第10章 プレストシティ攻防戦
武装テロリスト「セレクターズ」がプレストシティへ総攻撃をかける。プレスト防衛軍の裏切りも誘い、完璧な作戦と思われたが・・・
第7艦隊とプレスト海軍が総力をかけて戦いを挑む!
モルガンの潜水艦隊は、プレストシティ沿岸に進出したところで、フローティングブイアンテナを浮上させ、連邦軍の第2艦隊から情報の提供を受けた。ラルゴシティに所属する第2艦隊は第1艦隊とともに武装テロリスト「セレクターズ」と内通し、セレクターズの作戦を支えていた。
第2艦隊は連邦軍のフォースネットを通じて得た、プレスト海軍の行動を取得し、第7艦隊の状況を伝えてきた。
「プレスト海軍の第7艦隊は、太平洋のパトロールで不在なのですね」
モルガンの副官ブライトは、ホッとした様子で言った。
「確かに艦隊の主力は不在だが、空母ジュノーと護衛艦2隻がプレスト沖に配置されている」
(あのときと同じだ)という言葉はモルガンは口にしなかったが、モルガンはテックスが率いる潜水艦隊が空母ジュノーの航空攻撃で壊滅させられたことを忘れてはいなかった。
「第7艦隊の西郷中将の動きが気になる」とモルガンが率直な想いを口にした。
「ホワイト中将の話だと、たいした男ではないとのことですが・・・」
ブライトは第2艦隊司令のホワイトの意見を伝えたが、モルガンが即座に否定した。
「あの男の人物評などあてにはならない。だいたい、士官学校時代に戦術シュミレーションで西郷に負けたことがないなどと、信じられるものか」
「負けたことがないのは事実なのでは」
「ふん、あの男にまぐれで勝つこともできないと言うことが信じられないのだよ。理由はわからんが、西郷はわざと負けていたと私は思っている。それに・・・」
モルガンは続ける。
「あのスコット大将や川崎中将がつまらん男を第7艦隊の司令官に任命するものか」
「そうですか・・・」
「テックスを撃破した手際からして、相当の指揮官であることは間違いないだろう。とはいえ、第7艦隊の主力が遠方に位置していることは朗報だ。航空戦力が半減しているということだ。」
モルガンにとって不幸なのは、プレスト海軍が連邦軍の基幹情報ネットワークであるフォースネットすら欺瞞していることを予想できなかったことだろう。エドワーズ副司令が率いる第7艦隊の主力はすでに第2艦隊の哨戒圏ぎりぎりまで迫っていた。
モルガンは戦術ディスプレイ上の配置を確認した。すべて、作戦通りに配置されている。
「よし、予定どおり作戦の実行を指示してくれ」
「西郷司令、マークしていた輸送艦が想定していた海岸に接近」
情報分析アンドロイドのエレクトラが報告する。ステルス性能が高い無人偵察機からの情報だった。プレスト海軍第7艦隊は連邦軍の標準的なフォースネットから切り離された独自の極秘の情報ネットワークで作戦を遂行する。従って、第7艦隊およびプレスト海軍の動きは、ダミーの情報以外、一切、フォースネットには上がらない。
「こんな日中に仕掛けるとはね。防衛軍の動きは?」と西郷はのんびりとした口調でエレクトラに聞く。
「ほぼ同時にフォースネットから切り離された状態で、地上戦力が出撃してます。光学センサーでモニターできてます」
「戦力の内訳は?」
「無人対空戦闘車両10両と対地ミサイルを装備した無人攻撃車両が30両。そして指揮車両5両です」
傍らで聞いていた村山参謀長が
「これはドラグーンと呼応してシティを攻撃する作戦ですね」
「その5両の指揮車に乗っている人間は、テロリストとして処分だ。ライトニングファントムに伝達。シティに実弾を撃たれてはやっかいだからな。エレクトラ、防衛軍戦力の位置と戦力の内訳を逐次サムに伝えてくれ」
のんびりとした口調で殺伐としたことを西郷は指示する。
「わかりました」
「ノーマとマルスがついているから大丈夫だとはおもうが、おとりとなるサムのことが少し心配だ」
