毎日投稿者の100日目
擬音にこだわった……
小説投稿サイトに私の作品を投稿し始めて
から、今日で100日目。
これまで毎日作品を投稿し続けたので、
話数も昨日で99話。
今日投稿すれば記念すべき100話目となる。
「今日で遂に100話目。
読者からの注目も集まるだろうし、
今回は少し長めの話にするとして、
さて……」
私はだらーんとゲーミングチェアに
倒れこんだ。
そして、ふーっと一息ついて、目をつぶり、
そしてすぐに開ける。
壁の掛け時計は午後の4時を示していた。
「いつも通りで行けば、午後7時に
サイトに小説投稿完了するから……
今日も午後6時までには完成させよう」
すぐに最近買ったばかりの
パソコンを立ち上げ、
姿勢を正してゲーミングチェアに座り込む。
カタカタと文字を入力し、記念すべき
100話目の執筆が開始される。
入力する手は徐々に勢いを増し、
順調なスタートを切ったように見えた。
……30分後
今までパソコンのキーボードの上で
動いていた手が、ピタッと止まる。
私はふーっと息を吐き、
そばに置いてあったペットボトルの麦茶を
手に取り、口の中を潤す。
「完成予定時間まで、後1時間半か……」
キーボードに手を移し直す……が、
しかし、再び手は止まってしまった。
「……ここの戦闘描写をどうしようか」
普段から書き慣れていない戦闘シーン。
しかも、100話目は主人公が覚醒する場面を
話にいれるため、戦闘描写の難易度が
格段に上がっていた。
どういった闘いにしようか、
それすら思いつかないといった始末だ。
「仕方ない……
サイトで他の方の作品を
参考にしてみるか」
右手をマウスに軽く添えて、
カチカチっとダブルクリック、
小説サイトを開く。
現在読み途中のファンタジー作品を
クリックし、戦闘シーンのあった話を
開いて読み始めた。
「なるほど……。
この戦闘シーンは参考になりそうだな……」
…………2時間後
「ついつい20話近くまで読んじゃった……
でも、面白かったからいっか!」
満悦の笑みを浮かべながら、
ほくほくした気分で、チラッと時計を見る。
《6時22分》
体に雷が落ちたような衝撃と、
心臓がキュッと締まるような焦りが
訪れた。
「え……!? 嘘!」
完成予定時間を22分オーバーしていたのだ。
「やばいやばいやばい!」
とりあえず投稿予定まで時間はある。
すぐにパソコンに手を移し、
キーボードを勢いよく弾き始めた。
戦闘シーンや、話を読んだ分、
構想が練りやすくなっていて、執筆は早い。
それだけが救いだ。
なんとか間に合うように全速力で
文字を入力。
こういう時に限って自然と文字が出てくる。
「うぉおお! 間に合えっ……!」
さらに速度をあげ、なんとか話の終盤。
一瞬時計を見ると、
意外と時は早く、午後の《6時30分》。
「いけるぞ……!」
カタカタカタカタと、
タイピングの音が響き渡っていた部屋に、
カン!とエンターキーの打たれる音が
代わりに響いた。
その後部屋は静かになり、
私はやりきったと言わんばかりに、
ゲーミングチェアに倒れこむ。
再び目をぎゅっと瞑ってはすぐに開け、
麦茶を口に運ぶ。
「よし……なんとか終わった……!」
空になった麦茶のペットボトルを、
右手に持ちながら軽く叫んだ。
時刻は《6時32分》午後の。
「まだ投稿まで時間はあるな……、
思ったより焦りすぎたかも……」
ふーっと息を吐き、投稿予定時間の
7時までの時間が楽しみになってきていた。
「にしても、まだ時間あるな……」
時計をじっと眺めても、ただ秒針が
進むだけで何も面白くない。
「……そうだ! ファンタジーの
続き読も!」
すぐにサイトにアクセスし、
ファンタジーを続きから読み始めた。
うきうきしながら、文字に目を走らせ
次々と話を読み進めていく……。
……
…………
………………
「…………はっ!」
やばい。完全に寝落ちだ。
夜の7時は意外にも眠くなる。
2話ほど読み進めた時点で
疲労が体を襲い、眠気に身を任せて
目を閉じたらこうなってしまった。
はーっと私はため息を吐きながら、
ゆっくり時計を見る。
《6時58分》
意外だった。体感では9時間くらい寝た
感じがしたが、
あまり時間は過ぎていなかったらしい。
時計を見る限り、先ほどより26分しか
過ぎていないように見える?
私は喜びのあまり、口角がきゅーっと
上がり笑顔が溢れ出た。
「よかった……! 後2分か……!」
胸の中で、そっと胸をなでおろし、
早速、上機嫌のまま投稿準備を始める。
すぐに準備は終わり、いつでも
投稿できる状態になっていた。
「よし、7時ぴったりに投稿するぞ……!」
《6時59分》
もうそろそろ投稿時間。
期待と興奮を醸し出しながら、パソコンを
見つめている。
「後、5秒、4秒、3、2、1……!
投稿!」
投稿が完了し、満面の笑みを浮かべ、
ピョンピョン家を飛び跳ねる。
しかし全力で喜んでいた時に、
なにかが部屋を照らした。
………私が光の方向を見ると、
柔らかい陽の光だった。
100話目にこれは痛い……