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第18章 最終決戦への序章

 クーデターは失敗した。圧倒的な力を見せたライトニングファントムだが、作戦は次の段階に進む。迫り来る最終決戦にむけて、プレスト海軍は着々と準備を進めていた。

「さすがだ」とリヨンは賞賛した。

 会議室の大型モニターには、襲撃してきたロボットの調査のため、残骸の回収が始まっている様子が映し出されていた。

「被害はなかったのか」と司令部の幕僚が聞くと、ミラは、

「特に計上すべき被害はありません。付近の市民にもありませんでした」

「こんな、一方的な戦闘があるのか」と幹部が問うと、

「ロボットの性能が違いすぎるのです。もっとも、私にもライトニングファントムの動きは全くモニターできなかったですけど。よろしかったら、戦闘状況の一部をモニターに表示します。いくつかボール(球型の探査ロボット)が捉えた状況ならスローで表示できます」

「是非、見せてほしい」とのリヨンのリクエストに、ミラは会議室のモニターにアクセスし、映像を映し出した。

 マーサがライトセイバーで敵ロボットのレーザーを防ぎ、急接近すると、ライトセイバーで胴体を切断し無力化する。敵ロボットの動きはほとんど無く、まるで止まっているようである。これだけでも性能差が圧倒的であることがわかる。別の映像ではロケットランチャーを構えた敵ロボットに、レーザーが打

ち込まれ、倒されていた。

「敵はこちらより数が少なかったので、戦力も圧倒的にこちらが有利でした」

 大型モニターに表示される映像は、一方的な戦いで、むごいの一言である。ロボットを送り込んだものは、この戦闘をどのように捉えているのだろう。

「ラルゴシティ、いや、ガバメントはこのあと、どのような手段に出るだろうか。スコット司令はいかに考えておられるのか?」とリヨンは改めて聞いた。

「大規模都市殲滅攻撃にてソプラノシティの首都機能を破壊し、その軍事力を示すことによって、連邦の実質的な支配権を確立しようとすると予測しています」

「ロボットの性能にこれほどの差があることを示されて、なお、そんなことを考えるのか?」

「その事実を受け入れていれば、どこかの時点で攻撃を諦めています。アルトシティ、フォルテシティ、プレストシティへの攻撃はすべて失敗しています。その戦闘を分析すれば、ロボットの性能があまりに違うことはわかるはずですが、理解していないのですな」

