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第二十二幕〜気まずいんだけどぉお!!



 あれからあたしは、見合いをすることになった。

 まず、見合いに当たってこちらが知っていることがふたつ。

 まずひとつ―――相手は王族、いずれ臣民に下るらしい。けれどそれだけ。詳しい話も、高貴な方だからというだけで話がきちんと決まるまで伏せたいらしいとか――何よそれ!? 話を代理人から受けたとき、父さんは断る気満々だったけど、そうは問屋が卸さなかった。先方が王族と知った途端、父さんは断れなくなった。最初、代理人は王族と伏せていたらしかったし。ますます怪しい。

 ふたつめ、代理人が何故か意外すぎるあの人だということ。だからひとつめの怪しさも……まぁ、少しは払拭できるけど。





 でも、あたしにはいくつか気がかりがある。それはテッサがいってた“お兄様経由の殿下からの合いたい打診”。その殿下からの――何人めの王子さまから知らないけど――打診。もうひとつ、それはあの日出会った“殿下”――ロランのこと。

 あたしに会いたい“いつか臣民に下る”王族。あたしに――グレンベルグの妹の褐色の髪の友人に会いたい殿下。殿下であるロラン。もしかしたら、あたしに会いたい殿下はロランかもしれない……とか思ってるわけ。今度こそ会えたロラン。

 ならあたしはどうするべき?

 あたしはまだ迷ってる。この迷いは迷い悩むほどぐんぐん深い穴にはまっていくようなもの。もがいてももがいても地上にもどれないような……きっと、ロランに会わないとあたしの気持ちは決められない。

 けれども、もう今は逆らえない。王族に会うことがきまったからなのよ。父さんとすったもんだした後、すぐにとんとん拍子に会うことになってしまったわけ。あたしたち一般の民は雲の上の人に逆らえない。だから、テッサへの返事も一週間保留のまま。学院にいってもすぐ下校時になったら――見合いとやらの打ち合わせで――とんぼ返りだし、そもそも代理人が学院内の人で、学院内で打ち合わせしたりするから、テッサになかなか会えない。






 ―――でついにやってきた見合いの日。



「………」

「…………」


 すっごく、気まずい。すっごく、気まずいんだけどお!!

 今あたしは高級な庭園に来てマス。この“由緒ある、先が幾つもつく先代の王妃様がお作りになった”庭園だ。入場料は維持費に使われるらしいけど、かなりの額だった(何日毎食外食できるのかしらねぇ)。

 そんな庭園に、慣れないドレス(レンタル。高いのは買えないのよ、もったいなくて!!)と靴・アクセサリー(こちらもレンタル以下略)に身を包み、騎士の正装の父さんとふたり、代理人と睨み合い――否、にらめっこ。断じて睨み合いじゃないと思いたい。代理人のゲイルズ教諭(何故?)と父さんのにらめっこ。しかし火花が散るにらめっこ。


(何でゲイルズ教諭が代理人?)


 ゲイリー・ゲイルズ教諭は本職は神殿の裁判の弁護士長で、忙しい合間を塗って学院に法律学を講義している。そして無駄にある色気――無駄色気な教諭。父さんと先ほどからずっと睨み合……じゃなくにらめっこをしている。


(何、知り合い……だったりするの?!)


 何だか、しぶしぶ(嫌な乗り気じゃない)見合いの席に臨んだわりには、それ以上の何かを感じるんだけど………? 父さんの横にいるだけでひしひしと伝わってくるわよ!? 何がって? 敵愾心とかライバル心とかいうやつよ。


「………」

「………」


 ゲイルズ教諭もにたりと余裕の笑みだけど……背後から何かが出てるわよ?! にじみ出てるわよぉお!!!


「……………」

「……………」


 飛び散る火花、敵愾心剥き出しの怖い顔の父、怖い笑みのゲイルズ教諭。見合いの話受けたくない理由、これもあるんじゃないの……?

 っ、ほんっと気まずい!! 嫌な汗かいてきた! レンタルなのにどうしたらいいのよ!! それにいつまで続くのよこれぇ!?





 緊張してるあたしは気付かなかった。

 後ろから―――例の相手が近付いてきたのを。冷静になれば気づけた足音。

 ザシ、と整地された地面を歩く音。その音が近付いてきた音が。



「待たせたな」




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