第十二話 人形オタクと蝋人形
未来では円卓会議室にて倒されたキカーヌが死体のまま、戻って来ていた。
「あーらら、あっさり殺られて帰って来たぜよ。」
「鎧ごと貫かれてるわね顔もボコボコだし。」
「どうせ舐めプでもしてたんだろうね。」
「でも貴重なタンパク質だよ? 食べて良い?」
それぞれキカーヌの
「まあ待て、ワシの力で蘇生できるのだ。 今のままでは勝てぬ事くらい理解しとるからな。」
「残念、食べられないのかあ。」
「何でも直ぐに食べようとすんなぜよ、これだから生きた人間は扱いが難しいぜよ。 ねえ、ミカちゃあん♪」
マッスルのカニバリズムを気味悪がるスピードは手に持った着せ替え人形に語りかけ頭を撫でる。
「人形オタクのアンタも相当だけどね。」
「では蘇生させるぞ、リザレクション!」
ツヨスギール王のリザレクションにて復活を果たしたキカーヌはキョロキョロと辺りを見渡し自分が未来へと帰還している事に気付く。
「お、俺は一体!?」
「キカーヌは脳みそまどカチカチのセッカチちゃんだからねえ、次は俺が行くぜよ。」
「何だとスピード! 速いだけの癖に良い気になりやがって!!」
「そこまでじゃ、キカーヌよ。」
「はっ、国王陛下申し訳ありません! このキカーヌ、油断してしまいました。」
「簡単に殺れるとは思っておらぬ、主にはワシの極王紋の力を注いだ部屋を使いパワーアップしてくるがよいぞ。 誰かキカーヌをあの部屋に案内してやれ。」
「はっ! 承知致しましたキカーヌ様、どうぞこちらへ。」
キカーヌは兵士に連れて行かれ、とある部屋へと辿り着き中へと入る。
「見た所何も無い部屋だな………!? な、何だ? 足を踏み入れた瞬間物凄い身体が軽くなったぞ!?」
(この部屋の重力が違うのか? いや、俺自身がパワーアップしてるのか……こいつは良い次に相見える時を楽しみにしてろよネダヤス・ゾテーメラ!!)
そして会議室ではスピードが片手にスキル封じの手械を持ち、周囲に見せていた。
「スキル封じの手械? 何に使う気だスピード、そんな物手にしてたら貴様もスキルが使えんだろ?」
「解ってないねえ、センシーもキカーヌと同じでオツムカチカチなんかぜよ? こいつをネダヤスに付けりゃ奴は文字通り手も足も出ない芋虫状態って訳よ理解したぜよ?」
「なるほどね、そんな上手くいくかな?」
「そこは俺の俊足紋の力を使えば楽勝ぜよ、暇潰しついでに新しく人形ちゃんでも飾って待たせてもらうぜよ。 悪いけどマッスルの出番は来ないと思うがお土産に何人か新鮮な状態で持って来てやるから許すぜよ。」
スピードは自信満々に作戦を披露し終えると抱えた人形と共にネダヤスの居る時間軸へと飛んでいった。
「流石のネダヤスもスピードのキレる頭とあの速さには着いていけないだろうな。」
「フン、スピードの話しには着いていけん。 新鮮な肉を剥製して飾るとは誠に勿体ない事をする。」
その頃、過去に飛んだスピードはネダヤス達が次に向かう筈の盗賊団のアジトが根城にしている洞窟の近くへと降り立ちナイフを向けられていた。
「何者だ貴様!」
「何処から現れた! 女の人形なんて抱えて気持ち悪い奴め!!」
「あ? 今なんつった、ミカちゃんを気持ち悪いつったんか?」
「やっちまえ! キモい人形オタクが我らゲヒール盗賊団に勝てると…………?」
スピードが腕を軽く振り上げると盗賊の一人は縦に身体が真っ二つになり地面に転がる。
「ひ、ひいっ! 何だ、何が起こったんだ!?」
「一つ確かな事を教えてやるぜよ、何が起こったって言ったか? 俺が怒ったんだよ、理解したか? クソ雑魚共!!」
「うわあああああ! 助けてくれええええ!!」
何が起こったのか理解出来ない盗賊団は逃げ惑うが音もなく姿を消したスピードによって一人、また一人と身体をバラバラにされていく。
「ははははは! 俺を怒らせて生きて帰れると思うなよ!! 貴様らの様な奴らは即刻死刑ぜよ!!」
「何だ騒がしい。」
「ば、バブル様! ば、化け物が!!」
「!?」
盗賊団、水泡のバブルの元へ現状を知らせに来た部下は何かを言う前にバラバラにされ血溜まりが出来る。
「な、何が起きてる?」
「はぁい、君は確かゲヒール盗賊団三番隊隊長の水泡のバブルぜよね?」
「そうだが、何者だ! ウチの部下を散々惨殺するとは命が惜しくは無い様だな!!」
「丁度良いぜよ、本命のネダヤスちゃんに付ける前にこいつを試す相手にしては十分ぜよ。」
スピードの眼の前には水色の髪で翠色の瞳をした控えめな胸をした女性が睨み付けている。
「ウチのスキルで溺死させてやる!」
「良いねえ、全身水分になって一切打撃も斬撃も効かなくなるんだろう?」
「何故それを!? だが、スキルを発動すればウチは無敵ちゃ!!」
「さあてと試して見るぜよ。」
「無駄ちゃ、このまま一気に取り込んで……!?」
スピードはバブル部下にした様にバラバラにしようとカマイタチを放つがバシャバシャと全身が水分の状態の相手には全く効かず元の状態に戻られるが驚くどころか冷静に動きを読みスキル封じの手械を左腕に装着させる。
「何だこれはスキルが使えなくなった!?」
「実験に付き合ってもらうぜよ、あっさりバラバラにしたんじゃあ面白くないぜよな。」
「ふん、ウチを甘くみるなよ? レベル48も有るちゃ、スキルが無くても殴り合いで……!?」
「殴り合いで何ぜよ? まさか、俺のレベルが100なのを知って言ってるぜよ?」
「レベル……100……。」
態とらしくスピードらステータスをオープンし見せ付けるとバブルは自分が高レベルの怪物と対峙している事を諭される。
「手加減するから死ぬんじゃないぜよ。」
「ぐはっ…………。」
「良いねえ、軽く殴っただけでもスキルが発動しないのが解るぜよ。」
「ぐっ、なら何故……貴様は使える……?」
「残念ながら俺のは俊足紋によるものぜよ、スキルは持ってはいるが無関係って事ぜよ。 理解したかい?」
「何だそれは、止めろ!!」
スピードは蹲るバブルの襟首を持ち上げ顔を上げさせながら解説すると蝋を取り出しバブルへと丁寧にかけていき俊足紋の力で時間を操作し直ぐに固めていく。
「君には俺の実験を手伝ってくれたからね、綺麗なお人形さんにしてあげるぜよ。」
「やだ、誰か…………誰かああああああああ……!!」
嫌がり暴れるバブルだがスピードの異様な手際の良さにより、最終的には蝋人形へと姿を変えた。