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第3章 友達になって

マルス:プレスト海軍の戦闘用アンロイド。玲子の弟として暮らしている。

玲子:16歳の少女でマルスのマスター。マルスのことを弟としてかわいがっている。

瑞穂:玲子のクラスメートで親友。玲子とレナをテニス部に誘って入部させた。

恵:プレスト海軍長官「高野」の娘でリョーカのクラスメート。かつて,マルスに暴漢から救われたことがある。

ユリ:恵につきそう少女型アンドロイド。恵の護衛を兼ねている。

リョーカ:マルスと同型の戦闘用アンドロイド。今は恵のクラスメートである。

ロビー:玲子の家の家事を務めるロボット。実際はダグラス社の要人でもある玲子の伯父と小母(敷島博士と上原博士)の護衛を兼ねている。

レナ:今は玲子のクラスにいるアンドロイド。実はプレスト海軍のロボット部隊に所属するアンドロイドである。

「敷島さん、かわいいお客さんよ」とクラスメートが声をかける。見ると教室

の入り口に見覚えのある少女が立っていた。玲子はすぐに駆け寄ると、

「何か用? 恵ちゃん」

 恵は玲子を見上げながら

「マルスは今日、家にいますか?」と、聞いた。

「いるよ。留守番しているけど」

「私、マルスに会いに行ってもいいですか」

「いいよ、私は部活があるから一緒に帰れないけど、家の位置はわかる?」

「ユリが知っているみたいです」

 アンドロイドがついているのなら、間違いはないだろうと玲子は考えた。

「それから、同級生のリョーカというアンドロイドも一緒に行きたいと言って

いるので、3人で行きますけど・・・」

「いいよ、マルスに会っていって、一人で退屈しているだろうから喜ぶよ」

「ありがとうございます。今日、遊びに行きます」

 そういうと、恵は初等部の教室に向かっていった。そばに寄ってきた瑞穂

が、

「あの子、パーティに来てた子だよね。マルスと玲子が守った子?」

「ええ、マルスに会いたいんですって」

「マルスもモテるのね、私も好きだけど」と瑞穂が挑発すると、玲子は、「あ

げないよ」と、冗談めかして返す。

「まあ、マルスにもいい友達ができたんだね。よかったわ」

 二人は席に戻って話を続けた。

「マルスがいないときは玲子はどうしてるの?」

 瑞穂はレナの一件から、マルスの事情をもかなり知ることとなっていた。

「どうしてるのって、ロビーもいるし、そんなに寂しくはないわ。マルスが来

る前はずっとそうだったんだし」

 瑞穂は急にまじめな顔つきになった。

「でもさ、いまじゃ、マルスがいないなんて考えられないよね。玲子はいいお

姉さんて感じだし、マルスもかわいい弟だし」

「そうね、マルスはほかのアンドロイドとはちょっと違うの。おばさんに聞い

たら、製品化されているアンドロイドとマルスの思考パターンは違うんですっ

て。そこがかわいらしさになってるんだろうって」

 瑞穂はでれっとした顔で、

「へえ、マルスはそれでかわいいんだ。ほんと、甘えられると、かわいいよね

え」

 玲子に対するほどではないにせよ、マルスは瑞穂にも甘えることがある。甘

えると瑞穂が喜ぶということもあるが、マルスが瑞穂を信頼している証でもあ

る。


 恵はユリの道案内で玲子の家を訪れた。一緒にリョーカもついてきている。

「いらっしゃい」とマルスが出迎える。3人は居間に通されると、マルスが恵

のために冷たいジュースとお菓子を持ってきた。

「お姉ちゃんが、だしていいよっていったお菓子だから。このお菓子、お姉ち

ゃんしか食べないんだ」

「そうなんだ・・・」と恵は笑いながら答える。実際、マルスが食べるわけが

ないから、玲子が自分用に用意しているお菓子なのだろう。恵は単刀直入に話

題を切り出した。

「ねえ、マルス、学校へはもう戻らないの?」

「うん、仕事があるから」

「仕事って、海軍の仕事?」

 もう、事実を知っている恵には、隠す必要はなかった。

「そうだよ」

「海軍での仕事って、シティを守ること?」

「そうだよ。それがぼくが作られた理由だから」

 恵はリョーカの方を見て言った。

「リョーカはマルスにそっくりだよね。先生はリョーカとマルスはアンドロイ

ドの試作機でテストのために学校に来ているって言っていたけど、リョーカも

マルスと同じ、海軍のロボットなの?」

 リョーカはうなずいて、

「そうよ」と答えた。その答で、恵は、リョーカもそう長い間、学校に通うわ

けではないと悟った。

「ねえ、マルス、私、これからもマルスと友達でいたいな。リョーカともだ

よ」

「でも、いつでも会えるわけじゃないよ」

「玲子さんも、すっとソレイユと会っていたんでしょ」

 恵の真摯な願いに、マルスとリョーカは応えたいと思った。

「いいよ、恵ちゃんが会いたいときに、いつも会えるわけじゃないけど」

「ねえ、玲子さんとソレイユってどうやって連絡していたの?」

「ハンディでだよ。ぼくらの通信装置はハンディと連絡することができるか

ら、ハンディに連絡先を登録していたの」

「じゃあ、私のハンディに連絡先を送ってくれる? リョーカも」

 マルスは恵が差し出したハンディを見つめ、その連絡コードを読み取ると、

自分のコードを送り込んだ。そして、リョーカも・・・ 短い発信音がハンデ

ィから聞こえ、恵が確認するとマルスとリョーカの連絡コードが書き込まれて

いた。

「ありがとう」

「念のために言っておくけど、僕たちは民間回線と連絡を絶って行動している

ときがあるから、いつでも連絡できるわけじゃないよ。ただ、メールだったら

サーバーに保管されるから、確実に届くけど」

「そう、じゃあ、メールで送るようにするね」

 恵はハンディをポケットにしまうと、胸に秘めていた疑問を口にした。

「マルスって、この前の学校襲撃事件のとき、何かやっていたの? やってた

んでしょ?」

 半ば、確信している聞き方だった。

「ロボット達の指揮管制をやっていたの。学校に来たのは、ぼくの指揮下にあ

る仲間だから。いずれはリョーカも加わるけど」

「やっぱり、マルスはみんなを助けてくれたんだね」

「仲間のみんなが頑張ってくれたんだよ」と、マルスは控えめだった。

「マルスが直接戦ったことはあるの?」

「あるよ、詳しくは話せないけど、ぼくもリョーカもテロリストと戦ったこと

があるよ」

 淡々と話すマルスが、自分より年下の男の子の姿をしているため、恵には現

実離れした話を聞いているような気がしている。でも、恵の目の前で起こった

襲撃事件のことを思い出せば、マルスが想像を絶する性能を持つロボットなの

はおぼろげながらわかる。マルスやリョーカが自分の知らないところで戦って

いたのだと恵は理解した。

「私たち、マルスやリョーカに感謝しないといけないよね」

「恵ちゃんはぼくのことを大切にしてくれたよね。リョーカのことも大切にし

てくれているんでしょ。それで十分だよ」

「マルスの言うとおりだよ。あたしも恵ちゃんに大事にされているから、いつ

も感謝している。恵ちゃんはやさしいもん」

「ありがとう」

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