七話
七話になります。よろしくお願いします。
「それじゃあ、お母さん行ってくる」
「あいよ。気を付けてね」
お母さんに挨拶を済ませて、玄関の扉を開けて外に出た。
外はこの間春美に会いに行った時よりもかなり寒かった。
ポケットからスマホを出して、LINEを開く。
『おはよう。今家を出たよ』
メッセージを送った。すると十秒と経たずにLINEの通知音が鳴った。
『おはよう!私も今電車に乗ってるよ!一番後ろの席にいるから』
『了解』
(十秒と経たずに、返信を返してくるなんて文字打つの早いんだな、春美)
地味に凄いと思った。
駅について、切符を買うと、ホームに出た。
そう、今日は前に春美が言っていた旅行だ。
今日はいつもより早く起きたから、朝はかなり眠たかった。
今は自販機でココアを飲んだおかげもあって、眠気は取れている。
旅行に行くこと自体は楽しみではあったので、胸はワクワクで満ちている。
ホームのスピーカーから音が鳴った。
電車が来たのだ。
電車に入り、春美がいる席を探す。
一番後ろまで行くと、こちらに気付いた春美が手を振った。
「おはよう」
「おはよう!昨日ははちゃんと眠れた?」
「うん。ぐっすり眠れたよ」
「それならよかった。今日はうんと楽しもうね」
「もちろんさ。うんと楽しもう」
僕達は目的地に着くまで、窓の景色を見て感想を言い合ったり、目的地に着いたら何を買おうかなど色々話した。
数時間後、目的地である駅に着き、電車を降りた。
「うひょー!来ちゃいましたね都会に!どう?広人くん」
「うん。都会の空気も悪くないね」
「そういう割にはテンション低めだね。もっと明るく行こうよ」
「ごめん。これが普通なんだ」
「じゃあその普通を変えよう」
「簡単なように見えて難しいね」
少し笑ってしまった。
僕達はまずは服屋さんに行ってみる事にした。
凄い品揃えで驚いた。
「広人くん。このワンピースどう?」
春美が白色のワンピースを持ってきて僕に見せた。
あまりの白さに驚いた。
「お世辞抜きにいいと思う。春美に似合ってると思う」
「ありがとう。この服屋さん品揃え多くて最高だよ」
それは僕も同感だった。
しかし僕は元々服に無頓着だから何も買わなかった。というかお金をあまり持っていないから買えなかった。
春美が欲しいのがあったら持ってきていいよと言ってくれたが、悪いのでやめておいた。
服を見た後、お腹が空いたので昼ご飯を食べに向かった。
何処にしようか考えている時、肉のいい匂いがしたので焼肉に行く事にした。
「焼肉っていつ食べても飽きないよねぇ。そう思わない?」
「同感。焼肉とすき焼きはいくら食べても飽きないよ」
「だよね。肉は美味しい」
注文したカルビとホルモンが届いて、僕達は早速焼き始める。
早く焼けないかと待ち遠しい。
肉が焼けると、早速タレに付けて口の中へ運ぶ。
やっぱり美味しい。
「広人くん。ご飯も頼む?」
「いいの?じゃあお言葉に甘えようかな」
「大盛り?普通?」
「普通で」
「おっけい。すいませーん」
春美もご飯の大盛りを注文した。
肉とお米という贅沢を味わい、店を出た。
そのあとはショッピングモールやお寺巡りをして、楽しい時間を過ごした。
夜はすき焼きを食べた。
「美味しかったね。じゃあホテル行こうか」
「うん」
ホテルに着くまで、十分も掛からなかった。
目的地のホテルは、外見の時点で高級感があった。
中に入ると、外見に伴うように高級感もあった。
「凄い豪華な感じだ」
「でしょ?」
「春美、いい目をしているね」
「もっと褒めてくれてもいいんだよ」
フロントで受付を済ませて、部屋の鍵をもらって部屋に向かう。
