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第31章

 マルスは無邪気にもマイクと何を話したのかと玲子に聞く。マルスは昼間の玲子と瑞穂の会話を聞いていたので、気になっていたのだ。

「あの二人、何を話しているんでしょう」とノーマがサムに聞いた。

「多分、二人にとって、いいことだよ」

 メアリは無邪気にマルス達とゲームを楽しんでいる。

「俺も決着をつけるかなあ」とサムがぽつりと言うと、

「何の決着?」とめざとくノーマが聞いてきた。

「野暮なことを聞くな。そのうちわかる」

 ノーマはずいっとサムに顔を寄せる。

「それは私にも関係すること?」

「関係あるさ。まあ、悪いようにはしないよ。ノーマとはずっと一緒にいたいからな」

「それならいい。私もサムと一緒にいたいから」

 ノーマがサムの首筋に抱きついたとき、マイクと玲子がリビングに戻ってきた。サムはマイクの表情をみて、無事、いい感じになったなと悟った。

「話、終わったかい?」と、サムが聞くと、マイクは、

「終わった」と素っ気なく答えた。

(照れてるな、あいつ)とサムは思ったが口にしない。玲子も少し、落ち着かない様子だった。

(玲子もマイクと向き合う余裕ができたのだな)

 それは、いいことなのだとサムは思う。

「玲子」とサムは緊張気味の玲子に声をかける。

「はい?」と玲子がややうわずった返事をする。

「まあ、ゆっくりとくつろげ、家にいるときみたいに・・・ 遠慮はいらない」

「はい・・・」

 サムは一呼吸置いて、

「みんな、一休みして、何か飲まないか?」

「飲みたい」とメアリが声をあげた。

「ココアでいい?」とノーマが聞くと、

「ああ、それがいい」とサムもいい、皆もそれでいいと、賛同した。

「じゃあ、入れてくるね、エミリーも手伝って」とノーマがソファーから立ち上がる。エミリーも立ち上がって、キッチンへむかった。用意すると言ってもサムとマイクと玲子とメアリの4人分である。そのほかのメンバーはロボットなので飲食しない。時間はそれほどかからなかった。ノーマとエイミーが盆にココアのカップをのせて、運んできた。4人にココアを配ると、一息つく時間になった。

 ココアを飲む玲子を見て、トリオが、

「お姉ちゃん、ココアも好き?」と聞いてきた。

「うん、好きだよ」

「じゃあ、今度、うちでも作るね」とトリオが言うと。

「ありがと。楽しみにしてるね」と、玲子が答えた。すると、マルスが、

「トリオ、ぼくにも作り方教えて」

「うん、いいよ、一緒につくろ」と、トリオは快くマルスの申し出を受けた。玲子はいい弟に恵まれたなあと、サムは思った。


 風呂に入ったあと、マルスは玲子の髪をドライヤーで乾かしていた。トリオはマルスにその役を譲って、ベッドの上で足をバタバタさせている。トリオに比べて、マルスの手つきはおぼつかないのは仕方が無いと玲子は思っていたが、そんなマルスもかわいいと思っている。髪を乾かし終えて、マルスはドライヤーを片付けた。

「ありがとう、マルス」と玲子は髪を剥きながら言った。マルスは玲子の背中にもたれかかり、無邪気に聞いてきた。

「ねえ、お姉ちゃん、マイクと何を話していたの?」

「ええ、それを聞くの?」と、玲子が振り向きざまに聞くと、マルスは無邪気に玲子を追い込む。

「瑞穂お姉ちゃんと話してたことと関係あるの?」

 小声で話したはずなのに、マルスに聞こえていたようだった。玲子はマルスを膝の上に抱いた。

「聞いてたの?」

「聞こえちゃったの」

 マルスはいたずらっぽく笑って言った。

「マルスが生まれる前にね、マイクに告白されたことがあったの」

「告白って?」

「私のこと好きですって言われたの。でも、ずっと返事をしてなかったから、瑞穂にもそれじゃいけないと言われてね、今日、返事をしたの。私もマイクが好きですって」

 玲子の手がマルスの頬を撫でる。それはマルスも好きという気持ちの表れだった。

「お姉ちゃんは、マイクのこと好きだったんだね」

「瑞穂もだけど、マルスも私の背中を押したの。マルスがいなかったら、私はマイクの気持ちに応えられなかったと思う。だから、マルスは私の天使だよ」

「そうなの?」

「もちろん、マルスもトリオのことも好きよ。それはかわらない」

 マルスは玲子に甘えるようにもたれかかった。

「ぼくもマイクのことが好き。瑞穂お姉ちゃんや守くんや、好きな人がいっぱい増えていくの」

「いいことよ。好きな人がたくさんいるのはね」

「大好きなみんなを守りたい・・・ お姉ちゃんのそばにもいたいけど、ぼくはみんなを守るために作られたの。だから・・・」

 玲子はマルスの背中をポンポンと叩きながら、

「わかってる。マルスが好きなようにすればいいよ。でもね、マルスが私を必要とするとき、私はマルスのそばにいるから。私はマルスのお姉ちゃんだからね。それに、マルスがそばにいると、私もうれしいの。だから、おあいこだよ」

 マルスは玲子を見つめ、

「うん、お姉ちゃん」と答えた。

 トリオは二人の様子をずっと見ていたが、マルスの返事を聞いて笑みを浮かべた。トリオはベッドから降りて、玲子とマルスに抱きついた。

「ぼくはお姉ちゃんとお兄ちゃんが好き。ぼくはお兄ちゃんのこと手伝うからね。ぼくができることなら、何でも言って!」

 マルスは両手でトリオを抱いて、ほおにキスした。大好きという気持ちを込めた、マルスなりの行いだ。

「トリオ、ありがとう。ぼくはトリオがいると、お姉ちゃんのためにいろいろできるから、うれしい。ぼくがいないときは、お姉ちゃんのこと、よろしくね」

「うん」

 マルスは玲子の頬にもキスをした。玲子はマルスとトリオに続けてキスをすると、

「寝ようか」と言って、マルスを膝から下ろした。

 マルスとトリオは「はい」と言って、ベッドにあがる。トリオはマルスにくっついたので、マルスを真ん中に、川の字で寝ることになった。ダグラス家の客間のベッドだからこそできることである。

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