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第十二幕〜なんでよ?

名前だけトイランが出ます。




『エリザぁあああっっ!!!』


 あれは夢?

 それとも―――…………


「…………姉ちゃん」

 あたしは、今王都にある一般向けの中規模の病院の個室に入院してるんだけど。

 研修の最終日前日に、半日かけて医療用馬車で運ばれたらしいあたしは、意識不明までいったらしく、こんこんとあれから3日間寝込んでいたらしいのよ。……お医者いわく、心労がたたっての疲れじゃないのかっていわれたけどね。違うと思うわよ。たかが疲れでこうなると思う?

「…………姉ちゃん?」

 あの夢、やけに現実的だった。あたしの望みがあんな夢を見せたと思ってた。いまだにくっきりはっきり思い出せるわよ。きらきらな赤毛に、深い青の瞳のロラン。今生は貴族のような出で立ちだったわね。無駄にきらきらしい見目だったもの。

「…………姉ちゃん、」

 憂いと、信じられないという感情に満ち満ちていたあの瞳がこっちを見てたのが忘れられない。

 もし、もしよ?…………あれが夢でないのなら。

「無視するなよ姉ちゃん!」

 ……せっかく人が物思いに耽ってるってぇいうのに、さっきからやかましいわ、バカ弟ぉぉおっっ!!

「あんた、あたしの見舞いじゃなくて看護のレイチェル・セリーズさんが目当てのくせして、しつこいわよ!」

 今、病室の寝台脇の椅子に腰かけてるひとつ下の弟、オーリー。オーリーがあたしの見舞いに来てるのは、別にこいつが真面目な姉思いの弟だからってことはないわよ?

「な、なななっ」

 ほぉーら、顔を真っ赤にしてどもってんじゃないのよ。

 オーリーは、あたしの個室を担当してる看護師のレイチェル・セリーズさんが目当てなわけ。そりゃあもう、出るとこでてひっこむとこはひっこんだ体型の、栗色のストレートの綺麗な女性だものね。オーリーは面食いだから、すぐに綺麗な人に熱をあげるのよ。

「今朝はあんた、あたしの友人に熱あげてたくせに?」

 何を隠そう、今朝には見舞いに来てくれたグレンベルグを見て鼻の下伸ばしてたのよ、どこまで面食いなわけ?

「…………っ」

 あぁーあ、顔真っ赤にして口パクパクしちゃって。これでも騎士見習いってんだからねー、将来大丈夫かしらねぇ?

―――今のあたしには、弟が一人いる。長女で長子なのは変わりないけれど、エリザん時はひとりっ子だったから、すごく新鮮。今もこうしてからかってはいるけど、すごく大切にしてるのよ、これでもね。

「で、ホントのとこ何しに来たの」

 一応、根は真面目なのよ。どうしようもない女好きだけどね。本来の目的より、目の前の美人につられちゃうけどね。

「…………っと」

 あら、まだ顔が赤いわよ。

「………………ゲイルズ先生が」

 ようやく話だしたわね、モゴモゴしてるけど。先を促してみれば、オーリーはつっかえつっかえ話しだした。

「……トイランて奴が、……裁判で姉ちゃんを……、訴えるっていってた件」

 ……トイラン、あぁ、あのバカ。侮辱したのはあちらなんだけどね。

「あれ、腹立つ。姉ちゃん侮辱しやがって」

 ……姉を思って愚痴るのは嬉しいんだけど、話の腰を折らないでよ。

「いでででっ、耳いただだだだっ」

「―――愚痴るのは嬉しいけど、あとでね、で?」

「…………姉ちゃんのバカちか……あだだだだだっ」

「あーら失礼なこといってるのはどのお口ー?」

と、まぁあたしがオーリーに制裁という名の攻撃をしているときだった。

―――病室の戸が、ノックされたのは。





「…………?」

 病室に入ってきたのは、花束を持って、放課後に顔を出してくれたグレンベルグ。学院から直接こちらへ来てくれたみたいで、制服のまま。この病院、学院とグレンベルグの家の間にあるのよ。

「………………?」

 顔に疑問符を浮かべたグレンベルグ、先程からじいっとオーリーを見つめてるのよ。どうやら、あたしが引っ張って腫れ気味のお顔が気になるみたいよ?

 肝心の見られてるオーリーはもう真っ赤。ゆでダコみたいよ。あらあら、固まっちゃって。

「まぁまぁ、グレンベルグさん。弟もじっと見つめられると照れて顔から火が噴き出しそうだから、それぐらいで勘弁してあげて?」

といえば、グレンベルグまで真っ赤に…………て、見てるこっちが赤くなることやめてくれる?



「あの、おめでとう」

 しばらくして、ようやく落ち着いたグレンベルグが口を開いた。オーリーはまだ赤みが残ってるけど。…………というか、何がおめでとう?

「何が………かしら」

「あ、えっと………まだ聞いてない、かな……あれ?」

 あれれ……と少し混乱しながらも、首をかしげつつグレンベルグが続けた言葉にあたしは絶句した。

「……トイランくんがね、訴えを退けたの。しんかんちょうというお偉いさん?、がなだめて説得してくれて、悔いてくれたのだって」

 グレンベルグの隣で、オーリーも驚きのあまり目を真ん丸にしてる。

 ……だって、ねぇ?

「神官長って、神殿のトップよね?」

 なんで、そんなお偉方が一介の一般民の裁判に介入するのよ?!

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