道行き 4
川を遡った先には、小さな池があった。
林の中にぽっかりと開けたそこは、湧き水が池となり、川へと流れていた。水面には、張り出した木々の枝が濃い影を落としている。時折聞こえる鳥の鳴き声と水のせせらぎ以外には、ほとんど音も聞こえない。池の向こうには、林の中を抜ける道がある。どこかから水を汲みに来る人があるのだろうと思われた。
静かな水面を眺めていたララサララが、ぽつりと呟いた。
「水浴びがしたい」
「え?」
「見張っていてくれ」そう言うと、ララサララはドレスを脱ぎ始めた。
当然のようにマーリーは慌てた。
「ちょ、ちょっと待ってください。陛下」
「なんだ」
「こんなところで水浴びなんて、不用心です」
「だから見張っていてくれと言っただろ。心配するな、そなたが水浴びをするときは私が見張っている」
「そういう心配はしていません」
「じゃあ、何なのだ」
言っているうちにもドレスは脱ぎ捨てられてしまい、ララサララは下着に手をかけている。
「僕は男ですよ?」
「それがどうした」
「いえ、その……」
しばらく考えていたララサララは、ようやく何かに思い当たったようだ。
「そなた、何か無礼なことを考えているのか?」
「え? ……いや、考えていませんけど」
「では問題ない。見張っていてくれるな?」
「……はい」
マーリーが答えるのも待たず、ララサララは上の下着を脱ぎ捨てた。
真っ白な肌が目に入り、マーリーは慌てて顔を背けると、その場を離れた。
「あまり遠くに行くでない」
マーリーは池の反対側の道を見渡せる場所に腰を下ろすと、深くため息をついた。王族というのは一般人と感覚が違うらしい。自分の裸を見られることが恥ずかしくないのだろうか?
背後からは水浴びの音が聞こえてくる。
ララサララの真っ白な肌が脳裏に浮かび、マーリーは慌てて頭を振った。




