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ノース 3

 父の葬儀のために休暇を取っていたノースは、四日の休みを終えて、王都ファル・バラオのアプ・ファル・サル王宮へと戻ってきた。

 ファル・ベルネの町から王都ファル・バラオまでは、歩いて二日、馬を飛ばせば約半日の距離だ。馬を駆って朝早く家を出たノースは、日が天頂に昇りきる前に王宮に到着することができた。

「大隊長、お帰りなさい」

 騎士団第八大隊長室に顔を出すと、参謀のベルルが声をかけてきた。

 アプ・ファル・サル王国には、〈騎士団〉と〈州軍〉の二つの軍隊が存在する。国王直属の軍隊である〈騎士団〉は、王都ファル・バラオの警護と治安維持を担当する。一大隊の定員が約三百五十名。全八大隊で、総勢約三千人となる。一方、各州で諸侯が率いているのが〈州軍〉だ。人数は州によって違うが、概ね一万五千人程度。こちらも、各州の警護と治安維持を担当している。

 ノースの騎士団大隊長という職務は、騎士団三千人の中で八人しかいない要職だ。騎士団長、副騎士団長ふたりの下に位置する。しかるに、専用の部屋もあるし、参謀もいる。

「お葬式、どうでしたか?」

 湿っぽい事柄もからっと話せてしまうのが、ベルルの良いところでもあり、悪いところでもある。髪は明るい褐色で、年齢より随分と若く見える。甘いと言えば聞こえの良い童顔。女性かと見間違えそうなすらりとした体型。きっと、さぞかし女性にもてることだろう。

「滞りなくすませたわ。叔父がほとんど仕切ってくれた。私は父の棺の前で泣き崩れているだけで良かったわ」

「泣き崩れる大隊長ってのを、是非見てみたいです」

「ところで、私の留守中、特に問題はなかった?」

「大騒ぎでした」

「なに?」

「大隊長が休暇を取られた最初の日ですよ。晩餐会で、女王陛下を狙う魔術師の襲撃があったんです」

「何ですって?」

 ノースの剣幕に、ベルルはたじろいだ。

「ご存じの通り、王宮内はうちの大隊の警護担当じゃありませんでした。第二大隊の当番でした。ミューカス第二大隊長なんて、なんで自分達のときにって、随分愚痴ってましたよ」

 ベルルの話をまとめるとこういうことだった。

 四日前の夜。ララサララ女王主催の晩餐会に、旅の親子連れの歌い手が招待された。親子は〈うそつき面〉を使う劇をやるから、と言って、中広間の〈魔法封じ〉を解かせた。そして、隙をみて女王陛下を襲った。しかし、襲撃は失敗。母親の魔術師は、パウバナ大司教と三諸侯に取り抑えられた。息子の方は、逃げるときに女王陛下付きの女官に怪我を負わせた。

「陛下はどうなされたの?」

「ご無事です。あれ以来、随分と警護が厳しくなりましたけど」

「怪我をしたっていう女官は?」

「重傷だって聞きました」

「逃げた息子の方だけど、どんな服を着ていたかわかる? 指名手配になっているでしょ?」

「ええ。王宮から貸し出した服だそうです。絹の白いシャツ。紺地に金糸で縁取りをした上着と、膝丈のズボン。明るい金髪で、目の色は翡翠色です」

「もう一つ、晩餐会のときの陛下のお召し物は?」

「え? さあ、そこまでは……」

 わかった、と言うと、ノースは足早に部屋から出た。

「あれ、大隊長?」

「用事を思い出した。後よろしく」

 そしてノースは、騎士団第二大隊長デュー・ミューカスの部屋へと向かった。

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