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氷の上司に、好きがバレたら終わりや 番外編&特別編  作者: naomikoryo


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1/8

番外編①「バレても、終わらへんかった恋のその後」

東京の梅雨明け。

オフィスに夏の空気が流れはじめた頃、舞子はひとり、デスクで缶コーヒーを開けた。


「ふう~……冷えたブラック、沁みるわ~」


本庄さんがロンドンから帰国して、ちょうど2ヶ月。

今では彼は“経営企画室 副室長”として、新プロジェクトの舵を握っている。


舞子は以前と変わらず営業企画部にいるが、プロジェクト支援で週に2回は本庄のチームと動くことが多い。


つまり――


公私ともに隠しようのない接近戦。


「……そろそろ“バレたら終わりや”ちゃうやろ、もう“バレてるやろ”や」


「うん、それな」


後ろから返ってきたのは、佐伯奈々の声。


「ちょっとぉ、ふたりで社食でカレー食べてたとき、あんた“辛っ!”って言うたら課長が水すっ……て渡してたの見たからな?」


「う、うそやん、そんなん完ッ全にバレバレやん」


「てか“バレてても誰も止めん”ぐらい空気ええしな。

冷血って言われてた課長が、あんたの前では普通に笑うようになったし」


舞子は頭を抱えた。


(……いやでも、嬉しいけどな)


確かに、昔の本庄さんと今の本庄さんは、似てるけど全然ちゃう。


誰に対しても冷静で無表情だった彼が、

今は少しずつ、感情を言葉や顔に出してくれるようになった。


それが、うれしい。

ほんまに、心の底から。


でも――まだ会社では「ちゃんと付き合ってる」とは誰にも言っていない。


理由はもちろん、“あの人の照れ”や。


「……社内恋愛って、公にする必要があるのでしょうか」


「あります。こっちは命かけてるんで」


「それは大げさです」


そんなやりとりを何度したことか。


でも、いい。

今の関係が、ちゃんとふたりで築いてきたもんやって、自信があるから。


 


その日の夜。

ふたりは渋谷の路地裏にある、小さなレストランにいた。


予約してくれたのは本庄さん。


「珍しいですね。こういうお店、予約してくれるの」


「……たまには、僕からちゃんと“恋人らしいこと”をしたいと思って」


舞子はニヤニヤが止まらない。


「恋人らしいこと、って。じゃあ、次は“夏祭り”とかどうです?

浴衣とか着て……うわ、想像しただけで萌えるわ」


「……少し考えます」


「ええ~~~考えんと行きましょや~~~」


会話は、いつも自然に笑いになる。

無理して笑わせてるんやなくて、気づけばお互い、笑ってしまってる。


こんな恋があるなんて――ほんまに、人生ってわからんもんやなあと思う。


 


食後、外に出ると夜風が少し涼しくて、

ふたりは自然と並んで歩いていた。


「……舞子さん」


「ん?」


「“バレたら終わりや”って、昔言ってましたよね」


「うん。言うてたな。ビビってたからなぁ」


「僕は今、むしろ“バレても、終わらせない自信がある”と思っています」


「……!」


「もし誰かに何かを言われても、

僕はあなたとの関係を隠さない。

それだけの想いを持って、あなたを選びました」


(……泣く。いや、ほんまに泣く)


舞子は黙って、本庄の腕に自分の腕を絡めた。


「ほんま、うちのこと、愛してくれてるんやなぁって思います」


「……はい。愛してます」


静かな返事やったけど、

それはたしかに、“本庄誠のすべて”が詰まったひとことやった。


 


✿ エピローグ ✿

数日後、社内掲示板にひとつの告知が掲示される。


社内報インタビュー「副室長の横顔」より一部抜粋:

「最近笑顔が増えたと噂されてますが、理由は?」

→「大切にしたい人が、近くにいるので」


舞子はそれを見て、ひとりで顔を覆った。


「バッ……バレてるやん!!」


奈々は隣で爆笑していた。


でも――うれしかった。


“バレたら終わり”やと思ってた恋は、

バレても、まっすぐ続いていく恋に変わってた。


そうやって、今日も舞子は笑っている。


そして、彼の隣に立ち続けている。


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