「大丈夫だと思いますよ。あの二人がついていれば、どんなことがあってもサムを守りますから」とエレクトラが答えた。
「輸送艦が接岸、ドラグーン7機と攻撃型ライドアーマー3機が上陸、プレストシティへ向け進撃開始」
プレスト海軍司令部では独自のデータリンクで、第7艦隊と情報を共有していた。
「スコット司令、防衛軍からプレストシティへ上陸した不明の機体への対処要請が来てます」
スタッフからの報告に、スコットは無表情で
「対処すると返答しろ。通信文でいいぞ」
傍らの川崎が
「来ましたね」というと
「ああ、来ましたね。ダグラス大佐に出撃命令をだせ」と指示をだした。
司令部スタッフが
「ダグラス大佐がライトニングファントムを率いて出撃します」と報告した。
チラリと、防衛軍が出した戦力を眺めた川崎は、
「予算を絞られて整備に回せなかったはずですが、意外に多くの戦力を出してきましたね」
スコットは憮然として
「ラルゴシティに部品を横流しされたかもしれません。防衛軍の装備はガバメント社製ですからね。モルガンも用意周到だ。対地攻撃車両が出ているということは、迎撃に失敗するとシティに被害が出る」
「ライトニングファントムの第一撃が重要ですな」
「今のライトニングファントムなら信頼できる。レッドファントムの配置はどうか」
傍らの情報分析アンドロイド「ミラ」に聞く。
「配置完了です」
「ブルーファントムと三銃士は」
「会敵位置にむけ進行中」
「ブラックファントムは」
「セレクターズの潜水艦隊を監視中」
「よろしい」
すべて想定どおりに進んでいることを確認したスコットだが、危険な任務を帯びているサムのことを案じ、キリキリと胃が痛む。
侵攻するドラグーンの部隊に向け、ドルフィンで急行するサムは、常に防衛軍の部隊の位置をモニターしていた。サムとノーマのドルフィンの後をマルスのドルフィンとライトニングファントムを収容した輸送機が続く。(そろそろか・・・)とサムが思ったとき、
「サム、射撃レーダーが照査されました」
「全機ブレイク!」
フレアとチャフをばらまきながらドルフィンと輸送機が機体を翻す。対空レーザーが空を切った。防衛軍の車両を確認したサムは軍用無線で警告する。
「今の攻撃をテロに加担したものと見なし攻撃する」
「ノーマ、マルス、5両の指揮車両を優先的に攻撃! 乗員の生死は問わない!」
生死は問わないという指示は、殺せという暗黙の指示である。マルスの乗るドルフィンが機体を翻し、無人戦闘機ホーネットを引き連れて対地攻撃にかかる。輸送機から人型のメタロイドが吐き出され、戦闘車両にむけて降下する。降下といっても飛行能力をもつライトニングファントムは、パラシュート降下などとは比較にならないスピードで地上に降り立ち、戦闘車両に襲いかかった。戦闘車両が持つ防御シールドもライトニングファントムの連携攻撃であえなく崩されていく。
「ごめんね、シティを攻撃させるわけにはいかないんだ」とマルスは独り言を言いつつ、2両の指揮車を撃破した。
2両の味方を撃破された防衛軍軍人、菊池大佐は(話が違う)と焦った。こんなに早く相手が攻勢に転じるなど想定してなかった。本来味方である防衛軍が発砲すれば、少なからず混乱するという想定だったのだ。
「上空のドルフィンに狙いを集中。あれが指揮官だ。あれを撃破すれば攻勢が止まる!」
ロボット各自の意思で攻撃しているライトニングファントムには当てはまらないのだが、指揮官がロボットを集中制御するという自分の価値観はすぐには変わらない。しかし、これがサムには不利に働いた。
ノーマは射撃レーダーが照査されたことを感知し、再び機体を翻す。激しい対空レーザーの光が空を切る。濃密な攻撃にノーマは焦る。
「マルスのドルフィンが被弾」
「なに!」
サムの目に、火を噴きながら墜落するドルフィンがうつった。
「ノーマ、マルスの救助を!」
