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ブルーライトニング 第2部 第33章

新たなテロがプレストシティに迫る。マルスはプロメテウスとともに迎撃に飛び立った。


 22時過ぎ、プレスト海軍基地は警戒態勢に入った。夜間に航路を外れてプレストシティに接近する船舶が確認されたからである。

「あいつらか・・・」

 その日は帰宅せず、スコット大将は指揮卓に座り、状況を確認していた。対応するサムは、

「オルソンレポートによると、今夜あたり、襲撃があるとありましたし、例のカタリナの声明もありました。間違いないでしょう」と答えた。

 ネット上に駆け巡ったセレクターズの指導者「カタリナ」の声明は、今夜、正義の報復攻撃を行うとの内容だった。映像はプレスト海軍で解析し、合成された映像であることを突き止めた。プレスト海軍の報告を受け、リヨン大統領も何者かが合成した映像であり、カタリナという人物は存在しないと声明を出していた。それは、カタリナに心酔する人間への抑止をはかる目的で行われた。こうしたカタリナの声明に答え、各地でテロが引き起こされることが、懸念されていたからである。一方で、プレスト海軍は武装テロに警戒を向けていた。オルソンレポートがダグラス社に対する大規模な破壊テロの可能性をつかんでいたからである。

「ガバメント本社は壊滅したはずだ。今回のテロはどこが黒幕だ」

 スコットの問いにオルソンは、

「まだ、確定できるほどの証拠はありませんが、映像の出所から、コーダシティの支社かと思われます」と答える。

「やられっぱなしにはなりたくない。できるだけ、頼む」

「はい。ガバメントのコーダ支社は本社機能を引き継いでいるので、重点的にマークしていました。現在、接近中の輸送船はコーダシティのドッグから出港しているので、それらが動き出せば、確実に黒幕はコーダシティと断定できます」

「さすが、抜け目ないな」

「警戒中の輸送船は、まもなく警戒圏に入ります。ファントムを出撃させます」とサムはスコットに告げた。

「うん」


 警戒中のレナとルーナのドルフィンは輸送船に近づくと交信を試みた。しかし、返答はなかった。

「無人船かな」とレナが言うと、

「片道切符の生還できない作戦に、人間が志願するとは思えないから、無人でしょうね」とルーナが意見を述べる。

 レナは高感度カメラで船影をとらえ、コーダシティから出航した輸送船と照合する。

「ぴったり一致するわ。これで、こいつがテロを起こしたら、コーダシティが黒幕と断定できる。さて、私たちがいる前で、化けの皮を脱ぐかしら」

「そろそろミサイルの射程圏にはいるから、動き出すんじゃないかしら」

 射撃レーダーの照射を受けたため、レナとルーナは妨害電波を発信しながら、機体を激しく旋回させる。一条の対空レーザーが空を切った。ルーナは警告のロケット弾を発射し、攻撃を宣言する。

「貴船の攻撃行動を認め、攻撃する」

 が、返答は無く、ミサイルが4本発射された。

「巡航ミサイルか」

 ルーナとレナは機体を翻し、巡航ミサイルを追う。すでにマルスがプロメテウスで待機しているので、これ以上の輸送船への攻撃は不要だった。

 輸送船のハッチが開き、2機のドラグーンが飛び出してきた。しかし、それは上空から発射されたビームにより打ち抜かれ、1機は火だるまになり、輸送船を炎上させた。

「ルーナ、レナ、1機のドラグーンが射出されたので、これから攻撃する。ミサイルはお願い」と、マルスはルーナとレナに告げる。

「わかったわ。任せて!」

 プロメテウスは、なおもミサイルを撃とうとする輸送船にビームを浴びせ、ミサイルランチャーを破壊する。そのすきに、1機のドラグーンが海上をばく進する。

 大破炎上する輸送船にとどめのビームを浴びせ、撃沈すると、プロメテウスはプレストシティへ向かうドラグーンを追う。

「ドラグーンは遠距離攻撃じゃ倒せない、接近する。いくよ! プロメテウス」

「了解」

 プロメテウスはフライトユニットを切り離し、急降下でドラグーンへと迫る。それを認識したドラグーンは対空射撃を開始した。マルスはプロメテウスの軌道を変え、射線を避けると、シールドを解いたドラグーンに、ビームを発射した。プロメテウスの狙いは正確に、ドラグーンシールド発生器を破壊する。

 プロメテウスはライトサーベルを抜き、一気に距離を詰めるとドラグーンを一撃で真っ二つにした。ほぼ、同時に、ルーナとレナは巡航ミサイルの撃墜に成功した。


 玲子はただならぬ警報に飛び起き、傍らで寝ていたトリオも体を起こす。胸を締め付けるような不安、トリオは玲子に、

「お兄ちゃんから、大丈夫だって、お姉ちゃんにつたえてって連絡が来たよ」

「マルスから?」

「うん、お兄ちゃんが出撃しているみたい。大丈夫だよ」

 上原とロビーが玲子の様子を見に部屋に来た。

「玲子、大丈夫?」と、上原は真っ先に聞いた。空襲警報の恐怖は、玲子にどんな影響を与えるかわからないからだ。

「うん、大丈夫。マルスが出撃しているって」

「ええ、今、テロリストの船を撃破したところです。今のところはテロリストの戦力を圧倒していますので、とくに、不安は無いでしょう」と、ロビーが言った。

 やや、おくれて、敷島が部屋に駆けつけた。

「玲子、大丈夫か」

「大丈夫よ、伯父さん」

「正直、プレスト海軍が今夜あたりって予測していたから、準備万端で待ち構えていたのよ。テロリストは奇襲を狙ったのでしょうけど、全然、奇襲になってないのが皮肉ね」と上原が言うと、敷島は、

「海軍はそんな情報も得ていたのか。どうりで、プロメテウスの整備を昨日のうちに終わらせろと言うわけだ」と言う。

「なにもかも、わかっていたのね、小母さん。だからマルスに会いに行ったらと私に言ったのね」

「まあね、マルスにとって、玲子に会うことが一番の元気づけだからね」

 そんな話をしているとロビーがぼそりと言った。

「ああ、マルスがドラグーンを破壊したようです。発射された巡航ミサイルもルーナとレナが撃墜しました。テロリストは制圧したようです。さすがですね。これに呼応して、シティ内のテロが起こらなければ、これで終わりでしょう」

 警報解除のアナウンスがあり、テロリストの制圧が完了したとの発表があった。

「早いもんだな。さすが、海軍は手際がいい」と敷島が感心していると、上原は玲子に、「大丈夫? 眠れる? 玲子」

「ええ、大丈夫、今はトリオがいるし・・・」

 上原は少し安心したようだった。

「トリオ、玲子をお願いね」

「はい、小母さん」

「じゃあ、警報も解除されたから、私たちも休みましょう」と敷島を促し、寝室に戻っていった。

 シティ内に潜入していたテロロボットは、ジェイワンやゼムが率いる部隊が制圧し、事なきを得ていた。



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