第21章
「それにしても、よく来てくれたよね」
ヴェスタの甲板上でサムはマルスに言った。補給艦ヴェスタの甲板上には何人かの作業用ロボットがいるほかは、サムとマルス、そしてルイスとリョーカがいるだけである。
「プレストシティの守りはゼムがいるし、前回と同程度の敵なら残存部隊で十分対処できます。そう、判断しました」
マルスの凜とした答えに、サムは満足げだった。すべてにおいて、玲子が優先されるマルスでありながら、プレストシティを開けることに迷いがないことは、残してきた仲間を信頼しているのだろう。喫緊の脅威はプレストシティよりラルゴシティとソプラノシティに存在するので、第7艦隊のすべての艦艇はラルゴシティ沖に展開している。サムとルイス、マルスとリョーカの4名は、昨日、艦隊に合流したところだった。
「来たみたいよ」とルイスが遠くの空を指さした。機影が大きくなると、それは翼を持つ巨人であった。それはゆっくりと降下し、ヴェスタの甲板に降り立つ。
「ぎりぎり、アトラスが間に合ったな」と、サムは満足げに言った。プロメテウスの同型機アトラスはリョーカの専用機である。長距離飛行のためのフライトユニットを背中に装備したアトラスは、さながら翼を持つ巨人である。
リョーカはコントロールのチェックのため、アトラスのコックピットに乗り込む。リョーカを収容したアトラスはヴェスタの甲板を飛び立つと上空で機動飛行を行う。満足できたのか、アトラスは再びヴェスタに着艦した。コックピットからリョーカが飛び出し、甲板に降り立つ。
「問題ないわ」とリョーカが言うと、
「この時点で、問題が有っても困るけど」とルイスが笑った。
「これで投入できるタイタンの数が1体増えた。合計6体になる」とサムは満足げだ。
「足りるかしら」とルイスは心配げだが、
「最低限、艦隊防空ができればいい。この戦力で、できることをするだけさ。第一、ラルゴシティへの戦闘介入は、いくつかの条件を満たさないとできない。そのときは、ありったけの戦力を投入する」
「ガバメントはほんとに計画を実行するかしら」
「するさ。オルソンレポートでは着々と準備をしているのが見て取れる。成功を疑っていないんだ」
「西郷司令も着々と準備を進めているけど・・・・」
「エレクトラとマイアも覚悟を決めているようだし、この作戦が実行されると大勢が死ぬ。だが、彼らが殺してきた人数に比べれば少ないかもな。巻き込まれて死ぬ連中の家族には気の毒だがね」
ルイスは冷たい笑みを浮かべる。
「同情する気はないわ」
サムはマルスとリョーカに改めて指示を出す。
「マルスとリョーカには、第1優先事項として、艦隊の防衛、第2がラルゴシティの一般居住地区の被害を可能な限り押さえて事態を収拾することだ。行動のタイミングは俺たちが出すからな」
「わかりました」とマルスとリョーカは返事をした。




