凍てつく夜
夜更けの帰り道とは酷く静かで寂しいもの。
仲間と集まった後などは尚更。
特に、寒い時期はきっと何かが起こるのではないかという予感がしてしまいます。
夜、私は歩いていた。
風が酷く冷たい。
きっと一人だからではないだろう。
夜風が凍てつく季節だからだ。
あの刺すような日差しを忘れ去った太陽。それでもなお、昼間は温もりをくれるが、いまはもう落ちた。
一人、夜空に語る。
「さむい、、、」
家路、仲間と別れた後に訪れるそれは静かすぎて自分の足音が一歩一歩確実に響いて聞こえる。
「カッ、カッ…」
夜風が酔いを醒ます。
そして感じる寂しさ、切なさ。
夜が明けるまでの付き合いは少し長すぎる様に思う。
目の前に現れたのは扉、長い年月そこに佇んでいたであろう風格
「ただいま…」
虚空にそう呼びかける。
「…………。」
もちろん返事はない。
癖だ。もう長いことこの空白の箱に向かって出発や帰宅のあいさつをしている。
誰も答えなくて良い。ただ、言いたいだけなのだから。手探りで薄い灯りを灯し、服を着替える。
そこで気付く、ある一つの違和感。
酩酊のため気が付かなかった重要な二つの事。
灯りがやけに薄い、、、
私は今一度虚空に呟いた。
「何故、、、、、?」
やはり返事はない
「………。」
薄暗い部屋に沈黙が流れる。
私の頬を涙が伝った。
【テレビ放送】
「今日未明、斎球県粕壁市のアパートで女性の遺体が発見されました。女性はアパートに住む24歳の会社員の坂本真琴さんのものと見られており…………_____…第一発見者は友人の一人で、遺体に損傷は無く、死因は毒物によるものとの見方で捜査が行われており………___」
僕はニュースを見て朝食の目玉焼きをつい焦がしてしまった。いや、無理もないだろう。友人が、ニュースに出るなど一生のうちに一度あるかどうか。
それも訃報ともなればできれば一度も経験したくないものだ。
「今日は早く帰ろう。」
そう呟いて、僕は焦げた目玉焼きを頬張り、友人に連絡を取った。勿論ニュースの件だ。
僕は気がつけなかった、あの凍てつく程に寒い日の夜の違和感に、、、