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エピローグ

 アニシャ連邦最西の国、ジャランダ王国。

 城塞都市王都ジャルス・ホネの城門傍に、何やら人集ひとだかりができていた。

 城門をくぐって王都に入るには、厳重な手続きが必要だった。城門の外には、手続きを待つ人々が溢れている。そんな群衆の一部が、高い城門下の一画に集まっていた。

 人々の輪の中心にいるのは、翡翠色の瞳を持ち、腰までの金髪が美しい三十代半ばと覚しき女性と、同じ髪の色をした十五〜六歳の少年。ふたりの面立ちは良く似ており親子と知れた。

 少年が一歩前に出ると、大きく息を吸った。


 ――新緑に映える銅の髪

   陽光きらめく藍の瞳

   春の香まいて野を駆ける

   若き清しきその息吹


   雨雲払う風の唇

   宵闇散らす明の声

   踏みし草原咲き誇る

   紅き瑞しき立ち姿


   厳しき誓いの王の冠

   民草愛でる慈悲の掌

   山原海と精霊の

   満つる麗しき邦の長


 少年が歌った歌を知っている者はいなかった。

 しかし、砂漠が多いこの地方の人々は、爽やかな歌声と歌詞に知らず引き込まれていた。

 歌い終えた少年は、深々とお辞儀をすると、観衆に向けていった。

「ただいまの歌は〈麗しのララサララ〉でございます」

 観衆がざわめいた。聞いたことがあるぞ、と誰かが言った。

「遙か大陸の東、小さな魔法の国アプ・ファル・サル王国の、〈早春の息吹〉と称される、若き女王ララサララ・バラオ。これからお目にかけますは、陰謀に巻き込まれ、それに敢然と立ち向かった女王の物語です。お代は見てのお帰りに」

 母親が、〈うそつき面〉と〈風の弦〉を取り出すと、〈うそつき面〉をつけた。

 少年はそれを確認し、高らかに言った。

「時は春。アプ・ファル・サル王国の華麗なる第一王女ララサララは、十五歳で突如王位に就くこととなりました」

 母と息子が紡ぐララサララの物語は、蒼天へと響き渡り、そして、人々の心に刻まれていった。


《了》

最後までおつきあいいただきありがとうございました。

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