「愛するつもりはない」と言われたので、気が合うことを確信した
「先に言っておくが、お前を愛するつもりはない」
元婚約者であり、本日夫になったハインの言葉に、オリビアは耳を疑った。
「あの……すみませんが、もう二回ほど言って頂けますか?」
「せめて二度目で聞く努力をしろ」
「申し訳ありません。ですが、あまりに予想外だったもので……」
二人は共に伯爵家の出身であり、これ以上ないほどの政略結婚である。
ハインのアーリス家は王家との繋がりが強いが、事業などはさほど力を入れておらず、正直に言えばあまり財産がない。一方のオリビアのランディル家は、昔から商業に強く裕福である。しかし、貴族の世界での世渡りはあまり上手くなく、伯爵家であるにも拘らず、子爵家程度に軽んじられている。
つまりは、この結婚はお互いに喉から手が出るほど欲しいものを持っている両家を、結びつけるための道具でしかなかった。
「この婚姻は、お互いの家のためのものでしかない。だから、私はお前を愛するつもりはない」
「それは、白い結婚とかそういう……?」
「いや、子をなすことも義務の一つだ。だからそんなことはしないが、私の感情として、お前を愛するつもりはない、ということだ」
オリビアは心から驚いた。と言っても、ハインの身勝手さにではない。
「そうなのですね。それを聞いて――」
一度言葉を切ると、オリビアはハインににっこりと微笑みかけた。
「安心しました」
「は?」
「実は、わたくしもまったく同じ気持ちだったのです。これは家のための結婚……であれば、拒否することなど、できるはずもありません。だから結婚そのものは拒否しませんし、子供を産むことも受け入れます。しかし、貴方を愛するつもりは、まったくありませんでした」
その言葉に、今度はハインが驚いた。
正直に言えば、怒られることも、泣かれることも、平手打ちの一発や二発も覚悟はしていた。ところが、オリビアはそのどれでもなく、笑顔で受け入れ、それどころか彼女も自分を愛するつもりはないと言い切ったのだ。
「……そ、そうか。なら、手間が無くていいな」
ひとまず、何とかそう言った。すると、オリビアは少しだけ首を傾げ、何かを考えているようだった。
「それにしても、お互いに愛するつもりがないだなんて……」
「……」
「わたくし達、実はとっても気が合うのかもしれませんね?」
直後、ハインは素早く後ろを向いた。続けて、オリビアの耳に「ングフッ!」とハインが噴き出す音が聞こえる。
ややあって、若干口の端を引きつらせたハインはオリビアの方へ向き直り、それでもどうにか表情を整えた。
「そ、そうだな。では、まあ、その、よ、よろしく頼む」
「ええ、こちらこそ」
ハインとしては、思いもよらぬ反応をしたオリビアに、若干の興味を抱きつつ。
オリビアとしては、わざわざ言わでものことを、それでも正直に伝えたり、『二回言ってほしい』というリクエストにきっちり応えてくれる彼の誠実さにホッとしつつ。
二人の結婚生活は、こうして幕を開けた。
―――――
無理に愛する必要がない、というのは、二人にとって実に快適だった。
どちらの友人の中にも『相手からの愛が得られない』と言って悩む者が、少なからずいた。だが、二人は愛する気もなく、また愛されようと努力する必要もない。結婚生活において、なかなかに大きな問題となるはずのものを完全に無視できるというのは、大変に気楽だった。
「あなた、お庭にバラを植えてもいいかしら?」
「ああ、構わない。どこに植えるつもりだ?」
「あちらの、東屋の周りを囲うようにしようかと」
「ふむ……良さそうだな。では、あとで手配しておく」
「茶会を開くのか?」
「ええ、そうしたいのだけど……誰をどのように呼ぶか、迷ってしまって……」
