Ep.5
「…!…!」
体を大きく揺さぶられ、耳元で大きな声が響く。
「HEY!HEY!マシロちゃん朝だよー、おきなさーい」
左からはマニュが。
「キュー!キュー!(起きてくださーい!起きないと殺人毛玉の刑ですよー!)」
そして右からは大福君が。でも殺人毛玉の刑って大福君ハリネズミじゃないでしょ。
「うぅん…」
あれ、体が動かないな。どうしてだろう。
「あぁ、待って。まだ動かない方が良いよ。初めての魔力消費に加えて体内の魔力が枯渇してるから動くと全身筋肉痛みたいに痛いから。
ごめんね、私の説明不足でこんなことになっちゃって。でも良い経験にはなったかな?」
マニュの言う通り全身が疲労しているのか、体が動かない他、動こうとすると鈍い痛みが走る。
というか何故こんな状態なのに揺さぶったのだろうか…。一種の虐めか何かでしょうか。ましろはジト目でマニュを見つめる。
「あ、もしかして起こされたの根に持っているでしょ。その点に関してはごめんなさい。でも時間が無くてね」
時間が無い?どういうことだ。
「実はこの世界、私と同じカテゴリーの神様に風当たりが強くてね。討伐隊がすぐそこまで来てるんだ」
え?
「え?」
そんな事なら早く起こして欲しかった。それにマニュと同じ神様の風当たりが強いということはこの世界においてマニュ達は邪神認定されているということだ。スキルの『外神の加護』という名称からしてそうなんだろうなという気はしていたがまさか本当に邪神だったとは思いもよらなかった。今のマニュを見ても邪神のようには見えないからだ。
「ま、という訳でこれ呑んで」
「んぐっ!?」
マニュの髪の毛の一部が触手の様になり、何か丸いものを器用に持ったと思えば直接触手が口の中に侵入した。
「う…ん…ん…んぁ」
マニュの髪はどんどん奥へと進んでいく。
「えーっとこの辺に…と」
さらに髪の毛を押し込まれ、吐きそうになるがギリギリのところで髪の毛が抜かれた。
「ゲホッゲホッ。今の、何入れたんですか…」
見るとマニュは一応笑ってはいるが、今までの時間の中では一番真剣そうな顔をしている。
「ちょっとした試験薬でね、餞別にと思ったんだ。ステータスを見てみるといい」
よく分かんないがステータスを開く。
ロゼ ・ネージュ
Lv.1
HP 10
MP 198
器用度 13
敏捷度 8
筋力 4
生命力 5
知力 14
精神力 99
技能
・武器鍛冶Lv.1
・鑑定Lv.1
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・魔剣鍛冶Lv.2
・鑑定Lv.2
→金属鑑定Lv.1
・女神の祝福Lv.1
→スキル習熟率上昇、スキル習得率上昇、強運、身体異常軽減、自然治癒力上昇、呪い無効
・外神の加護Lv.1
→虚無創造Lv.1
スタータスが変わっていた。まず名前が変わっていた。精神力の表示も??から99に変わっているし、技能欄にはあるはずの無い技能に加え、持っている技能には線が引かれ、薄くなっている。
「あの、これ…」
ましろが疑問を問う。
「勝手にステータスを覗いたのだけれど、異常があってね。さっきの石で修正させてもらったんだ。主にレベルの表示、そして何より能力値の不鮮明なところ。それとお節介かもしれないけど名前の書き換えとスキルの隠匿をさせてもらったよ。マシロちゃんにはこの世界の通りに『幸福』に生きて欲しい。そのための予防策がこれ。」
マニュが指を鳴らすとロッジの様な家は消え、元の洞窟へと戻り、2人と1匹、そして鞄だけが残された。
「これに必要なものは一通り入っているから。この先をこのまま真っ直ぐ行けば道に出る。そこから更に行くと街が見えるはずだ。あとこれ、さっき作った魔剣と私からの手紙。道に出たら読むといい。」
ましろはマニュの指さした方角を覗く。少々薄暗いが洞窟の石が淡く光り、地面が見えている。
「さぁ走った方がいい。直ぐに奴らが来る」
「う、うん」
鞄の上にはコートの様なものが掛けられており、流石にシャツとパンツだけでは正直装備が乏しいため羽織る。そして魔剣の方は抜き身の剣では無く、鞘がついており更には腰に下げるようにベルトまで付いていたので左に魔剣が来るように腰に下げる。そこから最後に鞄を背負ったら完成である。
「うんうん似合う似合う、馬子にも衣装というやつだね。でも感傷に浸っている場合じゃないね急ごう」
ましろはそのまま誘導されるがままに足を運ぶ。
「ここから君は自由だ。そして自分だけの『幸福』を見つけるといい」
マニュは最後の最後まで笑顔だった。ましろはその笑顔に答えるべく、一言だけ。
「行ってきます」
それだけを言って走り出した。ましろの今の体力は殆ど無いに等しい。しかし、ましろは足を止めることなくマニュの居た洞窟から去っていった。
「よし、行ったね。まったく神様が愉しく遊んでいるというのに、常識がなってないね常識が」
耳を澄まさずとも聞こえる金属鎧の擦れる音は確実に迫っていた。
「10…20…50…大体100人くらいかな?豪勢なことで」
やれやれ、と溜め息を吐くそして100人規模の集団が出す金属が擦れる音と足音は消え、代わりに太い男の声が響く。
「総員!ナイアーラトテップを発見!討てえぇぇ!!」
「うおぉぉぉぉお!!」
兵士達の叫び声が怒涛の様に洞窟の中に響いた。しかし、
「混沌神…いや、マニュの名において虚無神の権能を使用する。虚無神第三の権能…」
『消失』
次の瞬間、静寂な闇へと消えた。
改めて思います。日刊の人って凄いですね。どうも睡蓮です。
さてさて今回は話が短くなってしまいました。申し訳ございません。話の都合上次数が短くなり、話数が増えるというのは避けたいのですがどうしてもこうなってしまいますね。1週間待たせているくせに短いとか頭逝ってますね前作の感想に散々書かれたのに学習しないなんて。小説を書くのにあたって必須である語彙力を全部ググる先生に任せているのがダメですね反省します。
誤字脱字や表現の間違い、改良点等ございましたら是非感想の方によろしくおねがいします。
あ、ちなみにましろちゃんが着たコートはソ○ィーのア○リエの○フィーが着ているコートをちょっと地味目にした感じです。