部屋は一緒の部屋だ。
勿論僕は最初は反対したが、これが最後の旅行になるかもしれないと言われ、そう言われては中々断りづらかったので、渋々受け入れる事にしたのだ。
部屋の中は広くて、ベッドも大きくてと高級感満載だった。
申し分がないとはこの事だろう。
「いやぁ、いいホテルに泊まれたね。そう思わない?広人くん」
「同感だ。こんないいホテル見たことないよ」
「私達、いいホテル見つけたね」
「そうだね」
僕は荷物を降ろして、ソファに腰かけた。
今日一日歩き回ったから足が棒になった。
「夜景綺麗だよ。広人君もおいでよ」
春美に呼ばれて、僕もベランダに出た。
ベランダから見える夜景は確かに最高だった。
春美はものすごく感動したのか、目を離さない。
僕も春美もしばらく夜景を見ていた。
「広人君、お風呂先に入る?」
「僕は後でいいよ。春美が先に入りなよ」
「ありがとう。お言葉に甘えてそうさせてもらうね」
着替えを持って、お風呂場に入っていった。
僕も部屋の中に戻り、ベッドに寝転がった。
とてもふわふわしていて気持ちいい。
途中、あまりの気持ちよさに寝そうになった。
上半身を上げて、テレビをつけた。
テレビでは、グルメの事などを紹介していた。
テレビを見ていると、先ほど食べたすき焼きの味を思い出す。
とても美味しかった。
しばらくして、春美が風呂から出ていた。
Tシャツ一枚に半ズボンだった。
「お待たせ。お風呂すっごく気持ちよかったよ。浴槽も広いしで最高」
「いいね。僕もどんなものか体験させてもらうよ」
「入ったら絶対私の気持ちわかるよ」
脱衣所で服を脱いで、浴室に入る。
確かに浴槽も広いし、浴槽の中に入ると、程よい温度のお湯が体をほぐしてくれた。
僕はその気持ちよさにしばらく身をゆだねていた。
風呂からあがり、部屋に戻ると机の上にお菓子が並べられていた。
「おかえり。下のコンビニでお菓子買ってきたよ」
「ありがとう。風呂上りのお菓子最高だね」
「だよねぇ。アイスも買ってきたよ」
「ありがとう。じゃあアイスから頂こうかな」
アイスを受け取り、頬張る。風呂上りに冷たいものは最高だ。
「広人君。お風呂どうだった?」
「春美の言う通り、最高だったよ。体もすっかりほぐれた」
「それは良かった。私達、いいホテル泊れたね」
「だね。色々調べたかいがあったよ」
「広人君は、遠出とか好き?」
「うーん。嫌いではないけど、基本休日は家で過ごしているかな。家でゆっくりするのが好きだから」
「そうなんだね。でも今日の広人君、楽しそうにしているよ」
「もちろん。今日は楽しい一日だったよ。たまに遠出するのも悪くないと思えたよ」
「それはよかった。広人君は、匠君と遊んだりしないの?」
いきなり匠の名前が出た事に少し驚いた。
「休日に遊ぶって事はないかな。匠も匠で忙しいし」
「そうなんだね。昔はよく遊んでたの?」
「しょっちゅうって程ではないけど、カラオケ行ったりとかはしてたよ」
「そうなんだね。カラオケか、先生の許可もらえたら行きたいな」
「その時は一緒に行こう」
「うん。よろしくね」
僕達はそのあとしばらく他愛ない話を繰り返し、日付が変わった頃に眠気が出てきたので就寝する事にした。
「さて、そろそろ寝ようか」
「だね。女の子と一緒の布団で寝るってドキドキするでしょ。襲わないでよね」
「僕は紳士だからそんな事しないよ」
電気を消して、二人共布団に入る。
体が密着しないように、僕は少し距離を開けた。
五分もしないうちに、春美は寝息を立てて寝ていた。
僕は今日の一日を頭の中で回想しながら、眠りについた。
これからも頑張って書き続けていくので、よろしくお願いします。