「都市殲滅攻撃の規模は?」

「プレストシティへの攻撃の規模を超えることは予測できます。ガバメントに対する偵察映像では多数の航空機の改造作業が確認できています」

 ボイドは率直な質問をぶつける。

「ソプラノシティの戦力で防げるか?」

 だが、スコットの回答は素っ気なかった。

「ソプラノシティの戦力の大半はガバメント製ですから無理でしょう。では、どうするか。ラルゴシティ沖に第7艦隊がいることがその答えです」

「第7艦隊は策を持っているのか?」

「概要を含めて申せませんが、その通りです。ソプラノシティへの攻撃はさせません」

「我々は何をすればいい」

「何もありません。第7艦隊を信頼して、ことの推移を待っていただければいいです」

 ボイドは質問を変えた。

「アルトシティの防衛戦、プレストシティへの防衛戦を立案したのは第7艦隊司令の西郷中将ですか」

「そうです」

「今回の作戦も?」

「そうです」

 ボイドは大きく深呼吸をして言った。

「わかりました。第7艦隊を信頼して、我々は待ちます」


 ガバメント社の社長室は重苦しい雰囲気だった。

「クーデターが失敗するとは・・・ これでは、ソプラノシティの政権は奪取はできんではないか」

 不機嫌を隠さずに上役が言うと、報告者は対策を述べる。

「現在準備中の戦力をもって、ソプラノシティを殲滅すれば、結果は同じです」

「それしかないか・・・ しかし、クーデターが成功していれば、ソプラノシティを殲滅する必要は無かった。ソプラノシティの住民は運がないな」

「さようで」と追従した。

「目障りな第3艦隊と第7艦隊はどうするのだ」

「ソプラノシティへの攻撃と同時に殲滅攻撃をかけます。我々は十分な戦力を準備しています」

「そうか、期待しているぞ」

「お任せください」

 ガバメントは爪を研ぐ。だが、西郷もさらに鋭い爪を研いで待ち構えていた。


 第7艦隊のジュノーの一室では、西郷とエドワーズが話し合いをしていた。

「クーデターは無事、潰せたみたいだな」とエドワーズが軽い調子で言うと、のんびりとした調子で西郷は「ああ」と答え、

「サムはかなり質の良いログがとれたと報告している。すべて、情報局の予想を裏付けるものだ」

「ほう、フォースネット(連邦軍の軍事ネットワーク)をテロに悪用するとは、やるもんだねえ」

「フォースネットの規格を作ったのはガバメントだ。いろいろとバックドアが仕掛けてあるみたいだな」

「それを俺たちが悪用するということか、大勢のラルゴシティの市民が死ぬな」

「ああ、だが、連中が殺してきた数には及ばんがね」

 コツッとエドワーズは机を指先でたたく。

「いつも思うが、おまえのやることは悪辣だ」

 にやりと笑いながらエドワーズが言うと、西郷もにやりと笑った。

「褒め言葉だと思って、ありがたく受け取っとくよ」


「お姉ちゃん、お姉ちゃん、起きて!」

 玲子はトリオに起こされて目を開いた。

「何時?」

「6時だよ」

「起きなくっちゃね」と玲子は上体を起こす。ふわっとあくびが出る。なんか、寝不足だ。

「お兄ちゃん、うまく任務を果たしたみたいだよ」

「そう、良かった」

「心配で眠れなかったの?」

「マルスのことだから大丈夫だとは思ったけどね」

「朝のトップニュースになってるよ」

 玲子とトリオは着替えを済ませると、キッチンに行った。そこにはロビーが控えている。

「おはようございます、お嬢様。吉報です、マルスは無事、任務を果たしました」

「トリオから聞いたわ」

「圧倒的な勝利だそうです。敵のレベルはライトニングファントムには到底及ばなかったらみたいですね」

「そうなんだ・・・ 詳しいのね、ロビー」

「ゼムから聞きました。あれは軍事ネットに直接つながっているので、情報が早いです。お嬢様に早く吉報をお知らせしたいと私に伝えてきました」

「いいのかなあ、そんな軍事情報を私に漏らして」

「スコット司令が伝えても良いと許可を与えたそうです」

「そう・・・」 

 会ったことがないスコットの名を聞いて、玲子はどんな人なんだろうと思う。アルトシティへの戦力投入についても、玲子に話して良いと許可を与えたことを思い出した。

「スコット司令って、どんな人なんだろう」

「お嬢様に感謝していると聞いてます。ソレイユのこと、マルスのこと、いろいろ軍に協力してもらっていると」

「私、たいしたことはしていないんだけどな」

「それが、たいしたことなんですよ」

 玲子はエプロンを着けて、動き出す。

「まあ、話はそれくらいにして、朝食の支度をしましょう。トリオ、手伝っ

て」

 同じく、エプロンを着けたトリオが「はい」と元気に返事をした。


 朝一番にリョーカはプロメテウスの格納庫へと向かう。

「プロメテウス、お願いがあるんだけど・・・」

「なんですか」

「私の制御能力を試してほしいの」

 しばらくの間を置いて、プロメテウスが答える。

「ゼムから聞きましたよ。腕を上げたようですね」

「シミュレーションでもいいから、試してくれない?」

「そんなケチなこと言わないで、実動訓練で試してみましょう。私の訓練の許可を司令部からもらいます。許可はすぐに下りると思いますよ」

 果たして、川崎副司令直々の許可がすぐに下りた。プロメテウスは格納庫のロックボルトを解除し、動き出す。

「さあ、いきましょう」

 胸のハッチを開き、リョーカをコックピットに収容する。


 基地を発進し訓練空域につくと、プロメテウスは仮想敵となる3機のホーネットを自分の制御下に入れた。

「さあ、私を動かしてみなさい、リョーカ」とゼムはリョーカを促す。

「じゃあ、やってみるね」とリョーカはプロメテウスの制御を始める。複雑な機動をするホーネットを、リョーカは確実にビームランチャーの照準に入れてみせる。

「なかなかやりますね」とプロメテウスが言った。

「では、先日、マルスが戦ったロボットの動きをホーネットにシミュレーションさせます。ライトサーベルで撃墜してみなさい」

「はい」

 リョーカはプロメテウスのライトサーベルを抜く。もちろん訓練なので作動はさせない。リョーカはプロメテウスを制御し、複雑な機動でホーネットの模擬攻撃をさけて肉薄し、ライトサーベルを振り下ろす。3機のホーネットはすべて撃墜判定が出た。

「なるほど、素晴らしい制御です。合格です、リョーカ、これなら2号機「アトラス」を任せられます」


 訓練の様子をモニターで見つめていた川崎に笑みが浮かぶ。

「リョーカもマルスの水準に達しましたか」

「そのようですね」と傍らのニーナが答える。

「この吉報を、すぐにスコット司令と西郷君に伝えてください」

 川崎は傍らに立つ、リョーカのマスターであるルイスに向かって言った。

「良かったですね、ルイス、リョーカの仕上がりは上々です」

 リョーカのマスターであるルイスも喜びを感じていた。最終決戦を前に、リョーカがマルスのレベルまで達したことは、作戦に良い影響を与える。ルイスはほっとしたように、川崎に答えた。

「良かったです、これでマルスの負担も減らせるでしょう」

「そうですね、あなたの努力にも感謝します」

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