愉快な誘拐犯
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ここはマンションの二階のとある一室。
男は深刻な表情と焦りで、
部屋中をうろうろしていた。
そんな時、電話のベルが部屋中に鳴り響く。
すると男の動きはピタッと静止。
直後、ばっとすぐに手を伸ばしそれを手に
取る。
『もしもし? 僕が君の息子をさらった
エックスさー』
受話器の奥から、なにやら愉快な声が
聞こえてきた。
部屋の男は冷静に呼吸を整えすぐに答え
だす。
「もしもし……。
……息子は無事なんでしょうか?」
『うーん? それは君しだいさ。
今は無事だよ??
でも、気に入らない態度をとったら……。
君の可愛い〜子供はズドンだからね?』
「……っ!」
『まあまあそう焦らないの。
取引をすれば無事に返してやるからさ』
男はエックスの態度に苛立ちを覚え、
プルプルと拳を怒りで握りしめていた。
しかし、それでも息子を思う想いが冷静さ
を取り戻す。
「取引ということは、もちろん身代金
ですよね……?」
『察しがいいね〜! そのとーり!
んーといっても誘拐事件の取引なんて、
金しかないよね』
「一体いくらになりますかね……?」
男は、息子のためならいくらでも払うと、
そういった態度だ。
しかし、エックスもまた男の意思を
揺らがせようとする。
『僕は優しいからねぇ、セールで
2700万円でいいよ!』
「2700万円ですか……」
男は左手で頭を抱えながら、下を向く。
こんな額はとてもじゃないが払うことが
できない、といった感じに。
『払えないっていうなら……ね?』
「待て、払う、払うから待て!!」
『う〜ん。待ってあげるよ!
僕は優しいからねぇえ……。
ん、というか気になってたんだけどぉ、
まさか警察には言ってないよね?』
「はい、誰にもこの話はしていません。
親にも、兄弟にも。」
『さすがぁ!
まあそうだよね。 君が息子から目を離した
せいでこうなってるんだからね。
自業自得さ。』
「ぐっ……!」
『んー? なんだい?』
「いえ、なんでもない……です」
『じゃ、取引場所と時間を決めようか。』
「はい……。
あ、その前に息子の声を聞かせてください。 本当に無事なのか確認したいんです!」
『……、ほいよ』
男はようやく息子の声が聞こえる、
そう安堵した表情になりかけたとき、受話器の向こう側から聴こえてきたのは……
“銃声だった”
「……なんだ? ……おい!!
今のは銃声なのか? 息子は!? おい!!!」
『銃声さ!
君が2700万円なんて払るわけがないって
僕知ってたもんねー!
元から殺すつもりだったのさ』
怒りを握りしめていた男の拳は、
いつの間にか悔しみ、苦しみ、
悲しみ、怒りの涙をこすっていた。
手から受話器がするりと落ち、
目尻からもポロポロと熱いものが落ちる。
そして今の出来事で、男はとあることに
気づいてしまうのだ。
銃声の主が実は隣の部屋にいた
ということに。
やっぱり文を書くのは難しい…