ララサララ 4
「陛下、以上で今朝の議題は終了です。何かございますか?」
鉱山候が、異様に長い口髭をしごきながら、お座なりに訊いた。他の出席者達はすでに席を立ちそうな勢いだ。
三ヶ月前に比べると、ララサララの気力は随分と持ち直していた。三諸侯の横暴に、刃向かうまではできなくても、わずかなりとも抵抗を示してみたいと思うようになっていた。
「前王陛下と前王妃殿下は息災か?」
「我が州の離宮にて、静かにお過ごしでございます」
平原候が有無を言わせぬ口調で言う。会わせよ、と今まで何度も迫ったが、「前王陛下がお望みではありません」とはねつけられ続けている。
「兄上の消息はまだ掴めぬのか?」
「未だに」と、いかにも武人らしいがっしりした体格の港湾候が首を振った。
ララサララは嘆息した。形式上、王が解散を宣しなければ朝議を終えることはできない。このまま押し黙っていようか、とララサララは思った。
「陛下。評判の旅の歌い手が王都に滞在しております。御前に召されてはいかがでしょう」
不覚にも、ララサララは鉱山候のその言葉に反応してしまった。
「母と子のふたり連れです。アニシャ連邦を通ってきたとの噂を聞きました。カカパラス殿下のことも、何かお噂を聞きつけているやも知れません」
その親子がそんなことを知っているなら、召してみろ等とは言わないだろう、とララサララは思った。何も知らないことをすでに確認済みか、そうでなければ、カカパラス王子の噂など流れていないことに自信があるのだ――
それでも、巷で評判だという旅の歌い手親子の話には興味を引かれた。
「それは是非会ってみたい。以上だ」
鉱山候と平原候が揃ってにやりと笑ったのを、ララサララは見逃さなかった。