「すでにライトニングファントムが動いています」
先のサムのドルフィンへの集中攻撃は大きな隙を作り、防衛軍の戦闘車両はライトニングファントムのメタロイドが撃破した。
「大佐、対空車両と攻撃車両がすべて撃破されました。作戦続行は不可能です」
「ばかな! 」
入念に打ち合わせた作戦が足下から崩れ落ちていく。ガンという衝撃と思いがけない光が差したことで反射的に菊池は上をむいた。ハッチのあった場所が開け放たれ、ロボットがそこにいた。恐怖におののく菊池のレシーバーに異質の声が響く。
「死ね!」
ゼムは腕に装着した対物ライフルで菊池を撃ち抜く。膨大なエネルギーに菊池の体はバラバラになり、拡散したエネルギーは車内を暴れ、ほかの乗員の命を奪った。脱出を図った車両の乗員はすべて、ほかのロボットが射殺した。すでにドラグーンが迫っている以上、ぐずぐず対処している暇はなかった。
「サム、防衛軍は制圧完了。人員はすべて無力化しました」とノーマが報告する。
「マルスはどうだ」
「ライトニングのロボットがマルスの残骸を回収、2機の護衛のもと待避してます」
「残骸か・・・ マルスは無事なのか?」
「人工頭脳のケースは無傷ですから大丈夫だと思います」
「よし、そのまま待避させろ、すぐにドラグーンがくる」
「すいません」
ノーマの唐突な謝罪にサムは、「なにが?」と聞き返す。
「マルスは私たちの盾になったんです。私が対空射撃から逃げられないと判断して」
「そうか・・・ だが、今はマルスの無事を信じて。そのことは忘れろ。ドラグーンを片付けるのが先だ」
「はい」
「プロメテウスや三銃士は予定どおりか」
「はい。まもなく攻撃位置につきます」
「おとり役はしんどいな」と、自分で志願したこととはいえ、サムはほっとため息をついた。
「ノーマ、ドラグーンの攻撃範囲から離脱! これからはライトニングファントムの足手まといになる」
「はい」
同じ頃、防衛軍がテロリストと呼応した事実をもって、レッドファントムが防衛軍施設に突入した。本来は災害対応や救助に対応するレッドファントムだが、副次的な戦闘任務にも対応する。果敢にも銃で応戦した軍人はテロ行為への加担と見なされ、その場で射殺された。
「抵抗すれば、テロリストと見なし、射殺する」
レッドファントムのロボットたちの無機質な呼びかけは、防衛軍施設に残る軍人たちの士気をくじいた。散発的な抵抗を排除し、レッドファントムは防衛軍施設を占拠した。
だが、防衛軍の滑走路から、シティ政府専用機が離陸した。
「反乱の首謀者である伊藤は確保できず、シティ政府専用機で脱出した模様」とレッドファントムの指揮官ロボットが司令部に報告する。レッドファントムの対人装備では航空機には手がでなかった。
「捨て置いていい。防衛軍施設の完全掌握に注力せよ」と西郷が指示を下した。
「予想外に対応が早いな。ギリギリだった」と伊藤が専用機のソファーにどっかりと腰を下ろしながら言った。とりあえず、家族を連れて脱出できたから、問題はなかった。腹心の部下と家族が政府専用機に乗り込んでいる。このままラルゴシティへ亡命する手筈だった。
「綾、プレストシティはドラグーンにめちゃくちゃにされるんだ。亡命先で改めて学校に入ればいい」と、娘に言った。
「そうよ、仕方がないことなのよ」と母親が言う。
「でも・・・」
「おまえを追い出した学校など、吹っ飛べば良い。いいざまだよ」
ドラグーンのコックピットでクロトワはちっと舌打ちした。防衛軍の攻撃部隊を撃破した海軍の部隊指揮官のドルフィンが射程外に待避したからだ。
「それにしても、タイタンが出てきていない。これでは陽動が不発になってしまう」
だが、それでもシティに向けミサイルを撃ち込めば作戦の目的の半分はこなせるはずだ。防衛軍の攻撃力がそがれたとはいえ、引き連れているライドアーマ(有人攻撃用ロボット)の攻撃でも十分な効果がでるとクロトワは考えていた。
