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第24話 暴走した魔王に対抗する

 城へと戻ったエリーゼとカインは、そのまま会議室へと直行した。

 近日中に侵攻してくるであろうデヴィール国に対抗するための軍事会議を行うためだ。

 エリーゼも最強の聖女としてウィリアム国の戦力となるため、会議に参加する事になった。


(軍事会議……デヴィール国でも参加したけど)


 まさか今度は敵国で、アゼルと戦うための会議に出る事になるとは複雑な心境であった。

 思惑が何であれ、アゼルを止められるのは自分しかいないとエリーゼは思う。


 会議室内は窓がないが、壁も床も白一色で明るい開放感がある。ここも黒一色のデヴィール国とは正反対である。

 長テーブルにはすでに白い軍服を着た軍人が着席していた。レミアルの後任の将軍と思われるが、その容姿に驚く。


(え……レミアルさんに、そっくり)


 その軍人は茶髪に茶色の瞳。中性的な顔立ちもレミアルと似ている。

 カインとエリーゼがテーブルの前に立つと、軍人が起立して深く頭を下げた。


「初めまして、エリーゼ様。新しく将軍となりましたロイアルです! よろしくお願いします!」


 深刻な事態の割に笑顔で明るくハキハキとしている。それにまだ若い。おそらく20歳のエリーゼよりも歳下だと思われる。

 雑談をしている場合ではないが、エリーゼはどうしてもロイアルの素性が気になって仕方ない。


「初めまして。あの、ロイアルさんは……」

「はい! レミアルの弟、19歳です! 副将軍でしたが、この度、将軍となりました!」


 エリーゼが言い終わる前に全ての疑問の答えを勝手に述べてくれた。しかし、レミアルに弟がいるとは知らなかった。

 同じ城にいたはずなのに会った事がない。副将軍だったらしいが、以前の軍事訓練の時にも見かけなかった気がする。

 それに姉のレミアルが敵国に連れ去られたというのに、この明るさにも違和感を覚える。全く軍人らしくない。

 エリーゼの疑問に満ちた視線に気付いたのか、またしても先手でロイアルが回答する。


「オレ、軍人って柄じゃないのに模擬試合の順位で副将軍になっちゃって。訓練とかもサボってます!」


 ロイアルは人の心が読めるのか、エリーゼの思った疑問に全て笑顔で答えた。しかし、こんなにやる気のない軍人がいるだろうか。戦バカのアーサーとは正反対だ。

 それでも副将軍になるのだから実力は本物だろう。カインもあえて口を挟まずにロイアルの自己紹介が終わるのを待っている。


「でもまぁ、将軍の方が給料いいんで、頑張ります! 以上です!」


 軍事の頂点に立つカインの前で、これだけ無礼な発言が許されるのも実力の証だと思える。内容はともかく悪気がなく清々しい口調なので気に障らない。

 ようやくカインとエリーゼはテーブルに着席してロイアルと向かい合う。臨時会議のせいなのか、会議の相手はロイアル一人なので三者面談のようだ。

 デヴィール国での会議の時と同じように、白いテーブルの上には大きな地図が広げられている。まずはカインが現状を説明する。


「今、侵攻されているのは隣国のサイベリア。ウィリアム国に攻め入るのは数日内だろうね」


 それを聞いたエリーゼは危機感よりも期待で胸が高鳴る。それはアゼルに会えるからだ。

 そんなエリーゼの心など知らないカインはロイアルに策を求める。


「ロイアル将軍、戦略はある?」

「うーん、そうですね……入手した情報によると、アゼル王は侵攻時に聖女を引き連れているという話ですよ」


 その言葉に反応して意識が現実に戻ったエリーゼは思わず話に割って入る。


「聖女ですって!? それってセレンの可能性はある?」

「オレには分かりませんね。セレン様なのか、別の聖女なのか」


 ロイアルにとっては、どちらでも変わらない件なので淡々としている。しかしエリーゼにとっては、どちらであっても衝撃の事実であった。

 逆を言えば、どちらでもないとも言える。アゼルはエリーゼを溺愛しているのだから。


(そうよ、アゼルは絶対に私を見捨てたりはしない。呪いが解けない限りは)


 あんなに恨めしいと思っていた呪いに、救いと安心を求めてしまう。それほどにエリーゼは溺愛という呪いに縛られる事を望んでしまっている。

 そんな話の中でも、なぜかカインは余裕の表情をしている。


「聖女が誰だろうと問題ないね。だって僕には最強の聖女エリーゼ様がいるし」


(ちょっと! なんで私がカイン様に協力するのが当然になってるのよ!)


 エリーゼはカインを睨みつけて脳内で激しくツッコミを入れる。最近、添い寝やらデートやらで調子に乗っているのは間違いない。

 それに、わざわざアゼルに対抗して戦う気なんてない。エリーゼはアゼルの元へ帰れれば、それでいい。

 ロイアルは、カインとエリーゼを交互に見た後に明るく笑った。


「はい、そうですね! 聖女には聖女で対抗すべきです! お二人が愛を深めるのが良案だと思います、以上!」


 なぜか急にロイアルのテンションが上がった。聖女の能力は愛によって高まるので、カインとエリーゼの仲を後押ししている。

 だがその実態は、やる気のないロイアルが王子と聖女に軍事を丸投げしているだけとも言える。


(ぐぅ……どうしてこう、みんなバカなのよ……)


 よく考えてみれば、エリーゼは聖女としてカインに同行しなければ戦線に立てない。どの道アゼルに会いに行くにはカインに協力するしかない。

 そう思って隣のカインを見ると、キラキラとした銀色の瞳と目が合った。その満面の笑顔は明らかに何かを期待している。


「じゃあ、そういう事になったから。よろしくね、エリーゼ様」


(どういう事なのよ!? 私にカイン様とラブラブしろって事なの!?)


 ……そういう事だろう。しかしエリーゼはカインと同行するために『ラブラブ』のふりをするしかない。

 しかし同時にエリーゼは、アゼルが聖女を同行させている事に対してモヤモヤが止まらない。聖女が誰かなんて関係ない。いや聖女なんて関係ない。

 溺愛の呪いはアゼルが側にいなくても、嫉妬という歪んだ愛に形に変えてエリーゼを苦しめてくる。


(アゼル……私以外の女を連れて歩くなんて許さない……絶対に叩いてやる……)


 そんな憎悪を燃やすエリーゼの横で、カインは今夜もエリーゼとの添い寝を楽しみにして微笑んでいた。

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