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青空に歌えば  作者: 瞬々
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 長倉海人は何をするでもなく、青空を仰いでいた。何かいい事はないかなぁと。勿論、あるわきゃない。


 四月。それは紛れも無く始まりの時だ。新らたな場所、新たな出会い、新たな気持ち。とでも、言っておけばやはりロマンティックに聞こえるだろう。だが、結局のところ、どこに行こうと似たような事が起こり、似たような生活が待ち受けている。そうなるだろうと、海人は頭のどこかでは考えていた。


 それでも気持ちの持ちよう次第だと、海人は思う。自分がどれだけ、その変わり様のない生活と向き合うのか。ただただ、受け身で待ち受けようとは、もう思わない。


――それでも、青空を見る癖だけは、変わらないな


 彼女の歌が頭の中で蘇るのだ。


――青空に歌えば


 歌のフレーズが口から出た。鼻歌がメロディを刻む。


 それに合わせて、上から誰かが歌った。


「誰かが君の事、見てくれる――ってね」


「そ、空さん!?」


 海人は吃驚して、飛びのいた。蒼野空、彼女は校門の近くに聳え立っていた常盤色の葉が生い茂る大木(学校が開校した時に植えられた物である)から飛び降り、海人のすぐ傍に着地した。

「うぐ、足首を挫きました……」


「あの、バカですか?」


 苦悶に顔を歪める空に、海人は動揺をまだ抑えきれずにいた。


「バカとは何か! 海人君が、1人寂しそうに学校通うんだろうなと思って、心配して来てあげたというのに!」


別に、海人の頭の中で、空の歌が頭で再生されていたからと言って、彼女がどこか遠くに行ったわけではない。あしからず。


「いや、その、というか、空さん学校は?」


「ふふふ、あんなの、友達の危機に比べれば――すみません、明日からです」


 海人の目が、聖人君主のような温かいまなざしになるのを見て、空は慌てて本当の事を告げた。


 やれやれと海人は首を振る。大方、暇だから覗きに来ましたとかそんな所であろう。


「そうそう、これを伝えに来たのよ。ほら、新聞」


 空は、新聞の切り抜きを海人に差し出す。空と、恵美、尾田、それに海人が揃った写真が載せられていた。四人が出会った経緯、空がバンド結成をした時の決意等々が載せられている。


「新鮮な感性の持ち主との出会い」海人との出会いの題名がそんな感じ。なんというか、このタイトルを見た読者は、どんな反応を示すのだろうか。


「それとね、あのお爺さん店員」


「志澤さんね」と海人は訂正する。空は聞いていない。


「そう、その彼がね、私達のバンドを後押してくれるって言うの。具体的には公演場所とか、資金面で」


「は、はぁ。な、なんで?」海人は思わず訊ねた。前から思っていた事だが、彼は自分達に対して、やたらと入れ込んでくるような気がする。


「私にもわかんないわ。今度、彼について調べてみない?」


 気になるかならないかで、言ったら、気になる。が、しかし。


「いや、やめておきましょう。スポンサーになってくれる理由位は聞いた方が良さそうですけど」


「うん、そうね」


 それを聞いて、空はあっさりと引いた。てっきり、押し通されるかとも思ったのだが。


 海人は腕時計を見た。もう、学校が始まる。空にじゃあ、と踵を返そうとし呼び止められる。


「あ、待って。ほら、これ!」


 差し出されたのは五線譜の用紙だった。ただし、音符も記号も歌詞も何も書かれていない真っ新なもの。なんだ? という疑問と、まさか! という嫌な予感が同時に沸き起こる。


 空は、にやりと笑って言う。

「歌を1つ作ってくること。期限は1週間、延長は無し!」


 海人は反射的に用紙を押し返そうとした。が、空はひらりと後ろに跳んでそれを避ける。


「そ、そんな無理ですって!!」


「大丈夫大丈夫。なんなら、歌詞だけでもいいわよ。作ったら必ず歌ってあげるから! じゃーねー」


 手を振る空の後姿を見つつ、海人は途方に暮れながら、校門へと向かう。


 だが、それも一瞬の事。


――俺が作った歌を、空さんがね


 何を歌った曲にしようか。そう考えて、海人は空を見上げる。空の歌なら既に『青空に歌えば』という曲がある。だけど、あれは空が作った曲だ。ならば、自分は、自分が見た青空の歌を作ればいいのではないか。


 海人は振り返った。空は歩いて行く。


 そう、例えば、彼女との思い出を振り返った歌なんてどうだろう。それを空の景色に例えるのは。


「青空を振り返れば」


 それが、長倉海人が生まれて初めて創った歌の名前だった。


END

ここまで読んでいただきありがとうございました。この作品は元々、エブリスタで書いていたもので、多少の改稿を加えて上げています。今からしてみるとまだまだ未熟な作品で顔から火が出る程恥ずかしいですが、それでも、あの頃抱いた小説に対する熱意だとか、純粋な気持ちが少し思い出せたなと思います。


青春系はまた書いてみたいなと考えていますが、「青空に歌えば」はこれで完結となります。次回作はそう、自分の得意な分野も組み合わせて都市伝説系の話を書いてみたいなと。タイトルは「なんでもは知らないけど、生存フラグだけは知っている彼女」(尚予定は未定)ここ最近、分岐系のノベルホラーゲームばかり見ていたからその影響ですね、はい。



さて、改めましてここまで読んで頂きありがとうございます。途中「こんな過去の作品を引っ張ってきて上げて何の意味がある?」と自問し、途中で載せるのをやめたこともありましたが、ここ最近あまりにネガティブな気持ちがあまりに強かったので、それを払拭する意味でも、「完結した作品がちゃんとある」という自信を示す意味でも、こうして終わりまで載せることにしました。書き上げた達成感こそ、過去のものですが、これからも作品を上げ続けていこうという意思表示でもあります。


と、自分語りはこのへんにしておきまして…、ここまで本当にありがとうございます。未完結作品がごろごろとしていますが、もしもそちらも読んでいただいている方がいれば、長い目で見てやってください。ではでは、このへんで。

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