「ふむ……この席次ならグリンデル侯爵家と、アギラス侯爵家は間に誰か挟んだ方がいい。マドラス伯爵家辺りがお勧めだ。フィンデル子爵家は爵位が低いながらも、どことでも話せるから呼んでおくといい。ただ、その場合はリットリス子爵家も呼ばないと、色々面倒臭くなる」
「まあ……お詳しいのね」
「これでも、王家と繋がるアーリス家の人間だ。家関係の話ならいくらでも持ってこい」
愛するつもりがないとはいえ、別に相手をないがしろにする気もない。進んで相手に何かしようとは思わなくとも、相手がやりたいことを邪魔する理由もない。
いわば、二人はいい友人同士であった。
いわゆる夫婦とは違うのかもしれない。しかし、ただの友人とも違う。二人の生活は、衝突などほとんど起きず、周囲から見る限りでは、大変平和に過ぎて行った。
―――――
ある日、オリビアは流行り病にかかり、寝込んでしまった。幸い、命に関わるようなものではないのだが、全身の痛みと怠さは筆舌に尽くしがたく、食事も満足に取れない状態であり、ただただ寝ているしかなかった。
ハインは感染防止のため部屋に来ることはなく、使用人の接触も最小限だった。普段は意識せずとも、こうなってしまうと、一人であることを嫌でも意識してしまう。
もし、誰かと恋愛でもして結婚したのなら、傍らには夫がいたのだろうか。
そんなことを、とりとめもなく考える。自分にも、そんな人がいればと考えるが、それも意味のないことだった。やがて、頭に靄がかかるように意識を失い、また眠りへと落ちていく。
一体どれくらいの時間眠っていたのだろうか。
何か、悲しい、寂しい夢を見た気がする。どんな夢かは思い出せないが、そう感じたことだけは覚えている。
体を動かそうとして、ふと違和感を覚える。
―――誰か、手を握ってる?
オリビアが目を開けるより一瞬早く、すぐ近くから声が聞こえた。
「すまない、起こしてしまったか?」
それは、夫であるハインの声だった。
「あな、た……?」
「うなされていたようだったのでな。ああ、面と向かって話をすると感染してしまうそうでな、すまんが目が合わないのは許してくれ」
何とか目を開けてみると、ハインは椅子に座ってこちらに背を向け、しかし布団の中の手はしっかり握りつつ、顔を合わせずに話していた。
「へんな……人」
「何がだ?」
思わずそう笑うと、ハインは不思議そうに聞き返してきた。
「だって……愛する、つもりは……ないんでしょう……?」
「愛するつもりはなくとも、病にかかった家族を心配しない者などいない」
あっさり言いきられ、オリビアは驚きに目を見開いた。
「心配……して、くださるの……?」
「当たり前だ。お前は私を血も涙もない悪党とでも思っているのか?」
呆れたように、そして若干ムッとしたように、ハインは続ける。
「友人でも、家族でも、だ。愛するつもりがない相手は、心配してはいけないなどという決まりはないだろう」
布団の中でオリビアの手を握る力が、少しだけ強まった。
「とにかく、今は休め。そして、早く治すことだ」
ややあって、ハインはオリビアの手を放し、代わりに彼女が掛けている毛布をポンポンと叩いた。
「……一人の食卓は、少し、味気ないのでな」
冗談めかして言うハインに、オリビアは可笑しくなった。そして、痛みと怠さを忘れた瞬間、休みを欲していた体は瞬時に眠りに落ちてしまった。
規則正しい寝息が聞こえ始めたのを確認すると、ハインはそっと部屋を出るのだった。
なお、ハインも翌日にしっかり感染した。病床の中、ハインはずっと『あの藪医者め……』と恨みがましい声を上げていた。
―――――
ある年のある日。二人は海のすぐ近くにあるフォルン公爵家に招かれていた。
公爵家は昨年、港を大々的に改修、改装した。下手をすれば、公爵家が傾きかねないほどの巨額の金が動いたが、結果は大成功。港には数多くの船が行き交い、これ以上ないほどに活気づいている。
