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第五幕〜あんた寝れないの?




『必ず君を探し出すよ』


 ロラン、それが今?


 頭の半分で期待して、頭の半分で諦めて。あたし、往生際の悪い諦め方をしていたけどさ。もう一度、あなたを信じていいの、ねぇ、ロラン。本当に、あなたなの?神様、感謝していい?

―――とでも思ったでしょうよ、最初ならね。待ってたあの頃ならね。……少し、ほんの少し神様に感謝しちゃったけどぉおお!神様!前言撤回ぃいい!……少しじゃないとかつっこまないでよね。ね!!

「違う」

 あの子は、よく似ているだけだったの。未遂なの、み、す、い!信じかけた未遂なの!あの子はね、よーっく似ているだ、け!なのよ。違ったのよ。他人の空似!

 あたしは、今宿舎で割り当てられた二人部屋の二段ベッドの上にいる。下からは、同室のグレンベルグのすうすうという寝息が聞こえてくる。今は、夜。晩御飯の後のあれから、そんなに時間はたっていない。


―――あのあと、いつの間にか騒ぎを見ていたグレンベルグ(びっくりよ、どこでみてたの)がセンコー(古い?文句ある?)たちを呼びにいって、トイランは未成年暴行未遂とか騒ぐセンコー達に引きずられていった。この暴行未遂を目撃したのはもちろんグレンベルグ(意外じゃないのよ、グレンベルグはやる子なのよ)で、そのことにセンコーはびっくりしてたけど(グレンベルグの見た目ばっか見てるからよ)。まぁ、それはそれでおもしろかったけどおいといて。

「…………」

 あの子は、食材を提供している近くの農家の子だった。名前は、アルフ・シーリー。………あの見た目、シーリーという姓を頭の中で思い浮かべてみたら、不思議と興奮はおさまっちゃったわよ。頭の半分ではショックを受けて、頭の半分ではああやっぱり?とやれやれな気分で。あきらかに、アルフはあたしの愛した(引きずってるけど、過去形!ここ重要!)ロランの子孫。……多分、直系。あたしを置いて、他の女とピーしてピーした結果。あたしの代わりにロランの横にたった女の子孫。そう考えつけば、すっごく夢からさめれちゃったわよ。……あ、子孫の空似?

「…………」

 あたしは、“今度こそ楽しみテルザ人生計画”を成功させて、今度こそ幸せになるのよ。あんな悲しい恋愛して、後世の人たちに“死に損”扱いされないためにも!ずるずる引きずってるけどね?でも、幸せになる。幸せになるのよ!せいぜい足掻いてやりますとも!ふんっ!




「…………」

 あたしは何度目かわからない(何十回かしらね?)寝返りをうってまたもやベッド脇の壁とこんにちはをした。いや、こんばんはか?………どうでもいいけどね。とにかく、寝れない。もういっぺん(言葉古い?文句ある?)ぐるんと寝返りをうって、あたしは“それ”を見て絶叫しかけた………絶叫したかったんだけど、あまりにも驚いて声も出なかったわよ。

「…………起きてたの?」

―――それはあたしの台詞よ、グレンベルグ。

 髪を顔の前に垂らしたグレンベルグが、ベッドの手すりからぬっと顔半分だけ出していた………怖いわよ、あんた!!何してんのぉおおお!

「…………」

「…………ねぇ」

 驚愕のあまり言葉が出ないあたしに、グレンベルグは髪を垂らしたまま首をかしげた。顔がほぼ見えない状態で普段の可愛らしい仕種をしても、それはホラーにしか見えないわよ……。

「あたしも寝れないの」

と、さらに首をかしげて発言するグレンベルグ。ねぇ、グレンベルグ?髪がさらに顔に垂れて、その間からちら見するあんたの琥珀の瞳が光って見えて怖いんだけど!

「だから、お話しない?」

―――怖くて、頷くしかできなかったわよ。昼間だったら可愛らしいかもだけど、夜は……夜中はホラーでしかないわ!




―――で。二人して、床に並んで座り込んでるんだけど。膝かかえて、何も話すことなくて、沈黙が続いてて。空気が痛いわよ、グレンベルグ。何をお話するのよ?……あたしからも話すこと、ないんだから困ってんだけどさ。

「……あのね」

 おお、ようやくお話?

「……」

 また沈黙なの?!

「……わたしね」

 で?

「……」

―――何が言いたいのよ………?

「フランさんにトイラン君のこと、お話したでしょ?フランさん、一人で課題頑張ってたし、役に立てるかなって、あのお話したの。フランさん、ここへ来る道中に、悲恋碑のおふたりを課題にするって言ってたから」

 あー………、そういや。ここへ来る馬車の中で話したような。ロランとエリザ(繰り返すけどあたしよ)の石碑があるって知ったから、あたしそれ調べたいのとかいったような。

「でも………トイラン君、少し……自分が中心?な性格だった、あとから気づいて、わたし追いかけたの…立ち聞きしてごめんね?トイラン君の性格が災いして、あんなことに………なっちゃうし………」

と、だんだん語尾が元気なくなっていくグレンベルグは自分で自分を責めていた。ああ、もう!

「大丈夫」

 あたしは、うつむきながらえぐえぐ泣き出したグレンベルグの頭を撫でた。悪いのはトイランだからね!あなたは悪くないからね!トイラン、反省しなかったら今度こそ殴るからね!

「う、ごめんね」

「大丈夫よ」

―――トイラン、次会ったら蹴り飛ばす。素直な子泣かしてんじゃないわよ。

 怖さも、なんだかもやもやしてた気持ちも吹っ切れてきて、あたしは眠気を感じ始めた。隣のグレンベルグは少し元気になったようで、ようやくこちらを見ながらはきはきとしゃべった。

「ね、……明日ね、石碑のおふたりを調べに記念館にいこう?」

―――おい、いまなんていいましたグレンベルグさん。

「きね、んかん………?」

 ……祈念缶?何を祈念しちゃってるのその缶詰め?

「悲恋記念館だって。残っちゃったロランさんが、二人の想い出の地を記念に残したの、浮かばれないだろうエリザさんの供養に」

―――ロラン。あんた何しやがってんのぉおお!!あたし浮かばれるもないもこうして第2の人生エンジョイ(何よ古い?)しようとしてんだけど!!供養になってないわよっっ!!


ロランではありませんでした。期待した人いらっしゃったらすみません!


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