18増えるキリングマウス
キリングマウスと接触した所に戻ると、シーラが倒れていた。
「快斗、君は相方のところに行け。僕達は、モンスターの警戒に当たるから」
ラックさんが、そう言ってくれたので、俺は迷わずシーラの下へ行った。
「おいシーラ、しっかりしろ。仲間を連れて来たぞ」
俺は、傷つき横になっているシーラを抱き寄せる。
「そ、の、声は、快斗、さん?」
良かった、意識はあるようだ。
「ほれ、ケアドリンクだ。ゆっくり飲め」
ゆっくりと、小瓶に入ったドリンクをシーラに飲ませる。
すると、ドリンクのお陰か、飲み終わる頃には先程までの苦痛な顔は消えていた。
「相方は大丈夫だったか?」
少し離れた場所で、ガトーさんが話しかけて来た。
「はい、ありがとございますガトーさん」
俺達の近くで、戦闘態勢に入っているイリヤさんも、声をかけてくれた。
「快斗は、仲間の近くにいてね。私達がキリングマウスを倒すから」
ありがたい。
「はい、お願いします」
そんな俺達の会話が終わるまで、待っていてくれてたのか、流れている汚水の中から、キリングマウスが現れた。
『ヂュー』
そこで、すかさずラックさんは、皆に指示を飛ばし始めた。
「ガトー、僕が先人を切ろう。君はサポートを頼む」
すると、重たそうな盾をガトーさんは軽々しくゆらす様にして返事をした。
「あいよ!」
「イリヤ、君はファイヤーボールを、僕がキリングマウスから退いたときに撃ってくれ」
「分かった、ラックが離れる時に合図をくれれば撃つよ」
「んじゃ、離れ間際に左手だけを挙げるから、そん時撃ってくれ」
「了解」
敵に攻撃のチャンスを与えないために、こちらの攻撃を途切れない様にするのか。
(と、クエスト前にシーラがパーティーの利便性の1つとして、教えてくれていた)
皆さん凄いな。
「皆、頑張れー!」
俺は皆にエールを送った。
あんま、意味ないけどね。
◇
即席パーティーだった割には、皆凄くスムーズに動いていて、隙が見当たらない攻撃をモンスターにしていた。
「そろそろトドメだ」
ラックは、そう言いながらキリングマウスに向かって走り出した。
しかし、キリングマウスはそこで変な行動に出た。
『ビーーー』
上と下に顔を動かして、変な鳴き声を出し始める。
「何だあれ?」
俺が疑問を口にすると、俺に介抱されていたシーラが焦った様な口調で話し始めた。
「あれは、マズいです快斗さん。仲間を呼んでます」
「えっ!」
「キリングマウスは、家族で暮らしている場合、誰かがピンチに陥った時ああやって仲間を呼ぶんです」
「確かにそれはマズいな!イリヤさん、イリヤさん!」
俺は1番近くにいるイリヤさんに、この事を教えようと声をかけた。
「それは知ってる。でも、こっちの対応が遅かったみたいね」
そう言いながら、イリヤさんは指をさした。
俺は、イリヤさんが指をさした方向を見る。
まだモンスターは見えないが、ヂューヂューと微かに聞こえてくる声、もう近くまで来ているのは間違いない。
「逃げるぞ!何体くるか分からない、キリングマウスを相手するより、逃げたほうがいい」
ラックさんの出した答えに皆が頷く。
「シーラ、今から抱っこして逃げるから、怪我キツいだろうけど我慢してくれな」
「ありがとうございます、でももう怪我は大丈夫です。走れますよ」
シーラは、立ち上がろうとするも途中で力が抜けてしまい、ガクンと膝折れしてしまった。
「やっぱり、まだダメだ。怪我は治っても血が戻ってないから力が出ないんだ。俺が抱っこするぞ、いいな?」
「はい、すみません」
俺はシーラを抱っこするも、申し訳なさそうにするシーラ。
「何言ってんだ、俺達はパーティーだ。気にするな」
気落ちしているシーラに、元気を出してもらおうと笑顔を見せながら話す。
「は、はい。ありがとうございます」
効果はあったみたいで、シーラは俺の胸に顔を埋めた。
「おら、あんちゃん達イチャついてねぇーで行くぞ!」
「イチャついてませんが、了解です」
「行くよ皆」
「はい」
「ああ」
「おう」
イリヤさんが言い、俺達は返事をした後、地上に向かって下水道の中を走り出した。