表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/91

父と娘 1

 小気味よいひづめの音が響いている。

 心地よい風が髪を洗う。

 流れ行く緑多き風景と、背後から時折視界をかすめる金色の髪との対比が、ララサララから現実感を奪っていく。

 こうして馬にまたがり、マーリーと共に風を感じていると、あの晩餐会の夜を思い出す。きらめく王宮の広間。響くルーリーの歌声。飛び散るリルの血。砕けた硝子。そして――

「……ララ、ララ! 馬に乗って寝たら危ないよ」

 いつの間にか馬は並足になり、マーリーがララサララの顔を覗き込んでいた。どうやら、うとうとしてしまったらしい。

「一休みしようか」

 マーリーは道の先を指さした。小さな川が、陽光にキラキラと輝いていた。



 ギニーとアリーのお願い、それは服を交換することだった。

 四人はノースの家へと戻ると、着ている服を交換した。もっとも、体型がまったく違うので、ギニーとマーリー、ララサララとアリー、と上手く交換はできなかった。

 ギニーの服はララサララにちょうど良かった。マーリーはギニーの服もアリーの服も着れず、ノースの家を物色して、ノースの父親のものと思われる服を借りた。ギニーはマーリーの服を着た。丈が少し長かったが、袖と裾をまくれば大丈夫だった。そしてアリーは、嬉しそうにドレスを抱きしめた。

 男の子の服を着たララサララは随分と印象が違った。腰まである褐色の髪を両脇で結び、その束をさらに縛っている。動きやすくなったのが嬉しいのか、その場で何度もぴょんぴょんと跳ねた。

 服の交換が済むと、ギニーはふたりを町外れの〈馬屋〉へと案内した。

 馬はどこの土地でも重要な交通手段だ。街道沿いには、有料で馬を貸す〈馬屋〉や、馬車の業者が軒を連ねていることが多い。その〈馬屋〉では、通りに面した庭に馬が引き出され、客と主人らしき男が話をしていた。庭の奥にはうまやがあり、何頭もの馬が繋がれている。

「頼めば借りられるのか?」とララサララ。

「違うよ。勝手に乗るんだ」ギニーが言った。

「なに?」

「僕が囮になるから、ふたりは馬に飛び乗って」

「……」

 ララサララとマーリーは顔を見合わせた。よりによって馬泥棒とは。

「でも、戻ってくるんだし……借りるだけなら大丈夫かな」

「マーリー。そなた本当に屁理屈が上手いな」

「そう?」

「まあ、失敗したら歩いて行けば良いだけだがな」

 ララサララの今の格好ならば、ドレスより数段歩きやすいだろう。

「いい? じゃあ、あれでいくよ」

 ギニーが指さした先で、〈馬屋〉の主人が二頭の馬を引いていた。

 ギニーの先導で厩の裏から主人に近づいた三人は、頃合いを見計らった。そして、ギニーが庭に飛び出し、主人に向かって駆け寄った。

「こら! なんだ?」

「ねえ、おじさん。遊ぼうよ!」

「ブリューチスさんとこのガキじゃないか。儂は忙しいんだ。あっちへいけ!」

 主人が気を逸らしたのを見て、ララサララとマーリーも飛び出した。〈馬屋〉の馬にはくらあぶみが付いている。裸馬に飛び乗るのは容易ではないが、鐙があるなら話は別だ。マーリーは軽々と鐙に足をかけると、一頭の馬の鞍上に飛び乗った。そして、ララサララを引っ張り上げ、馬の横腹を蹴り上げた。

「なんだ?」

〈馬屋〉の主人が驚いて声を上げた。それでも手綱を離さないところはさすがだが、ふたりが飛び乗った馬だけでなく、隣の馬も驚いて暴れだしてしまったから、そうそう持っていられるものでもない。ふたりが振り落とされないように耐えるうちに、手綱が主人の手から離れた。マーリーはすかさずそれを握ると、暴れる馬を制御して駆けだした。

「馬泥棒!」背後から主人の怒声が聞こえる。

「返しますから!」とマーリーは叫んだ。

「行ってらっしゃーい」ギニーが手を振る。

 主人の怒声も、ギニーの声も、あっという間に彼方へと遠ざかっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>異 世界FTシリアス部門>「ララサララ物語 〜女王と歌と常闇と〜」に投票
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