USED BOOK
皆さんは中古本って買いますか?
これは、ついさっき家のすぐ近くの本屋で
購入した『中古』の漫画だ。
中古といっても、割と最近発売したばかりの漫画
だからか、全く使い古されたようには
感じない。
新品しか買わない主義だった私でも惹かれてしまうような値段設定と、新品に限りなく近い品質だったので、ついつい中古を購入してしまった。
そんなことはもう深くは考えず、パラパラとページをめくってみる。
めくってみても本当に汚れがなく、ページの白さが
際立つ綺麗さ。
そして、ふわっとした紙の香りが微かに鼻を
くすぐった。
所々ある空白の白さも綺麗で非常に満足。
綺麗な紙が絵や文字を引き立てているような
気さえする。
……そう思えるくらい本当にいい買い物を
した。
私がワクワクしながらさらにページを
パラパラめくると、真ん中らへんのページに
何か挟まっているような感覚を覚えた。
何が挟まっているのだろうか。
しばらく硬直した後、私は訝しげに
本をめくってみる。
「ん……? 紙?」
ページとページの間から出てきたのは、
四つ折りにされた白い紙。
私はそれを手に取って、まじまじと眺めてみる。
ひっくりかえすと、なにやら文字が書いて
あった。
《開くな》
『開くな』と鉛筆で殴り書きされた文字。
こんなのを見てしまえば、好奇心が湧いて
開けたくなる。
しかし、同時に開けたらどうなるのか
わからないという恐怖心も湧いてきた。
なにが書いてあるのだろうか。
もしかしたら、知ってはいけない秘密が
書かれているかもしれない。
店員さんが中にある紙を除かなかったのは
あえてだろうか?それとも気づかなかった
だけなのか?
もしかしたら国家機密とかが書かれていて、中身を知ったら国家に抹殺されてしまうかも
しれない。
結局、恐怖心が勝り、それを明かりに
照らして透かしただけですぐ終わらせて
しまった。
結局なにが書いてあったのかわからない。
……そんな時、ふと我に帰る。
そうだ、こんな紙を見る予定なんて元々
なかった。
漫画を読む予定だったんだ。
それがたったの紙一つでこんなに悩んで、
無駄な時間を過ごしたんだなんて。
紙なんか、『開けるな』と書かれているの
だから開けなければいい話なのだ。
私はふっと笑い、紙を机に置いた。
「さてと、漫画読も!」
……
……………
…………………
一話読み終わったところで、私は漫画を
閉じた。
「内容が何も入ってこない……」
別に漫画がつまらないわけではない。
むしろ面白い。
ただ、紙の存在が頭を常によぎり、漫画の
内容が途切れ途切れになってしまうのだ。
私の中の好奇心はまだ死んでいなかった。
私は再び机の上の紙に目をやる。
紙の中身が気になってしょうがない。
今はもう、恐怖心のかけらもなかった。
好奇心が完全に勝っていた。
「どうせ紙を見たってバレない……。
大丈夫なはず……。
もし内容がダメなら燃やせばいい……」
念のため、ライターを手元に用意した。
そして紙を手に取り、『開けるな』の文字を
無視して四つ折りを開けていく。
なにやら短めの文字が書いてあった。
《引き出しの中に紙がある》
「引き出し……?
もしかして私の机の?」
再び恐怖心が湧く。
しかし、解決しなければ好奇心は消えない。
目をつぶってふーっと息を吐く。
私は恐怖心を押し殺して、自分の机の
引き出しを開けた。
やはり案の定、四つ折りにされた紙が入って
いた。
「開けるんだ……開けるんだ」
私は呪文のようにそれを唱えながら、
右手にライターを強く握りしめ、手紙を
ゆっくりと開いていく。
それにもまた文字が書かれていた。
《ポケットの中に紙がある》
「え……あっ……ポケット……?」
私の体が小刻みに震える。
なんで引き出しに紙が?
そしてなんでポケットに紙があるの?
ふーっと再び息を吐き、今にも泣きそうな
目をぎゅっとつぶり、ポケットに手を
突っ込んだ。
やはり、紙は入っている。
一瞬、ためらう。
しかし私は意を決し、先程よりも力をいれて
ライターをぎゅっと握り締めながら、紙を
開く。
そして徐々に目を開け、恐る恐る紙を
見つめた。
文字がだんだんと明らかになっていく。
今度は先程と違って、長文が書かれている。
「…………えっ?なにこれ」
私はライターを握りしめ、長文を読み
始めた。
そこにはこう書いてあった。
《これは、ついさっき家のすぐ近くの本屋で
購入した『中古』の漫画だ。中古といっても、割と最近発売した漫画だからか、全く使い古されたようには感じない。新品しか買わない主義だった私でも…………》
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