表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/91

マーリー 9

〈一番亭〉の客室は小さく、ルーリーとマーリーが案内された部屋は、小さな藁の寝台が二つで一杯だった。それでも、荷物の少ないふたりには充分だったし、昨晩までの船旅と比べたら天国といえた。

 マーリーは寝台の上に座り、窓から差し込む月明かりで〈うそつき面〉を磨いていた。船の上でも何度となく使用したため、潮風に汚れてしまっている。今手入れをしておかないと、龍青玉のはめ込まれた木製の面は、早々に痛んでしまうだろう。

 隣の寝台から、ルーリーの規則正しい寝息が聞こえてくる。それを聞きながら黙々と作業をこなしているうちに、マーリーはいつしかララサララ女王のことを考えていた。

 ララサララ・バラオ。自分と同じ十五歳で一国の王位に就いた女の子。

 十五歳といえば、世間ではようやく一人前として認められる歳だ。働き手としても雇ってもらうことができる。しかしそれは、子供から大人という括りへ移され、それまで許されていたこと、見逃してもらえていたこと、庇われていたこと、そういう特権を失うことを意味している。

 マーリーは考える。自分は少しは大人になれているのだろうかと。物心ついた頃からルーリーとふたりで旅をしてきた。父親の顔は知らない。今、突然ルーリーがいなくなったら、自分は旅を続けることができるのだろうかと。

 自分と王女では立場があまりにも違う。王族として、王女として育てられたララサララには、いつ何時王位に就いても良いだけの心構えがあったに違いないのだが――

 マーリーは手を休めて、窓の外の月を見上げた。

 王位についた十五歳の姫様が見事な威厳をみせた――という話だったのなら、マーリーは単に感嘆して終わっただろう。その逸話をどんな歌にしたらよいか、楽しく考えたに違いない。しかし、常闇を望むと言ったララサララの話は、マーリーの心を激しく揺さぶった。常闇が何を指しているのか、それは未だに謎だという――

 ララサララという十五歳の少女に、常闇を望むと言わしめたものは何だったのか。

〈早春の息吹〉と称され慕われた王女に、一体何があったのか。

 マーリーは彼女に会ってみたいと思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>異 世界FTシリアス部門>「ララサララ物語 〜女王と歌と常闇と〜」に投票
ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