「クロトワさん、2時と10時の方向から熱反応」
僚機からの報告でクロトワはモニターを確認する。地形をかいくぐってきたのか人型のロボットが襲いかかってきた。
「来たか!」
クロトワはライフルを撃つ。しかし、ロボットは身軽に射線をよける。
「ぎゃあ」という断末魔の声が響き、途絶えた。
「なっ?」
コックピットを串刺しにされ、1機のドラグーンが機能を止めた。資料で見たことのある青いロボット。
「ブルータイタンというやつか」
ドラグーンよりやや小ぶりのロボットだが、ライトサーベルを振り、ドラグーンの上半身を切断し破壊する。
「テロリストの命は保証しない」 それが、連邦軍の非情な宣言だ。しかし、実質、自分たちのドラグーンを撃破できる戦力は、各シティの装備にはなかったので、仲間に戦死者が出ることはなかった。アルトシティの事例を除いて・・・ クロトワは5体のタイタンを確認した。
「黒いやつはいない。しかし、ほとんどこちらに来ていることになる。この作戦は成功だ!」
クロトワが高揚感を感じつつ、目の前のタイタンに対峙する。数では優勢である。なんとかなる。ブルータイタンとは違う異形のタイタンは、軽くクロトワの攻撃を躱し、ライトサーベルを抜き踏み込んでくる。
「ぬっ 」
クロトワはサーベルを抜き、サーベルを振り下ろす。だが、その一撃を軽くかわされる。
「貴様がリーダーか」
通信に異様な声が割り込む。異形のタイタンはクロトワのドラグーンの腕を切断する。
「人間ごときが、ロボットに勝てると思うのか」
それは、クロトワだけでなく、他のメンバーにも聞こえた。異形のタイタンは、腕を切断し、無力化したドラグーンのコックピットごと上体を切り裂いた。
「クロトワさん!」
ドラグーンのパイロットたちに衝撃が走った。
「あいつら、俺たちを殺す気だ!」
数では優勢だったドラグーンはあっという間に5体のタイタンに破壊される。後続の3機の攻撃型ライドアーマーには、ライトニングファントムとブルーファントムのロボットが蟻のように群がり、コックピットを攻撃、1機、また1機とパイロットごと撃破していく。シティ攻撃のため戦力温存を図るライドアーマーは意外に手こずる相手だった。ゼムが「待避しろ、プロメテウスが来る」と、部下に指示をだした。一糸乱れず、ライトニングファントムが最後のライドアーマーから待避すると異形のタイタン「プロメテウス」がライトサーベルでコックピットごと両断する。破壊力は桁違いである。
ブルータイタンのコックピットからアトスが司令部に報告する。
「ドラグーンの制圧、完了」
「よくやった、アトス。部隊の撤収の指揮を頼む」
「了解」
コックピットの完全破壊と生存者がいないことを確認したポルトスが、
「それにしても、アトス、人間はもろいもんだね。殺されるとわかったら、判断力がボロボロだよ」
「いや、動揺しなくてももろいけどね」とアラミスが言う。
「いずれにしても、玲子さんに害を加えるものは排除だけどね。ルーナもよくやったよ。とはいえ、マルスがやられるなんて、想定外だな」
「無事に待避したみたいだから、大丈夫だと思うけど」とルーナが答える。
「まあ、あいつは設計上、タフな構造をしているからね」
時を少し遡る。ドラグーンのクロトワから、5体のタイタンが出撃していることを聞き、モルガンは勝利を確信し、ダグラスインダストリーの攻略作戦を実行に移す。海面ギリギリまで浮上し、攻撃用の無人型ドラグーンを4体を出撃させる。だが、既にブラックファントムのロボットがマークしていた。ひとサイズのロボットは潜水艦のセンサーには探知できなかった。
「よし、潜行して、クロトワたちの回収ポイントに向かう」
「待ってください! クロトワたちからの5体のタイタンと対峙しているとの報告を最後に通信が途絶。断末魔の悲鳴が聞こえたので、全機やられたものと・・・」