これならば、数年で元は取れると胸を撫で下ろし、ならばということで、世話になった家のものを招いて祝賀会を行っているのだ。
アーリス家は金銭的な支援こそ少なかったものの、繋がりを持ったランディル家を通じて様々な物資を調達していた。結果として、ただ金を出すよりもよほど助けになっており、祝賀会が終わった後個人的にお礼を言いたいと、さらに数日残ることになっていたのだ。
そして現在、二人の前には公爵夫妻と、多種多様な海の幸を使った料理が並んでいた。
「さあ、どうぞ召し上がってくださいな。今日の朝に獲れた、新鮮なお魚なんですよ」
「そうですか。これは……実に、うまそうですな」
いつもの社交的な笑みを浮かべて言うハインだったが、オリビアは気づいていた。
本当に、極めてわずかではあったが、ハインの口元が引きつっていた。そして、その目は全く嬉しそうではなかった。
ハインがいつもより優雅さ四割増しで魚料理にナイフを入れる中、オリビアは少し急いでナイフを入れ、はしたなくならないギリギリの速度でそれを口に入れた。
「――まあ!本当に、とっても美味しいですわ!ソースもよく合ってらっしゃいますが、お魚自体が、本当にとっても……!」
淑女としてギリギリのラインを保ちつつ、オリビアは誉め言葉もそこそこに、もりもりと魚を食べ尽くしていく。あまりの勢いに、ハインとフォルン公爵の手が止まってしまっていたが、むしろ好都合だった。
貴族としては怒涛の勢いで魚を食べ尽くすと、オリビアはハッと口元に手を当てた。
「――あっ、すみませんわたくしったら!こんなはしたない真似を……」
そこでハインに視線を向けると、ハインも気付いたようだった。
「ふ、ふむ。君がそこまで魚好きだとは知らなかったな。その、よかったら私の分も――」
言いかけたハインの言葉を遮るように、フォルン公爵夫人が嬉しそうな声を上げた。
「まあまあまあ!そんなに気に入っていただけて嬉しいわ!大丈夫よ、今日はいっぱい獲れたからお代わりもあるの!さ、お客様にお出しして差し上げて!」
とっても嬉しそうな公爵夫人の言葉とともに、オリビアはもちろん、ハインの皿にまで魚が追加された。
「これはこれは……本当に、ありがとうございます」
まるで宗教画のような達観した笑みを湛えるハインに、引きつった笑顔を浮かべるオリビア。そんな二人を、嬉しそうに見守る公爵夫妻。
こうして善意の監視を受けつつ、二人はそれぞれの料理をしっかりと食べるのだった。
「私が海の幸を苦手だと、どうしてわかった?」
帰りの馬車の中、半死半生のハインが尋ねた。
「口では『うまそう』なんて言いながら、口元が引きつっていましたから」
「……隠し通したつもりだったが、出ていたか?」
青い顔で尋ねるハインに、オリビアは笑った。
「いえ、本当に一瞬だけでしたから。それに、ずっと一緒にいるんですから、目が嬉しそうじゃないのもわかりました」
「……今後の参考にしよう」
まだ吐き気と戦っているのか、ハインは大きく息をついた。口を開いたら言葉以外の物が溢れるかもと思い、オリビアも口を閉ざす。
しばらく経ってから、ハインがポツリと呟いた。
「……感謝する」
「え?あ、でも、結局失敗して、むしろ多く食べさせてしまって……」
「気遣いが、嬉しかった」
息も絶え絶えではあったが、その言葉は本心のようで、弱々しいながらも顔には笑みが浮かんでいた。
「……家族でも、友人でも、困ったことがあれば、手を差し伸べるのが普通でしょう?」
オリビアは、いつかハインに言われた言葉を返す。それに気づいたハインは、黙って微笑むのだった。
それから30分後、馬車の揺れに耐えきれず、ハインは盛大に吐き散らかした。小川に向かって嘔吐するハインを見つつ、オリビアは『海の魚が川魚の餌になったな』などと、どうでもいいことを考えるのだった。
