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#004.試し斬りと暗殺者

「この部屋でしたら好きなだけ武器を振るって大丈夫ですよ。」


 武器屋に併設された試使用部屋。ここでならティフィとフィアが気に入った小刀を試せる。2人とも実戦形式の試し斬りが好きなので、俺と打ち合うことになった。まずはティフィから。


「マスター、縦、横、右上から斜め、右下から斜め、鼻に向けて投擲、最後に首です。」

「はいよ。」

「じゃあ行くです!」


 ティフィの顔がいつもの時とも仕事の時とも違う、獲物を狙うワシのような第3の顔になる。


「来い、ティフィ。」


 俺は剣を抜き、防御の構えを取る。しかし、ティフィは斬りかかってこようとしない。


「どうした? かかってこないのか? 遠慮はいらないぞ。全力で来い。」

「……気合いが入らないです。打ち合いの時にマスターに『ティフィ』って呼ばれると、優しいマスターがチラついてしまって斬れないです。もっと乱暴に呼ぶです。」

「お前そう呼ばせたいだけだろ。俺はあれは嫌なんだが……」

「もし今あの呼び方で呼んでくれないなら、街中で変質者に襲われたって叫びまくってやるです。」

「チッ、分かったよ。」


 俺は一つ溜息を吐くと、


「かかって来い、愚鈍な小娘が。」


 と怨嗟の念を込めて呟くように言う。するとティフィは今度は泣きだした。


「どうした? お望み通りに言っただけなのになぜ泣く?」

「いつもは『愚鈍』とまでは言わないです……」

「要望が多いな、全く。ならこれでいいな?」


 俺はまた1つ溜息を吐くと、


「来い、小娘!」


 と叫び、ティフィを睨み付ける。すると途端にティフィが殺気を纏い、高速で斬りかかってきた。


「覚悟するです!」


 斬り殺さんばかりの迫力。だが、それでも確認した筋通りに小刀を振るっているので、防御は簡単だった。


「むっ、防御するなです!」

「いや、そんなことしたら冗談抜きで俺が死ぬから無理だ。」

「1人で死地に特攻してモンスター全滅させたマスターが私の攻撃如きで死ぬ訳ないです! だから防御するなです!」

「俺だって頸動脈を斬られたら即死だ。」


 ティフィの連撃を冷静にさばきつつ、俺は先程より大きな溜息を吐くのだった。



「疲れたです……」

「張り切りすぎだぞ、ティフィ。でもいいのが見つかっただろ。」


 10分後。いくつもの小刀で試し斬りをしたティフィは、白銀の小刀が気に入ったらしい。


「それでいいんだな。」

「はいです。綺麗で刃毀れしにくそうで可愛いです。これが欲しいです。」

「はいよ。じゃあそれを買ってあげるから、フィアの試し切りの間はおとなしくしてるんだぞ。」

「はいです。」


 ティフィは上機嫌だ。いつもよりかなり素直になっている。


「じゃあ、次はフィア。」

「ん、師匠。じゃあお願いするなのです。」


 そう言うなりフィアは殺気を放つと、筋も告げずに斬りかかってきた。


「遅い。」


 俺は頸動脈を狙った一撃を剣で防御。するとフィアは、


「ん、これにするなのです。」


 とあっさり決めてしまった。


「まだ他のを試してないのに、良いのか?」

「ん、師匠がちゃんと剣で受け止めてくれたってことは、私の攻撃が良かったってことなのです。その攻撃ができたのはこの小刀のおかげなのです。だから、これにするなのです。」

「まあ、フィアがそれでいいならいいが、もうちょっと考えても……」

「師匠は私を拾ってすぐの頃に言ってたなのです。『ルールは大事だが、それ以上に自分が正しいと思ったことや、時には直感を大事にしろ』。だから、直感を信じるなのです。」

「お、おう……そうか……まあ、あまり粗く使ったりはするなよ。」

「勿論なのです。師匠が買ってくれたものは私にとって世界遺産より価値があるなのです。命の次に大事にするなのです。」


 フィアはうっとりした目で黒い刀身の小刀を眺めている。大事にするにしては重過ぎる思いのようだが、まあ構わないだろう。


「じゃあ、これとティフィの白銀の小刀、買い取らせて貰おう。」


 俺は剣を横に振り抜きながらリリナに注文する。剣は俺の横でガキンッと金属音を立てて止まった。


「……バレましたか。」


 声とともに空間が揺らぎ、そこにコルトが出現。


「気付いていないとでも思っていたのか? ストーキングはやめろと言ったはずだぞ、コルト。」

「……私もこの武器屋に用があったのですよ。私用というのは武器の新調です。ただ、ここに来たら強盗がいたので、リリナがどう対応するか見ていたら、師匠が来て制圧してしまわれたので、言うに言い出せず……ついでだから斬り合いでも見ていこうかと思ってここまでついてきたのです。決して、ストーキングをしていた訳ではありません。」

「珍しく長文だな、コルト。後ろ暗いことがある奴はやたら文章が長くなるんだぞ。」

「……後ろ暗いことなどありません。ところで師匠。」

「何だ?」

「……同業者から聞いたのですが、どうやら暗殺者に高額の懸賞金がかかったようです。」

「お前もその賞金首にでもなったのか?」

「……そのようなミスはしていません。しかし、一応お耳に入れておこうかと。では、失礼致します。」


 コルトは空気に溶けるようにしてこの場から消えた。


「面倒なことになったな……懸賞金目当ての奴の依頼は受けないようにしておかないと……ティフィ、フィア。明日からもしかしたら仕事が増えるかもしれないぞ。」

「マスターの役に立てるなら喜んでやるです。」

「ん、ティフィに同意なのです。」


 2人の目がキラキラしている。ちょっと危ない感じもするが、楽しそうで何よりだ。


「じゃあリリナ、会計頼む。」

「あ、はい。合計で金貨1枚と半銀貨です。」

「分かった。支払いはコルトに押し付けてくれ。あいつが今日中に来なかった、若しくは支払わなかった場合は明日喫茶木漏れ日に来い。事実確認をした上で支払ってやるから。」

「コルトさんに請求したら殺されそうな気がするんですが……」

「あいつはそんなに喧嘩っ早くも気が短くもない。強盗2人に抵抗すらしなかった罰だと思って潔く受け入れろ。それと、コルトに関してはささやかな仕返しだ。以上。行くぞ、ティフィ、フィア。」

「はいです、マスター。バイバイです、リリナお姉ちゃん。」

「了解なのです、師匠。バイバイなのです、リリナさん。」

「えー、ちょっと、お師匠様……」

「反論するなら即刻ここを吹き飛ばすぞ。」

「うう……分かりましたよ……でもコルトさんが払ってくれなかったらちゃんと払ってくださいね……それの材料費結構高かったんですから……」

「支払いをバックレたりはしないさ。」


 俺はリリナに笑みを向けると、小刀を手ににこにこと笑っている2人を連れて、武器屋をあとにするのだった。

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