ブライトからの悲痛な報告がなされる。
「やられたのか?」
やはり、ダグラスのロボットといえども、テロリストには情けはかけないのかとモルガンは思った。だが、5体のタイタンをおびき出したのなら、陽動は成功のはずだ。それにしても、一方的にやられすぎることに、一抹の不安があった。
「すぐに潜行し、ここから脱出、揚陸部隊と合流する」
「揚陸艦隊から、ジュノーの艦載機の攻撃を受けているとのこと、こちらもたった今、通信が途絶」
「やむをえん。このまま海域を脱出」
そのとき、僚艦から対空ミサイルが発射された。
「誰だ! 誰が対空ミサイルを撃てと命令した」
僚艦の艦長からすぐさま報告があった。
「カタリナ様からのご命令で、プレスト防衛軍の政府専用機を撃墜せよとのことでしたので・・・」
セレクターズの指導者カタリナを信奉するものは多い。モルガンは怒りに震えた。こんなことで艦隊を危険にさらすなどと・・・
「貴様・・・ ばかものが! ほおって置けばいいものを!」
「おうおう、でっかい花火を上げちゃって。まさか、モルガンの艦隊から撃つとはね」と、西郷が軽い調子で言う。プレスト防衛軍の政府専用機は空中で爆砕した。脱出を図ったテロの内通者とその家族はこれでは助からない。ここまでは西郷の想定の範囲だ。
「もう、捨て駒なんでしょうね」と村山参謀が言う。
「なんにせよ、チャンスだ、ブラックファントムを一時退避、手配どおり対潜ミサイル発射」
ジュノーに従う護衛艦アポロンとダイアナから対潜ミサイルが発射された。
「第一撃はかわしてほしいなあ」
西郷は追い詰めた獲物をいたぶるように言う。村山は(怖い人だ)と一瞬思った。だが、作戦の一環である以上、第2艦隊の動きに注視する。すべての総仕上げはそこにかかっていたからだ。
モルガンは対潜ミサイルが発射されたことを知り、潜行しても逃げ切れないと判断した。
「対空防御、撃て! 音響魚雷で相手のセンサーを撹乱しろ」
「モルガン提督! 突入したドラグーンが!」
ドラグーンからの映像を見たモルガンから血のけが引いた。2体の黒いタイタン。黒いタイタンは世界で2体しかない。1体がプレストシティ、もう1体がフォルテシティに配備されているはずだった。
「フォルテシティから援軍がきていたのか!」
呆然とするモルガンを見ながら、ブライトが叫ぶ!
「提督! ホワイト中将から緊急連絡です」
リョーカの乗るブラックタイタンは、ドラグーンを射程に入れる。牽制に両肩の対地ビームを打つが、防御フィールドに阻まれた。
「ここで食い止めないとね、リョーカ」と僚機のブラックタイタンのリームが言う。
「もちろんよ!」
リョーカとリームのブラックタイタンが複雑な機動でドラグーンに襲いかかる。リョーカたちの後ろからは、レナとニーナが乗るブルータイタン2機が援護射撃を加えてきた。数の劣勢はない。しかし、連係攻撃は圧倒的にリョーカたちの優勢だった。
リョーカとリームの牽制のビームで防御フィールドが揺らいだ隙に、サーベルがドラグーンを突き刺す。残りの2体のドラグーンが援護射撃するが、そんな射撃に捕まるブラックタイタンではなかった。2機のドラグーンは後衛の2機のブルータイタンの狙撃をうけ、防御フィールド発生器を破壊された。
「はい、おしまい!」とリョーカとリームの連携は舞のような優雅な動きで、残りの2体のドラグーンのコックピット部を破壊し、待避する。自爆にセットされていたドラグーンは大爆発を起こした。
モルガンはあっけなく4体のドラグーンを倒されたことで、作戦がすべて失敗したことを悟った。
「読まれていたのか、攻撃の手段も時期も」
長い付き合いのあったスコットや川崎がそれほどの知恵者だとは思えなかった。
「あの・・・ 西郷中将か・・・」
「提督、第2艦隊が第7艦隊を攻撃中です。このすきに脱出を!」
ブライトが進言する。
