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俺はだんだん腹が立ってきた。
「冗談言ってる場合かよ」
「いやホントなんだって!触っただけでほら」
なんか俺の尻ぺろっと撫でてきた。
「なんだよ気持ち悪い!」
「ご臨終です。」
「はあ!?」
「だからあんたも会ったら危ないんだって」
そんな言い合いをしていると、遠くからは救急車のサイレンが聞こえてきた。
あたりを見回すと、山の方からはひょこひょこ歩いてくる老人がいる。
半そでジーパン、ビーサン。
ああ、よかった、これがうわさのじいさんか。
「じいちゃん!」
「おお、太郎」
「じいちゃん、どこ行ってたんだよ!探したんだぞ!」
感動の再会じゃんか。よかったよかった。
「もう飯か」
「いや、さっき食べたばっかりだろ!ホント何してたんだよ!」
「アレ、アレじゃよアレ」
じいさんはなんかいやらしいハンドジェスチャーしてやがる。
ぼけてんのかぼけてないのか…よくわからん。
「あー…」
「まあでも見つかって良かったじゃないか!」
これで俺も安心して死ねるってもんだ。
「太郎、この子は?」
じいさんが俺に興味を持ったようだ。
「あ、こいつはいいの!気にしないで!」
「友達か?」
「いやそういうわけじゃないけど」
とりあえず説明したほうが良いのか?
「一緒にあなたを探しに行こうとしてたんです」
「どれ。こっちさ来い」
「じーちゃん!だからこいつ違うんだって!」
え、なんか黒いやつ慌ててる?
「は?」
「ああ、飯だったかい?」
「ちげーよ!じいちゃん、いったい今までどこ行ってたんだよ!!!」
「老人ホーム。」
「あー…まぁ…ぎりぎり…」
黒いやつは頭を抱えている。
「老人ホーム?」
こんな夜中に?
「ほれ、こっちさ、来いって」
黒いやつは、とにかくじいさんを連れて帰ろうとしている。
強硬手段なのか、背中を押し始めた。
「じいちゃん、いいから家に帰ろうよ、母さん心配してるし」
「おお、この子やったらな」
やったら?ああ、送って帰ろうとしてるのか?
「いや、車で来てるので大丈夫です」
「じいちゃん、こいつはホントにいいから。」
「んなこと言ったって」
「じいちゃん、じいちゃんはもう引退したから誰もお送りしなくていいんだよ?」
タクシーの運転手とかだったのか?
「んだか」
「そうだよ」
「じゃ、太郎、お前送れ」
「だから…、あ、でもあんたこれから死ぬんだっけ?」
「え?」