ブルーライトニング 第2部 第28章
お風呂上がりの玲子とマルス。玲子の髪をドライヤーで乾かすマルス。ぎごちない手つき、しかし、かわいいそこへトリオがやってくる。トリオはマルスにべったりとあまえるのだった。
風呂上がり、マルスは玲子の髪をドライヤーで乾かしていた。手つきはぎこちないのだが、玲子はそんなたどたどしい手つきもかわいいので、多少の不都合は目をつぶっている。マルスがいないときはトリオが乾かしているのだが、トリオはさすがに家事用アンドロイドだけに手つきが良い。マルスもマスターである玲子に尽くしたいと思っていることはよく理解しているので、玲子はそんなマルスの気持ちを大切にしたかった。
「だいたい、こんなところかなあ」とマルスがドライヤーを止めていうと、玲子は髪を手ですきながら、
「上出来よ。ありがとう」と言った。タイミングを合わせたのかトリオが部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん」
トリオはマルスにべったりと抱きついてきた。
「トリオ、ドライヤーを片付けたいんだけど」と、マルスが言うと、トリオは無言でマルスからドライヤーを受け取り、さっさと戸棚にしまう。もう、妨げるものがないと言わんばかりに、トリオはマルスに抱きつき、マルスが玲子にもたれかかる形になった。
「トリオ、あんまり押さないで。重い!」と玲子が笑いながらマルスを押し返す。マルスは二人にもみくちゃにされ、「お姉ちゃんもトリオもやめてえ」と二人に懇願する。マルスがジタバタしていると、やがて、玲子とトリオは押し合いをやめて、マルスの手を握った。
「やっぱり、マルスがいると、うれしい」と玲子が言った。
「お姉ちゃん?」
「マルスが無事に帰ってくれてうれしいの」
「ごめんね、一緒にいられなくて」
玲子はマルスの頬に手をあてて
「マルスのお仕事だもの。マルスが謝ることじゃないわ。みんなマルスに会いたがっていたから、明日は楽しみましょう。トリオも来てくれるわね」
「うん」
「サムの家にいくんだよね」とマルスが聞くと、
「そう、サムが招いてくれたからね。みんなでパーティーをしようって」
「誰がくるの?」
「瑞穂に守くん、恵ちゃんにユリちゃん。あとはダグラス家の人よ。みんなマルスが帰ってきたら遊ぼうって言っていたの。サムが招待してくれてありがたいわ」
「いいのかなあ、ダグラス家にお邪魔して」と、マルスは遠慮がちに言うと、
「マイクやメアリもマルスに会いたがっているから、いいんじゃないの。サムが招待してくれたのだから、気にしないの」
「そうか・・・ そうだね」
「ぼくは、お兄ちゃんと遊べたらどこでもいい」と、トリオには全く迷いがない。
「トリオはマルスが大好きなんだね」
「うん」
マルスはトリオの肩を抱いて、愛おしそうに顔を寄せる。マルスもすっかりお兄ちゃんという感じだった。
「マルスもいいお兄ちゃんだね。私はうれしいな」
「そうなの?」と、マルスがトリオの肩を抱いたまま、玲子に顔を向ける。玲子に喜ばれるとうれしいようだ。
「マルスがトリオを大切にしてくれることはとてもうれしい」
「だって、お姉ちゃんやトリオもぼくのこと、大切にしてくれてるもの。ぼくだってお姉ちゃんやトリオのこと、大切にしたいよ」
「そうね、それ、大事なことね」
トリオがふにゃっとマルスに抱きついた。しばらく抱きついていると、体をはなして、マルスの頬にキスをする。マルスもお返しにトリオの頬にキスした。
「じゃあ、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、もう寝ないとね。ぼく、おばさんのところへ行くね」
玲子はトリオを抱き寄せて頬にキスをすると、トリオもお返しのキスをして、ばいばいっと手を振った。
「おやすみなさい、お姉ちゃん、お兄ちゃん」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
トリオはそう言って部屋を出て行った。
「私たちも寝ようか」
「うん」といって、マルスは玲子の頬にキスをする。お返しに玲子もマルスの頬にキスをして、二人は横になる。横になりながら玲子は、マルスを抱きしめた。
「私ね、マルスとトリオには感謝してるの」
「何を」
「わたし、一人じゃ寝られなくて、ロビーについていてもらってたりしたんだけど、マルスやトリオが来てからは、ロビーに頼らなくてよくなって。と言っても、マルスとトリオに頼っているんだけどね」
マルスは玲子の腕のなかから這い出して言った。
「ぼくたちはべつにいいんだよ。だって、ぼくはお姉ちゃんと一緒でうれしいし。たぶん、トリオもお姉ちゃんと一緒だとうれしいんだと思う」
「トリオもマルスがいないときは私に甘えるようになったな。最初は凜としていて、頼りがいがあったけどね」
マルスは玲子の髪を撫でながら
「お姉ちゃんだったら、甘えていいと思うんだよ」
「私にとって、それが幸せなんだよ」
マルスは手を引っ込めた
「トリオはぼくにも甘えるよね」
「いいんじゃないの。かわいいでしょ」
「うん」
「マルス、私を好きになってくれて、ありがとう」
唐突に言われたことに、マルスはまっすぐに答えた。
「サムがお姉ちゃんを好きになっていいって言ってくれたんだよ。それに、お姉ちゃんと暮らしていいって」
「そうだったの。じゃあ、サムに感謝しないとね」
「うん」
眠くもないはずだが、マルスの目がとろんとしてきた。いい加減、寝ないといけないという、マルスの合図かもしれない。
「じゃあ、このへんで、マルス、おやすみなさい」
「おやすみなさい、おねえちゃん」




