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翌朝


私は現代では考えられないくらい大きな天板付きのベットで目を覚ました


アイリス・エル・コルテス


それが今の私の名前である

ここクルイエス国家を繁栄させ確固たる地位を築きあげた現皇帝に初代より仕えている三大公爵家に従事している伯爵家の一つ

上から見るとそんなに高い地位に見えなくなるから不思議だがサラブレットであることは間違いない


代々同一公爵につかえた伯爵家のみで脈々と血を濃くより強固にしていった貴族の家系のうち一つが我がコルテス家である

まぁつまり同じ公爵につかえる伯爵家の者同士でしか結婚が出来ないというものなのだが

私はそんなことはどうでもよかった


王子様がいたのだ


何かを勘違いしてまるで私を攻めるように立っていたが

あの時

記憶がよみがえったその時

私の前には王子様が立っていた


鼻の穴が膨らみ顔が紅潮するのが分かった


気品あふれるその立ち居振る舞い

金髪に蒼い瞳、そしてシュッととおる鼻筋

白い肌にピンクくぽってりとしながらも形のいい幼い唇


何もかもが彼を王子様然とさせていた


精神年齢の高い私には12歳は幼いだろうか

否、王子様が好きなのだ

王子は子という字が用いられるというくらいだ幼いに決まっている

私のストライクゾーンは5歳から25歳までだ

私は幼き彼を監禁して愛でたいし、叶うのならばベットに縛り付けて服を剥ぎ、その白い肌を惜しげもなく嘗め回したい


おっといけない自粛自粛


私は体を起きあげると寝間着のまま机に向かった

ノートとペンを取り出し作戦と大きく書いた

もちろんこの世界は私が生前使用していた言語とは違うが日本語で書いた

何を隠そう10歳にもなって字がロクに書けないのだ

記憶が戻る前の私は本当に猿のような女で字なんて教え込もうとするや否や城中ありとあらゆるところに逃げ隠れ

見つかっては殴り飛ばしてそのすきに逃走していた


まぁ、今日から真面目に勉強はします

本当に申し訳のない事をした


逸れてしまったが作戦だ

なんの作戦かって決まっている。

王子様捕獲作戦だ

おっと、勘違いしないで欲しい

この作戦は捕獲(物理)ではないのだ


私の魅力でメロメロにして白馬に乗って迎えに来てもらうのが終着点である。


ちなみに私の容姿は悪くはない。

昨日のキーシャは絵に描いたようなかわいい少女であった。

プリンセスで言うならラプ〇ツェルといったところか、金色の豪華な髪が今でも私の脳裏に揺れる

ただ髪に花を刺した彼女と違いキーシャは悪女だ

性格のねじ腐った彼女は思うに私のかませ犬にふさわしい


ああいった女を踏み台におっとイケナイ

ああいった方々のいじめに耐え抜くことでプリンセスたちは王子様に見初められるのである


対する私は髪は赤が強い赤紫色

はっきりとした黒いぱっちりした目

まぁ、プリンセス感は確かに薄い

ポ〇モンだとするならあく、どくまたはゴーストタイプといったところか

とてもじゃないがフェアリータイプではなさそうだ

ただ、前世とは比べ物にならない真っ白で透き通る肌に長い手足

おしとやかなお姫様とはほど遠いがこれならいける


頭の中では白馬の上で王子様に後ろから包まれその胸にしなだれかかる自分が想像出来た


私の作戦はこうだ


きっと昨日の事をフィリップは少なからず申し訳なく感じているだろう

またキーシャ、あの女は次必ず仕掛けてくる

今度私がキーシャともめた際フィリップは今回の件もあり必ず

私側に立つだろう

そこであえて矢面に立ち

私は大丈夫ですのでと言い一筋涙を流しながらも懸命にキーシャのいじめを耐え抜いて見せよう


受動的作戦ではあるがこれで行こう

そう思ったその時勢いよく扉が開いた

弟の入場だ

正直カイリとアイリスは馬が合わなかった

顔を合わせるたびカイリをいじめてきた為アイリスの事を心底嫌っている

そもそもアイリスがカイリをいじめるのは腹違いの息子に母上が毎晩泣いていたからなのだが幼いカイリからしたらそんな事知ったことではない

7歳になった今では事あるごとに喧嘩をしている


「お前、最低だな」


突然の第一声に驚いた

いやいやいや、昨日ジュースぶっかけたあなたがそんなこと言う?


