表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/91

マーリー 4

 夕食時が一段落すると、ルーリーはマーサと共に厨房に入っていった。マーサに異国の料理を教えて欲しいと請われたのだった。

 夜が更けてきたこともあり、アンナとハンナは寝室に引き上げていった。

 マーリーが座る卓には、いつの間にかラド親方の知り合いが集まっていた。

「坊主、ちゃんと飲んでるか?」

 三十絡みの禿頭巨躯とくとうきょくの男が言う。彼の前には、空になった麦酒の杯が並んでいる。

「お酒ってそんなに美味しいの?」とマーリーは発泡果汁を飲みながら訊いた。

「人生は酒と女のためにある」

 鼻の高い痩せた男が赤ら顔でうそぶいた。そして、「麦酒もう一杯」と厨房に向かって叫んだ。

「あんた達、明日も仕事だろう。いい加減にしときな」顔も出さずにマーサが答える。

「マーサの言うとおりだな」とラド親方が言い、鼻高男はなたかおとこは首をすくめた。

「坊主達は明日はどうするんだ? しばらくこの町にいられるのか?」禿頭男とくとうおとこが訊く。

 マーリーは首を振った。

王都おうとに向かう予定なんだ」

「王都ファル・バラオか」鼻高男が呟いた。

 アプ・ファル・サル王国の王都ファル・バラオは、ここ港町アプ・タリルから歩いて七日ほどの距離に位置している。アプ・ファル・サル王宮をいただく大きな町だ。

「何か用があるのかい?」禿頭男は、何かと聞きたがるたちらしかった。

 マーリーが答えを考えている間に、ラド親方が禿頭男をいさめた。

「答えなくていいよ坊主。すまんな。港は通りすぎる場所だ。詮索しないのがここの決まり事だ。こいつ、今日は酔っているみたいだな」

「別に隠すようなことは何もないよ。立ち寄った国では、必ず首都に寄ることにしているんだ。その国のことが一番よくわかるから」

「聞いたことがあるぞ」と叫んだのは鼻高男だ。「旅の歌い手は、他国の出来事を歌にするんだってな?」

「うん。どこに行っても、みんな他の国のことを知りたがるんだ。今日港でやったのはテテン王宮の恋物語だったけど、色々な歌があるよ。話だけを売る場合もあるんだ」

「なんか面白い話があるのか?」禿頭男が身を乗り出した。

「タダじゃねえって、今言ってたじゃないか」

 ラド親方がそう言うのを聞いて、マーリーは「交換にしよう」と言った。「この国のことを教えてよ」

「よし、その話乗った。お互いの情報交換と行こうじゃないか」

 禿頭男が嬉しそうに声を上げた。ラド親方と鼻高男も興味を示し、マーリーと彼らの交渉は成立した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>異 世界FTシリアス部門>「ララサララ物語 〜女王と歌と常闇と〜」に投票
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