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第22話   僕と木の実

 お賽銭(さいせん)で運気が上がるなら、そういう方向で、なんとかならないかな?


『ふむ。なにか思いついたのか、竹脇延年(たけわきのぶとし)


 ああ。とにかく、過去に僕が失った物で、色々と取り戻してみるよ。

 だから死神、悪いけど……


『これだな? 見ていてやるから、さっさとするがいい。早くしないと、神がここに居られなくなるぞ』


 死神は、慧眼鏡(けいがんきょう)を取り出した。神様、時間はまだ大丈夫ですか?


「うん。頑張って、ノブトシ」


 解りました! じゃあ、早速……

 えっと、あれは、小学校の頃だな。いつの間にか無くなってしまっていた、お守り!

 ……僕の手に、どこからともなく、ポトリと、赤いお守りが落ちてくる。どうだ! 運が上がりそうじゃないか?


『上がるには上がったが、残念ながら、MPだ』


 どうやら、MPが1上がったらしい。このお守りに、そんな効果があった事には驚いたが、僕が今必要なのは〝運〟だ。


「ノブトシ、キミの世界のアイテムは面白いね。この調子なら運が上がる物も、あるんじゃないかな?」


 はい! ちょっと希望が湧いてきました。えっと、他に何か……

 アレはどうかな……?


延年(のぶとし)、それは何だ?』


 金運を招く、蛇革(へびがわ)長財布(ながざいふ)だ。雑誌の一番最後のページに()ってたんだけど、買って数日で、財布ごと盗まれてしまったんだよな。


『どこまで本気で言っているのだ? お前は本当に面白い奴だ!』


 お腹を抱えて、クスクスと笑っている死神。どうやら相当ツボに入った様子だ。

 なんで笑うんだよ! 新発売の数量限定品だったし〝購入者の喜びの声〟の欄で〝宝くじが当たりました!〟っていう人も居たんだぞ!


『新発売の財布に、なぜ既に〝購入者〟が居るのだ? お前の脳ミソは容量限定品か?』


 ……あ!


『フフフ……見るがいい。案の定、お前の運に、マイナス1が付いたぞ。凄まじい効果だな、その金運財布(笑)は! フフフフ!』


 いつまで笑ってるんだよ! (笑)って言うなよ!

 ……はぁ。ショック過ぎる。


「ノブトシ、キミ達の夫婦漫才(めおとまんざい)は、とても面白いけど、急いだ方が良いよ?」


 ごめんなさい神様。次行きます!


『め……!? こほん。の……延年(のぶとし)。その財布は私が預ろう。さすがに運がマイナスのままは良くない』


 なに赤くなってるんだよ……そうか、夫婦(めおと)に反応したのか。

 あ、ちょっと待って死神。一応確認っと。おお! 中身も入ってる! やっぱ〝遺物〟は便利だな。この世界じゃ、日本円は使えないだろうけど。


『中身を見てどうするのだ? お前は、元の世界に戻った時点で私が殺すのだ。その財布は、お前の墓前に供えてやろう』


 やめてくれ。死んでまで、運が下がるようなアイテムに関わるのは嫌だ。

 ……しかし、この調子だと時間が無くなっちゃうぞ。よし! 思い付く物をどんどん取り戻してやる!

 記憶の端々から、なんとなく〝開運効果〟のありそうな物を、次々に取り戻していく。






 >>>






「……ノブトシ〝遺物〟は、キミのためにあるような祝福(ギフト)だね」


 山のように積まれたガラクタを見て、ちょっと驚いた顔で、神様が言う。

 褒められてるのかどうか、よくわかりませんけど、光栄です。

 ……さあどうだ、死神! これだけあれば、1つや2つは、効果があるだろう。


『残念だが、お前のステータスには、全く変化がない』


 マジか!? 

 例えば、この招き猫とか、大仏そっくりマスクとか、清水寺(きよみずでら)で買ったペナントとかも、効果なしなのか?!


『ない……いや、効果以前に、お前はそれらを、何処(どこ)で、どう無くしたのだ?』


 いつの間にか、フゥッと、無くなることってあるじゃんか?


『ない。それはどういう祝福(ギフト)だ?』


 祝福(ギフト)じゃねーし! オリジナル能力だし!

 ……いや、そのオリジナル能力はマズイな。


「ノブトシ、もう少しで、私は消えなくてはならない。他に何かない?」


 えっ! もう?! ごめんなさい神様、もうちょっとだけ待って!

 ……えっと〝いつでもどこでも! おみくじキーホルダー〟!


『変化はない』


 ……じゃあ〝学業成就! 合格(5角)えんぴつ〟!


『変化なし』


 ……あれはどうだ? 〝鯉のぼりの一番上で回ってるやつ〟!


『変わりない……しかし、お前のオリジナル能力はすごいな』


 (あき)れたのを通り越して、尊敬するような眼差しで僕を見る死神。

 本気で感心しないでくれ。確かに僕もいま、ちょっとだけ、そう思い始めてるけど。

 ……他に何か無いか? 運が上がりそうな物! 物!

 ええい! こうなったらヤケだ! 戻って来い! 梅干(うめぼし)


「ノブトシ、それは?」


 木の実を干して塩漬けにした物です。大好物なんですよ。

 ……本場、紀州南高梅(きしゅうなんこううめ)の高級品だ。昔、突然現れた親戚へのお土産として、僕の口に入ること無く、もらわれて行ってしまった。包を開けて、一粒、口に放り込む。

 やっぱり美味いなぁ。白ごはんが欲しいなぁ。


『おい。食べ物を出してどうする? お前は本当にバ……』


 そう言いかけて、慧眼鏡(けいがんきょう)を見つめたまま、黙ってしまった死神。

 ……どうしたんだ? ていうか〝バ〟って何だよ?!


『運が10も上がったぞ? 竹脇延年(たけわきのぶとし)、これはどういう事だ?!』


 マジで?! なんだかよく分からないけど良かった! 死神、急いで魔物の死骸を!

 ……いや、慌てないで! その財布は出さなくていいから!


「よし、それじゃ、負の感情をノブトシに渡すよ?」


 僕は神様から、青く光る感情の塊を受け取り〝賢帝〟に預けた。

 低くて心地よい声が響く。


『14の感情を受け取った。憎悪と殺意は力に。恐怖と苦痛は生命力に。絶望は希望に。全ての感情は、余す所なくお前の力となる』


 〝運〟上がれ! 1でもいいから上がってくれ!


『パンパカパーン! HPが3上がった! 攻撃力が2上がった! 守備力が3上がった! 敏捷性が3上がった! 運が3上がった!』


 やった! 3も上がったぞ!!

 ……でも、何でさっき、急に10も運が上がったんだ?


『その木の実の塩漬けに、特殊効果があるのだろうな。〝期間限定〟との表記だ〝運〟が必要な時に食べるがいい』


 ……なるほど。そういえば、梅干って、なんか縁起のいい食べ物って言われてた気もするな。

 梅は、冬に耐え、咲く、その木の生命力の強さ、実の健康効果などから、縁起のいい食べ物とされてきました。

 申年さるどしに採れた梅は、〝申梅さるうめ〟として、特に縁起が良いと言われています。

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