「これも、あいつの手の内か・・・ 」と、顔すらろくに知らぬ、西郷に敗北したことを悟った。
「急速潜行。海域から脱出する」
「第2艦隊からの攻撃がこちらに向かってきます」
「おそらく、フォースネットでつかんだこちらの位置に、打ち込んでいるよ」
エレクトラが無情にも
「フォースネット上の欺瞞位置にミサイルが着弾します」と報告した。
「第2艦隊へ通信をつなげ、音声のみでいい」
「つなぎます」
「第7艦隊を攻撃する第2艦隊の行為をテロと認める。これより連邦軍第2艦隊をテロリストと認め、攻撃を開始する」
「返答ありません」
「通信を切れ、返答などせんだろう」
「ミサイルの波状攻撃が来ます」とエレクトラが報告する。
「ちったあ、偵察機を出して敵の位置を確認しろよ」
ミサイルは相変わらず欺瞞情報の位置に着弾していた。
「エレクトラ、第2艦隊を攻撃。ブラックファントムには潜水艦隊を攻撃させろ」
「了解」
「ふん、テロリストとして死ね、ホワイト」
敬愛するモルガンを救うべく、ホワイトは闇雲に第7艦隊への攻撃を指示していた。
「上空の艦載機にも第7艦隊への攻撃を指示しろ」
ホワイトの部下はあまり乗り気ではなかったが、さっきの通信でテロリストとして認定された以上、自分たちも攻撃される可能性もある。空母1隻と護衛艦2隻なら、圧倒的にこちらの戦力が上であるし、相手を殲滅でき、可能ならプレスト海軍施設を破壊して、証拠を隠滅すれば活路が開けると思うことにした。
「司令! 6時の方向からミサイルの一群が接近、あっ、第7艦隊の艦載機の攻撃です」
「なに!」
「生きのこって、言い訳できないように、皆殺しにしろよ」と軽い口調でエドワーズはマイアに指示する。
「わかりました。お任せください。エレクトラとの連携で殲滅します」
「うん、よろしく」
こうなると、人間の出る幕はなかった。ミサイルの複雑なコントロールも、無人艦載機のコントロールもロボットの制御にはかなわない。第7艦隊の本隊の艦からもミサイルが発射される。
「ホワイトのやつ、西郷にしてやられたと思う暇があるのかな。ねえだろうな」
第2艦隊の空母にミサイルが直撃、司令部を吹き飛ばす。たてつづけに突入するミサイルに大爆発を起こして空母は轟沈した。そして偉容を誇る第2艦隊の艦艇はすでに全艦が大破炎上していた。
そして、すでに海中のモルガン艦隊も虫の息だった。群らがるブラックファントムの攻撃に外壁を破られ、推進器を破壊され、もはや浮上もできなかった。
「第7艦隊の本隊もいたのか・・・ 完全に罠にはまった・・・」とモルガンは敗北を悟った。
「気がついていたのか、第2艦隊と我々の関係も・・・ 何もかも! 素知らぬふりして、我々の作戦を、潰していたのか! これでは、第1艦隊も無事では済まぬな」
「降伏の申し入れは無視し、テロリストの言い分は聞く必要はない。第2艦隊の残存艦を撃沈処分。生存者を残すな。徹底的にやれ」
「了解」とエレクトラが指示を実行する。マイヤとの連携で、対艦ミサイルと対地攻撃用空中炸裂弾を発射した。艦船と海上に脱出した生存者を処理するためである。航空偵察で確認しつつ、エレクトラとマイアは徹底的な掃討を行った。
「海中のブラックファントムから通信、セレクターズの潜水艦隊は4隻とも沈没。脱出できた乗組員は皆無とのことです」とのエレクトラからの報告に、
「よし」と西郷は短く答えた。村山は、
「最初からブラックファントムを使って撃沈しないで、対潜ミサイルを撃ったのは、第2艦隊の攻撃を誘うためですか」
「まあね、モルガンを攻撃すれば、あのホワイトが動かぬはずがない。モルガンの艦隊が対空ミサイルを撃たなくても、はじめから対潜ミサイルを打ち込むつもりだった」
「あなたは敵にしたくはありませんな」
「私も村山さんやエドワーズを敵にはしたくないよ」
西郷が村山に笑顔を向けたので、村山はほっとした気分だった。