「キーシャがかわいそうだ」


そういって攻めるように私を見つめるカイリにきょとんと眼を丸くした


「自分でブローチあげたんだろ?なんであんな事すんだよ」

「な??何わけわからないこと言うのよ?」


本当に訳が分からない


「広場でもめる前、キーシャがアイリス様が素敵なブローチをくれたって喜んでたんだよ

フィリップも呆れてたぜ

大勢の前で人を陥れてそんなに楽しいかよ」


完全に私を責める瞳だった。

フィリップはこの目で立ち去る私の後姿を見ていたのだろうか


ガラガラと作戦が崩れた

そう、これは自分が出した営業成績を上司にとられたときに似ている


キーシャは私より幾重も上手だった


昨夜の騒動はわがままな私がフィリップにいい顔を見せようとわざとキーシャを陥れた、という事になっていた


カイリはキーシャが好きなのだろう

捲し立てるように言いたいことを言い捨てると何か粉々になったものが投げつけられる


「いたっ」

「あんたが突き飛ばした時に割れちゃったんだってよ」


足元にはばらばらになったブローチ

わざとだ

そもそも私はキーシャを突き飛ばしてはいない

あれはそう見せようと勝手に転んだのだ


敵は思っているよりずっと強い

生前ずっと逃げてきた交友関係の築き方

努力しなかった事のひずみが転生した今でも付きまとっていた


軽蔑の瞳で私を一瞥するとカイリはバタンと大きな音を立てて部屋を後にした


-----------------------------------------


今回の出来事を考える

嘘をついたキーシャの信用と私の周囲からの目についてだ


ヒロインとなりえるプリンセスとはどんな人物だろうか


健気でひたむき

小動物に優しく

前向きで笑顔を絶やさない


今までのアイリスはどうだっただろうか

横暴で傲慢

やりたい事しかやらず

弱いものをいじめるのが大好きだ


なるほど、信用あるわけがないか


立ち去った弟を前に私はしばらく立ち付くし、そして頭を振ると第二次作戦会議を始めた

私に足りないのはヒロインたる基礎ステータスだ

頑張る姿を見せたのは最近のダンスと礼儀作法だ

それも暴れる寸前になる度に教師陣はフィリップの名前を出し何とか収めながら習得しただけ

ひたむきに頑張ったとは言い難い


そう、ひたむきさなのだ

まだ10歳だ

まだまだ挽回の余地はあるはずだ

次の大きな式典はいつだったか

私はそれまでに気品あふるるお姫様にならなくてはいけない


とはいえそうなるには時間がかかる

どうするか

うろうろと部屋を旋回するとパキリと足元で音が鳴った

先ほどのブローチである


ふむ


良いことを思いついた

私はこれから好感度というものを意識して生きていこうと思う

そう例えば、自分でお壊しになられたブローチを治して差し上げるとか


そうと決まれば私は急いで床に散らばったブローチを拾い集めた

ロールズのところに行こう

職人に任せればすぐであるがこういう時はあえて自分の手で直すことに意味があるのである


そして私はこれからはシンプルなドレスを着ようと決めた

豪華なドレスよりシンプルなドレスのほうがひたむきさが増すからである


部屋にある一番シンプルなドレスを着て壊れたブローチを持つと私はロールズのところに向かった

ロールズは大抵中庭にいる


中庭であほみたいに朝から晩まで素振りをしているのだ


「ロールズ!」


声をかけると人の良さそうな顔でにこりと笑った


「どうしたのアイリス様」


一つ年下ではあるがロールズは幼いころからアイリスのわがままに振り回されながらもしっかりと主張を通し続け

結果として対等に会話することの出来るようになった人物だ


「壊れてしまったブローチを治したいの、自分の手で」

「それはまた・・・」


なんでまたという顔だった。

そもそもロールズは器用ではない。ブローチを治すパートナーとしては役不足なのだ

きっと出来栄えとしてはあまりよろしくないだろうし時間もかかる

でも、だからこそいいのだ

努力の時間が長いほどいい子ちゃん度は上がるのだ


「昨日のパーティーで、私少し触っただけで女の子を転ばせてしまって、その時に壊れてしまったの」


私のせいだから私が直したい。主張こそ普通だがアイリスが決して言いそうにない言葉にロールズは困惑を隠しえなかった

一番に仲が良かったということは一番の理解者ということである

なんとなく分かっていたためそれっぽい言い訳は考えてあった


「今回の誕生日で分かったの、私ちゃんと淑女になってフィリップ様を振り向かせるわ!」


そう力ずよく言うと

そう・・・と苦笑いを返された


「でもどう直そうかしらね」

「うーん、アクセサリーなんてわからないからなぁ」

「ねー・・・今まで直そうなんて考えてこなかったから」


レジンがあれば早いのだが、この世界はそういったものはなさそうだ

私には中世ヨーロッパのように見えるがこの世界の人達は聞いたことのない言語を話している

移動手段も馬車だし、私がいた時代より文明は遅れている

唯一電車がない事にはありがたみを覚える。

私は電車が怖い。

当然だ、生前あんなことがあったんだ。

不便だとしても電車のない世の中に来れて感謝すらしているのだ


「そうだ!」


私が前世の事を考えている間にもロールズは色々考えてくれたようだ

私の我がままなのに関係ない事に悶々としてしまった申し訳ない事をした


「蝋を使うのはどうだろう!」


晴れやかな笑顔のロールズ

名案だ

強いものにはできないと思うが造形も出来る。子供ができるそこそこのものでいいのだ


「出来上がるまで、一緒に頑張ってくれる?」


そして健気さアピールの上目遣い&もじもじ


こ奴から取り込むぜよ


「お・・ぅ・・・」


奇異なものを見る目をされた

おかしいな、何がいけなかったのか

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