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和解


少し重い足取りで馬車に乗るといつから私の後ろを歩いていたのかカイリが一緒に乗ってきた

付いて来ていた事にすら気が付かなかったけど

行きの馬車に乗っていたのか

それとも午前中からキーシャに会いに来ていたのか


馬車が動き出して少しするとカイリがグスッと鼻をすすった

必死に目元を隠しているが肩が震えていた


え・・・!?泣いてる!?

なに、どうしたらいいの、というかなんで泣いてるの

子供が泣いてるのなんかどう対応したらいいか分かんないよ

7歳ってことはあれかな仮面ライダーとかかな?

いやこの子普通の男の子じゃないし


ん?私の弟ってことは王子にはいる?

え、待ってこの子おーじしゃまなんじゃ

やばい興奮してきた

よちよちしながら涙ぺろぺろしたい


長年こじらせてきた王子様愛はショタコンと併発していたが私はそんな自分の性癖に関しては恥じらい期を超えて誇り(プライド)期を迎えている

ぺろぺろしたいですが何か?

というスタンスに達しているのだ


「アイリス・・・」


鼻をすすりながらカイリがぽつりと私の名前を呼んだ

アイリスは姉上と呼ばれてもあんたの姉じゃないと暴れ、名前で呼ばれても気安く呼ぶなと暴れていたが私はカイリが悪くないと分かっているから怒らない

アイリス呼びも悪くないが

ねーちゃん・・・ねーねも捨てがたいぞ

弟欲しかったんだよね


「ごめんアイリス、俺のせいでパーティーめちゃめちゃだ

知らなかったんだ・・・アイリスが悪い事してないって

それなのに俺・・・」


あぁ、聞いちゃったのか私たちの会話を

この子キーシャの事好きっぽかったもんね、腹黒い彼女にびっくりしたよね


それに私も10歳の誕生日がどういう意味を持つのか知ってる

だからまぁ、落ち込むのもわかる

私はそこらの姫たちと違って白馬の王子様がいかようにして迎えに来るかわかっているから全然問題ないんだけどね

かといってどんまい気にすんなって言っても気にするだろうし

ほっぺぺろぺろさせてって言ったら引かれそうだな

ここは無難に行こうかな


「じゃあ、私が今までカイリにしたことも許してくれる?

私、カイリとは普通に仲のいい姉弟になりたい。カイリのお姉さんになりたい」


そしてねーねと呼んでほしい

くっそチキって声にならなかった


私の申し出にカイリは驚いたように目を見開いた

そして照れたよう笑ったのだ


「なんだよそれ、変な姉さん」


夕日に照らされたそなたは美しい

カイリの笑顔が尊過ぎてメサイヤよりハレルヤだった


私はカイリはすんなり今までの暴挙は許してくれないと思っていたが、単細胞系悪女だったからかそこまで悪評ではなかったようだ

アイリスがあほの子で10歳を迎えてくれて良かった


揺れる馬車は何とも和やかな空気で満ちていた


「私、今回のことでね

今まで逃げてきたけど勉強とか色々頑張ってみようと思うの」

「うーん、みんな逃げて行ったから今更面倒見てくれる教師いるかな」


貴族令嬢が字を書いたり読んだりを習うのは10歳までが基本との事

詰んだな

私が追い払ったわけじゃないのに

なぜ生まれた瞬間から記憶持ってなかったし


「俺が教えてあげようか?」


ふと思い至ったようにカイリが口にする


「夕飯後だったら時間あるし、いいよ俺が教えてあげるよ」

「え・・いいの?」


照れ隠しで上から目線なカイリの態度は私からしたらご褒美でしかなかった

これからカイリきゅんと夜のお勉強会

ぐふふ

今まで勉強しなくてよかった!


そうこうしているうちに我が家に到着

すっかり晴れやかな気分だ

周囲にはどう思われているか知らないがカイリがいる

もうどうでもいい

姉弟だから自重するがな


馬車から降りるとロールズが駆け寄ってきた


「アイリス様!仲直りできた?」

「・・・・ぁ」


つぶれたブローチ回収すればよかった

ロールズも手伝ってくれたのに申し訳ない事をした


「無理・・・だったみたいだね?」


私より少し背の高いロールズはうつむく私の顔を覗き込むとハッとしたように私の顎に手を添えクイッと上を向かせた

いわゆる顎クイなるものだ


「泣いたの?」


いつもにこやかなロールズは少し低い声でそういうと真剣な目で私を見ていた

9歳とは思えない大人びた表情だ

こうして見ると鼻筋が通ったきれいな顔をしている

頬が少し泥で汚れておりキラキラと汗が夕焼けに反射する

無造作に後ろでまとめられた髪がザァッと風に揺れた


「えっと・・・」


年甲斐もなく顔に熱が集まるのが分かった

まぁ10歳なんだけど


私の長い髪を無骨な手がするりとなでる

剣を持つ男の手だ


「ん・・・?」


ロールズは髪に何かを刺した

手で取ろうとすると優しく止められた


「あまりうまくできてないから、部屋で見て」


その言葉になんとなく何か分かった


「ありがとう」


そう言って笑うとロールズは照れくさそうに頬を掻いた

その横でカイリが悶々と頭を抱えていたが私にはそれに気が付く余裕はなかった


部屋に戻ると私の頭には簪のようなアクセサリーが刺さっていた

やはり今朝もらいそびれた花がついていた

そしていない間に作ったのだろう蝶も止まっていた

お世辞にもかわいいとは言い難い出来だが不器用ながらに頑張ったということが伝わってくる暖かいものだった


やはりあのブローチは回収したかったなぁ

惜しいことをしたがまた趣味として作ればいいか


夜になるとカイリが私の部屋に来た

どうやら今日から勉強会を始めるらしい

そわそわしながら部屋に入ったがふと枕元に飾っていた簪を見て眉間にしわを寄せた


「あいつの事好きなの?」

「え?ロールズの事?いやそういうのじゃないけど」

「ふーん」


今日は少しドキッとしたけど普段は殴り合いの喧嘩だってする

まぁ今日から私は淑女ゆえそのようなことはしませんがな


さてさて早く字を書いたり読んだりできるようにならねば

それさえ出来れば書斎の本が読めるから独学でもなんでも色々学べる

カイリはこの家の当主にならないといけないからあまり邪魔しちゃ悪いしね


「教材持ってきたから」


そう言って机に置かれたのは明らかに絵本だった


「アイリスはあほだからこういう所からやってかないとだな」


「・・・・・」


言い知れない切なさだった

いやゆる桃太郎とかウサギと亀のような童話型絵本だ

まぁ馬鹿にされているなとは思ったけども


なんとしてでも見返してやると

そう強く思った

主人公の考える王子様とは所謂国王の息子ではないです

少女がざっくり抱く

お金持っててー

大きな家に住んでて―

優しくて―

みたいな感じです

なので爵位アリ=身分が高い為白馬に乗っていれば誰でもOK状態です

ちなみに騎士団長の息子は王子に入らないです

金と爵位を持っていないので

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