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第31話   死神と無くした物

 ノブトシが、私の能力値を言い当てた。

 記憶を失う前の私に聞いた?

 ……まさか。

 この私が、それを聞かれて、答えるはず無いわ。


『こっちです、カッツさん。この先に守備隊の詰所(つめしょ)があります』


 能力値を読み取る祝福(ギフト)を持っているの?

 ……違うみたいね。その能力〝鑑定〟は、ノブトシに与える事が可能な祝福(ギフト)のリストに残っている。

 やっぱり、慧眼鏡(けいがんきょう)を使ったとしか考えられない。

 ああ、祝福(ギフト)のリスト?

 そうよ。神が人間に祝福(ギフト)を与えられる状態になると、頭にそれが浮かぶの。


『見えてきましたよ! あと、村長の家もすぐ近くです』


 ……つまり、なぜか私は今、神として、ノブトシに祝福(ギフト)を与えられる状態になっている。脳裏に、3択を決めるためのリストが浮かんでいるから間違いな。っていうか、何で私がコイツに祝福(ギフト)を与えなくちゃならないの? この男が、私に何をしてくれたの?


『ラッキー! 村長さんとバドさん、が一緒に居た!』


 詰所の前で、村長とバドという男が何やら真剣な顔で話し込んでいる。いったい何事?


「あ、ノブトシさん。ちょっとよろしいですか?」


『どうしたんですか? 何か困った事でも?』


 まだ厄介事に首を突っ込むの? あなた正気?!


「聞いて下さいよ。今、村長と話していたのですが、村の防壁が、いつの間にか修復されているんです!」


 なーんだ! その話なら大丈夫よ。だって……。


『へぇ? 良かったじゃないですか』


「いえもちろん、ありがたい事なのですが、問題は、誰がどうやって、この短期間で全ての防壁の破損を修復したかという事なんです」


 ……それを直したのはノブトシよ。祝福(ギフト)を使って、しかも材料は自腹で。なぜ、この男はそれを言わないの? あなたの(おこな)いは賞賛(しょうさん)されるべき物でしょ? 


『まあ、良いじゃないですか! 防壁が直って、この村は安全になったんですよね』


「あ、はい。それはもちろん。防壁が有る以上、そう易々と魔物は村内には入れないでしょう」


『なら、これでひと安心ですね。えっと、それよりもバドさん、村長さん。大変なんです。こちらの、カッツ・ガリアフルさんは、東の村から……』


 神から、祝福(ギフト)を受け取れる程の働き……。

 おせっかいのコイツの事だから、私のためにも何かをしたのは間違いないわね。

 でも、その〝何か〟が分からなければ、せっかくの私からの祝福(ギフト)を消滅させてしまう事になりかねない。


『カッツさん。村長とバドさんが、守備隊の隊長さんに知らせに行ってくれました。バドさんも、東の村へ一緒に行ってくれるらしいですし、良かったですね!』


 ほら。バドさん〝も〟とか言い出したわ! やっぱりコイツ、最初っから、自分も〝東の村〟とやらの人達を助けに行くつもりだったのね。文句言ってやる!


 ……おい、ノブトシ? ……ノブトシ!!


『ん? 何だよ死神?』


 〝何だよ〟ではない。お前がついていく必要など無いだろう。どうしてわざわざ危険な所に行こうとするのだ?


『……?』


 あきれた! こいつ、自覚がない! 命をかけて、見ず知らずの人間を助けに行こうとしてるのに?! ……こほん。

 ……私はお前に死なれては困るのだ。なぜそこまでする? 死ぬのが怖くないのか?


『えっと……死神がついていてくれるから、僕は死なない。だよな?』


 にっこり微笑むノブトシ。途端に、私の胸がチリチリと痛む。何なの? この感じ……。

 ……ふん、お前がどれだけ勝手に死にかけようと、私はお前を必ず元の世界まで守り抜き、直々に殺すからな。


『ああ。よろしく頼むよ』


 少しだけ、寂しそうな笑顔に変わるノブトシ。それを見た私も、寂しい気持ちになる。何なのよ、これ……?!

 しばらくして、先程、東の村の件を知って慌てて詰所に駆け込んで行ったバドと村長が戻ってきた。


「隊長に報告して来ました。救助隊を編成して下さるそうです!」


『良かった! それでは早速行きましょう!』


「ノブトシさん、今日はもう日が暮れる。さすがに夜間に外を出歩くのは自殺行為だ。それに、カッツさんは随分と疲れている様子ですよ。お二人とも(はや)る気持ちは分かりますが日が昇るまで、詰所で休んで下さい」


『あ。すみません。そうですね……』


 なぜ、あなたが一番慌てているの? 異世界の、見たことも無い村の、会った事も無い人間達を、なぜ人一倍心配しているの?

 

『そういえば、僕もちょっと交易所に用があったんです。閉まる前に行ってきますね。カッツさん、先に詰め所で休んでいて下さい』


 消えた私の記憶。私が無くしたノブトシの記憶。いつか戻る時が来るのだろうか。

 ……っていうか、やっぱり行くのね、東の村。

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