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戦争の妖精大陸‐天使の軍団、教皇統べる天界庁、神の使途達ルート

 

  

 天使の軍団が、大陸をかける。

 中央大陸の、帝都アーヘンにも、その影は着々と近づいていた。

 大天使ジャンヌ=アバロンを御旗に掲げて、

 天界の使途は、ラーゲルスフィスト要塞を僅か三日で攻略、

 後は帝都に続く街道に、点々とある諸都市を攻略、

 その後、帝国最大の大平原、ここでの正面決戦を終えて、

 帝都の堅牢な城下を抜ければ、千年続いた大帝国を滅ぼせるまで来た。


「既に、どうしようもあるまい。

 アストラルゲートを開ける、上級魔術師は、この大陸広しといえども数人程度だろうし。

 既に帝国の息の根は止めたも同然」


 天界庁の天界長というポジションに付いた、ローレルは呟く。

 そこに伝令が届く。


「長官、西の羊達の純潔、それが用いるミスリルモノリスの抵抗で、我が軍が甚大な被害を」


「下がれ、よい、折込済みだ」


 彼は無用な伝令を下がらせつつも、その事に思考する。

 西では、その事を織り込んで、後詰として、イデアゲートを使い降臨させた、邪神を遣わせてあるのだ。

 もちろん、その事は極秘の内に進めて、表立って広まらないよう、情報封鎖もした。

 それに中央の教皇国まで、その実体が広まるまでには、ずいぶんとタイムラグがあるだろう、噂の信憑性も薄れる。

 だが不安が無いわけでもない。

 西の各国は、この事態に大同盟を結んでいると、報告があった。

 特に、西の雌狐、ウルスラ=アメリア率いるアルハザード帝国、あの新進気鋭の造語大国は侮れない。

 大規模な海洋貿易を支配し、軍備も近代的な、たとえ化け物を向わせても侮れないほどの威力と聞く。

 現に、斥候として向わせた前線部隊は、数は少ないとはいえ強力な、要塞級天使が五体も含まれていたのに、

 それが次々と集中砲火で沈んで、後は単純な数の差で、散々に蹴散らされたらしい。

 だが、それも先のイデアゲートでの、強大な邪神の降臨で、無用の心配となった。 

 あのような、世にも恐ろしいモノが、どうやって人間など矮小な存在に負ける道理があろうか。

 彼は確信している、この世界は、既に己の手中に納まったも同然だと。


「失礼します、教皇」


 そこに一人の女性の声が響き渡った。

 その声は、どこか妙に透き通って、なにか、脳に直接響くようなモノだったが、教皇ローレルは特に気にしなかった。


「なんだ? ジャンヌ=マリア、急ぎの用か?」


 彼はここのところ、頭の中で鳴り響く鐘の音色に、頭を悩ましていた。

 これは聞くところによると、ゲートが開く場所に、何度も立ち会った後遺症らしいが、彼は気にしない。

 たとえ、その所為で己が化け物になろうが、それはそれで、己が戦力になるのだから、いいとすら計算している、

 既に後任も見繕っているので、なにも問題は無い、彼は己の信仰が大陸を遍くのを純粋に夢見ているのだ。

 しかし、その情熱も、彼女を前にすると、なぜか沈静する、この不可思議には、問えようもない不安がある。


「はい、東の秘境にて、教皇様の具合を回復させる、特効薬を手に入れて参りましたので、是非服用をと」


「そんな、無駄なことに、そなたは己を刈り出していたのか?」


 憤慨が胸の内を多いそうになる。

 彼女には、太政聖冠の位を与えてあるのだ。

 それは一重に、その美しく、整いすぎた容貌、

 神の静謐さと偉大さ、聖なる信仰を体現したような、その巨大な二対の純白の羽根の背負いに起因する。

 民衆はその姿見に熱狂し、どれだけの重税にも、徴兵にも、文句を言わなくなる。

 付け加えれば、教皇とその幹部だけが知る秘密として、彼女は単一の戦力としても強力な面がある。

 これは暗殺で儚く散ってもらっては困る、末永い象徴として君臨するのに、必須な要素であった、

 さらに蓋を開けるなら、帝国の精鋭の電撃戦時に、彼女の行った、恐ろしいまでの戦果、戦闘能力も十二分にある、

 彼はよもや、この眼前の天使が、先ほど思い出た邪神すら上回る、神の真なる使途とは知らないのだが。

 それで話は戻る、この眼前の彼女は、

 天界庁の大陸制覇の、さきがけとしては十分機能した、だが、まだまだ、やってもらわなければいけないことは、幾らでもある、 

 手を抜いては一切いけない、攻めきるときに攻めきり、守るべきときに守らなければ、最終防衛線すら抜かれる、彼は半生において知っているのだ。


「無駄ではありません、教皇様は、人にして神、我らの主なのです」


「ふん、我はただの神の尖兵だ、勘違いも、ほどほどにしておくと良い」


 会話しつつも、マリアは特効薬を持ち、熱い湯と共に、教皇に飲ませようとしてくる。


「勘違いではありません、少なくとも、わたしにとっては、教皇、貴方は神にも勝る威光をお持ちになっている」


「たわ言を」


 そう言われて、教皇は口ほど悪い思いはしていない。

 目の前の女性は、人をおよそ超えた、聖なるを体現する存在である、

 それに傅かれるのは、確かに、己が凄い存在、それこそ神になったかのような実感を与えてくれるのだ。


「さて、そろそろ行かねば」


「帝国との、決戦ですね。

 わたしも教皇様と参ります、その為に帳尻を合わせて来たのです」


「そうだな、窮したとは、帝国の物量は、人材の面でも、まだまだ無視できない。

 本来なら、そなたを西の後詰に加えたいことだが、今からでは西の決戦に間に合うか、微妙なところだ」


 ちなみに、眼前の女は、それすら計算し、帝国との決戦に同行する準備をしていた。

 それは教皇が万一にも戦端で戦死しないために、今回の帰還も、刻限を巧妙に編み出していた。


「よし、三倍する兵力を用意したとはいえ、アストラルゲートの存在の有無もある、

 なにより、帝国の剣聖、精鋭、魔法師団に、魔法騎士団、重装騎馬団も健在だ、

 もしもの事態も考えるべきだろう、よかろう、同行を許可する、帝国との決戦に備えよ」


「はい、おおせのままに」


 下がる天使に、教皇は一瞥だけやる、 

 退室後はまた、教会のステンドグラスを見つめ、まだ見ぬ神に祈りを、戦勝の運命を願うのだ、

 彼はすべての力は、神が与え、己の行使せよと、圧力と共にその命を感じる。

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