ファル・ベルネの町 4
「さっきは、すまなかった。せっかくの好意を踏みにじるようなことを言った」
ララサララはギールに向かって頭を下げた。
「ああ……。わかってくれりゃあ、それで良い」
ギールは関心がなさそうに言った。ふたりは、ガタナとユジーにも頭を下げると、工房を後にした。
「あら、お帰りになるの?」
工房を出たところで、ユーナが声をかけてきた。
「はい。大隊長さんの家で待たせてもらう約束ですので」
「そう」
ユーナは無理に引き留めようとはしなかった。
家の外に出ると、ララサララがマーリーに言った。
「マーリーのお陰で、急ぎ王宮に戻る気が失せた」
「お陰って……」
「父王に会いにいこうと思う」
「お父さんに?」
「ここは、マーテチス州のファル・ベルネの町だ。リルが調べてくれた離宮が近いはずだ。大隊長も、そんなにすぐには戻らないだろう」
「近いってどのくらい?」
「馬で数時(三〜四時間程度)というところだ……。歩いても一日あればなんとかなるかな」
「……馬か」
「馬が必要なの?」
ふたりが驚いて振り向くと、そこにはギニーとアリーが立っていた。ふたりは、ユーナから頼まれたと言って、小さな包みを差し出した。中はパンのようだった。
「馬が必要なの?」ギニーが繰り返した。
「どこかで借りられるかな?」とマーリー。
「家では持ってない。でも、何とかなると思うよ」
「本当?」
ギニーとアニーは顔を見合わせると、にやりと笑った。
「本当。その代わり、お願いがあるんだ」