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出逢い 5

「〈金翠の歌姫〉、君に頼みがある」と子爵が言った。

 歌が終わり、三人は卓を囲んで果実酒の杯を傾けていた。

「私の手紙をたずさえてアプ・ファル・サル王国へ行って貰いたい。王宮で末娘のリルが女王付き女官をやっている。彼女に届けて欲しいのだ」

「承知いたしました」

 理由も問わずルーリーは請け負った。旅の歌い手であるルーリーは、この手の伝令役を頼まれることが多かった。

 しかし、子爵は不足だと思ったのか、さらに言葉を重ねた。

「手紙を届けるだけなら君ほどの人に頼むことではない。しかし、今はあの国も、そしてこの国も政情不安定だ。手紙を届け、かの王国の情勢を見極めてほしい。場合によってはリルに力を貸してやって欲しいのだ」

 そして子爵は、三諸侯が我が物顔で仕切るアプ・ファル・サル王宮の現状を、ルーリーに説明した。それはリルからもたらされた情報だということだった。

「リル様のお立場は……」

「数少ない女王派だ。歳が近いせいもあるのかな。王宮内で孤立無援だが、女官という低い身分が幸いしている」

 子爵の言葉を引き継ぐ形でカカパラスも口を開く。

「私からもお願いしたい。できれば、ララサララの力にもなってあげて欲しい」

 それは、ルーリーには意外な言葉だった。仲の良い兄妹と言ってしまえばそれまでだが、王位の問題には本当にこだわっていないのだろうか。どこの国でも王位争いは激烈を極める。大概、親族兄弟間の争いとなるものだ。

 ルーリーの考えを見透かしたように、カカパラスが笑いながら続けた。

「私は、アプ・ファル・サル王国の王位に未練はありません。それよりも、この国に興味がある」

「?」

「はははは。いずれこのデル・マタル王国を我がものにして見せようということです」

 ルーリーは驚いて目を見張り、思わず辺りを見回した。誰かに聞かれでもしたら大変なことになる。〈豪胆王子〉カカパラスとはよく言ったものだ。

 ブリスター子爵は満足そうに目を細めた。

「殿下は本気だよ。そのためには、ララサララ女王の治世が安泰なのが望ましい。しかし、そう上手くいきそうになくてな」

 そして子爵は、アニシャ東方三国の不穏な動きについて話し始めた。

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