―――――
貴族は世継ぎを作ることも義務である。
これまで、二人とも何とはなしに、そういったことは避けていた。そもそも愛するつもりもない相手だったので、積極的に作ろうとすら思っていなかった。
おまけに、お互い気を使う必要がなく、しかし家族としては認識していたため、二人だけの空間は居心地がよかった。なので、まだしばらくは子供を作る必要もないか、ぐらいに考えていた。
が、隠居した親から『孫はまだか』とせっつかれるようになり、いよいよそれが無視できなくなってきた。
そんなわけで、現在二人は同じベッドの上で、お互いを見つめつつ、妙な居心地の悪さを感じていた。
何を喋っていいかもわからず、思春期の男女のようにどぎまぎしつつ、そんな中でハインがようやく口を開いた。
「……随分と遅い初夜になったな」
途端に、オリビアは「ぶっふ!」と淑女にあるまじき音を立てて噴き出した。
「ん、ごほん。そ、そうね。まあ、その……愛するつもりは、なかったものね?」
「まあ、な。子を為さないつもりもなかったが……」
正直に言えば、二人とも子供ができることによって、今の関係が変わってしまうのではないかと恐れていた。
愛するつもりはない。愛しているつもりもない。だが、とにかく隣が居心地良い相手だった。その居心地の良さがなくなるのは、二人とも怖かった。
とはいえ、もうそうも言っていられない。しかし、仕方ないから、というのも癪だった。
少し考えると、オリビアはハインを見つめ、悪戯っぽく微笑んだ。
「でも、いいの?体を重ねることは『愛し合う』なんて表現するけれど?愛するつもりは無いのに、変じゃない?」
「いや、それは……それこそ『体を重ねる』という表現もするしな」
「獣などで言えば、交――」
「やめろ」
もう少しからかってみようかと思っていたところで、ハインは突然オリビアの腕を掴み、ベッドに組み敷いた。
「あ……えっ……?」
「それとも……そういう、獣じみた行為をお望みか?」
オリビアの胸が、早鐘のように打ち始める。それが恐怖なのか、焦りなのか、期待なのか、彼女にはわからなかった。
「……す、少しは手加減をお願いします……」
「善処する」
とても良い夜だった。
―――――
それから一年。二人は生まれたばかりの息子を、蕩けるような笑顔で見つめていた。
「ほら、指を握ったぞ!」
「あ、ニコッて!今笑ったわ!」
初の子供は、猛烈に可愛かった。
「あなたに似た、キリっとした顔立ちになるかもしれないわ」
「いや、お前に似た優しい顔立ちになるんじゃないか」
そんなことを言い合いつつも、二人は飽きることなく息子を構い倒していた。
「それにしても……」
「ん、どうした?」
オリビアは息子を見つめ、次にハインを見つめ、悪戯っぽく笑った。
「あなたは、私を愛するつもりは無いし、私も、あなたを愛するつもりはないわ。でも、この子のことは、どう思っています?」
ハインは息子を見つめ、オリビアを見つめ、力強く断言した。
「全力で愛するに決まっているだろう!?」
「そうよね!?こんなに可愛いんですもの!ああ、この子が大きくなって、お話するのが楽しみだわ!」
「そうだな!色んなことを教えてやらねば!」
全力で同意し合い、全力で子供を愛すると誓う。
お互いを愛するつもりのない二人は、大変な親馬鹿となっていた。
―――――
貴族達の間では、彼等は大変に有名だった。
ある者は馬鹿だと言い、ある者は羨ましいと言い、ある者は希望だと言う。
「あ、あの、オリビア様!わたくし、あの、リーデルス子爵家が娘、リースと申します!その、えっと、不躾ですが、握手をしていただけませんか!?」
「あら、あなたも?いいですけれど……なぜわたくしと……?」
怪訝そうな顔で、オリビアが年若い娘と握手をする傍らでは、ハインが似たような顔をしていた。
