転がり、次第に酸欠状態になり顔周りが紫に変色していく。
(駄目ぜよ! 全然剥がれ………、……………………。)
あまりの苦しさにのた打ち回るスピードだったか限界を迎え白目を剥き動かなくなった。
「そろそろかな?」
「何がだ?」
「この洞窟の奥に居るのはスピードだろうな、センシーとスペールも気付いてるんだろ?」
「それは…………。」
「そうだな………。」
「あ、そうだノコ大丈夫か?」
「うん、少しは良くなったけど……寧田君は平気なの?」
「平気って訳じゃないが、この世界は殺らなきゃ殺られるだけだな。」
「殺らなきゃ……殺られる…………。」
(私この世界で生きていけるのかな…………。)
「そんな顔するなよ、俺が護ってやるから。」
「御主人様、私は?」
「ネダヤス様、ワタシの事もお忘れなく。」
「分かってるよ、じゃあ行くか。」
腕を元の状態に戻し、スピードが窒息死するのを待っている間にノコの気分も良くなるがバラバラ死体を見た後という事もあり青褪めた顔で身体を震わせ俺に怖くないか確認して来た。
ノコの言葉に対し俺はこの世界の未来を知っている為、最悪な未来を回避する為に自分の考えを話し洞窟へと向かう。
「やっぱ暗いな。」
「松明なんて持って来てないぞ。」
「でしたらワタクシにお任せください。」
「うわ眩しい!?」
ある程度進むと別れ道になっており奥が見えない様になっていたがヒメルはピカッと全身を光らせ自らが光源になる。
しかし、そのせいか薄くヒメルの下着が服の上から透けて見え本人は顔を赤らめていた。
「ヒメル、そんな事出来たんだな。」
「あまり見ないでください、ネダヤスさん恥ずかしいです。」
「本当だよ! 寧田君ヒメルさんをジロジロ見てないで前観なさい!!」
「分かったから首をゴキッてすんな! 殺す気か!?」
「御主人様!? 今治しますヒール!」
「ノコ様、いくらなんでもネダヤス様に厳しすぎますよ!?」
「はぁ、何をやってんだか……アタシらは先行っとくぞ。」
「茶番が済んだなら早く来ると良い。」
センシーとスペールは暗い洞窟でも、まるで一度来た事があるかの様にスムーズに光源無しでも奥へと進んでいく。
「だ、大丈夫ですか? ネダヤスさん。」
「何とか……。」
(ノコの奴ヤケに怒ってんのは何でだ? 大方予想はついてるけど俺に帰れない事を八つ当たりされても困るんだがな。)
(何よ寧田君たら、前はあんなにスケベじゃ無かったのに頭打ってエッチになっちゃった?)
「で、では進みましょうか……それにワタクシが先頭を行きませんと進めないでしょうし見られてもネダヤスさんなら恥ずかしくありませんよ?」
(むしろ、もっと見て欲しいですし♡)
「そう………。」
そんなこんなで暫く進む最奥だろうか松明が立てられた部屋になっている場所には先に行ったセンシーとスペールがスピードの死体を調べていた。
「こりゃ、やっぱスピードだな間違いない。」
「確かに見た目はスピードだが、こんな人形持ってたか?」
スピードの死体からセンシーは人形を拾い上げ不思議そうに見つめる。
「おそらく偽物だろうな、死体だけどステータスを調べてみたらレベル100だったぞ。」
「あとは、何だこれは? 蝋人形か?」
「バブル!?」
部屋には他にバラバラになった死体と蝋人形にされた人物が何者かから逃げる様な仕草で固まっていた。
「へえ、これがバブルってのか。」
「手間が省けて良かったんじゃないか?」
「倒すべき相手だったんだろ? 結果オーライじゃないか。」
「…………、セワスル蝋を溶かせるか?」
「出来ますが、どうするおつもりで?」
「恩を売る。」
「「はあ!?」」
「了解しました。」
「エイルも蘇生させてくれ。」
「分かりました御主人様!」
俺は恐怖に引き攣った表情で蝋人形にされたバブルを仲間に引き入れる為にセワスルとエイルに蘇生させ交渉を講じる事にした。