「君もか……なぜ私に、握手を求める者がこんなに多いんだ……」
アーリス伯爵家のおしどり夫婦、という呼び名は、当の本人達以外では深く浸透していた。
政略結婚でありながら、お互いを深く愛し合っている。そして、お互いを尊重し合い、穏やかに笑い合う理想の夫婦像。それが、貴族界での彼等の評価だった。
「ハイン伯爵。あなたにぜひ、夫婦円満の秘訣を教えてもらいたく……私も政略による結婚を控えているのですが、正直、不安でして……」
恥ずかしげに、しかし深刻そうな顔をして尋ねてくる若者に、ハインは怪訝そうな顔をしながらも答える。
「そうだな……無理に愛そうとしないし、相手に愛されようとしないこと、じゃないか」
「えっ!?あ、愛されようとしない……!?」
「無理をすれば、どこかでボロが出る。それに、自分が相手を愛したとして、相手が同じだけ自分を愛する保証はない。だから、相手が自分を愛さないのは当然、くらいに思っておけばいい」
いわゆる仲良し夫婦なのかと思いきや、思った以上にドライな言葉に面食らったものは多い。しかし、それこそが秘訣なのだろうと、彼等は愚直にその言葉を守った。
また、愛されようとしない、という部分はそれぞれに解釈が分かれ、自然体でいるのが良いと考えた者や、相手に愛を強要しないと捉えた者もおり、それはこれから結婚する者ばかりではなく、既に結婚している者の胸にも響いた。
そして彼等は、おしどり夫婦の言葉を胸に、それぞれにそっと襟を正すのだった。
まさか、本当に言葉通り、相手を愛するつもりがなかったし、相手も愛するつもりがなかったが故にうまくいっていたのだが、当然そんなことが伝わるわけもなく、また伝えるようなことでもなかったため、二人はいつまでも理想であり奇跡であり続けるのだった。
―――――
二人はずっと一緒だった。
愛のない結婚をし、家族となり、家を育てた。子供を産み、子供を育て、家を継がせた。
やがて孫ができ、いつしか子供が当時の自分達の年齢を超えていることに気づき、時の流れの早さに思いを馳せる。
アーリス家も、ランディル家も、何も心配する必要がない程には安泰だった。きっとこの先も、子孫達はうまくやっていくだろう。
「オリビア」
「どうしました、あなた?」
バラに囲まれた東屋に座り、二人は静かに語り合っていた。
「お前は、結婚を後悔していないか?」
ハインの言葉に少しだけ考え、オリビアは微笑みながら答えた。
「少しだけ、しています」
「ほう。どんなことをだ?」
ハインは驚いた様子もなく、オリビアに続きを促す。
「大切なものが、いっぱいできてしまって……未練がたくさん、できてしまいました」
オリビアの言葉に、ハインは静かに笑った。
「やっぱりな」
ハインはそっと、オリビアの手に自分の手を重ねた。
「私も、同じだ」
しばらくの間、二人はただ重ねた手の温もりを感じていた。
「死が二人を分かつまで……あの時は、ずっと遠いことのように思えましたけど、今ではもう、すぐそこですね」
「ふん。死が二人を分かつとも、ずっと一緒だ」
ハインが言うと、オリビアは悪戯っぽく笑った。
「ということは、あなたは私が先に死んだら、その遺体を抱いて生活する、ということ?」
「お前は真面目な話をすると、本当にすぐ茶々を入れるな!少しは格好をつけさせろ!」
二人はまるで、少年と少女のように笑い合った。何年もずっと変わらない、お互いの前でだけできる表情だった。
笑いがおさまると、オリビアとハインはお互いの顔を見つめ合った。
「愛するつもりは無かったんだがな」
「私も、愛するつもりなんてこれっぽっちもありませんでしたわ」
重ねた手をどちらからともなく取り合い、指を絡める。
うららかな午後の日差しの中、愛する者の温もりを感じながら、二人の時は静かに過ぎていくのだった。




