3.冒険者登録
ギルドの中に入ると奥にカウンター、手前にテーブルがいくつかあり冒険者たちが雑談をしている。
「ふむ、ここでは話しにくいでしょう。奥に行きましょうか」
実に細やかな気遣いができる御仁だ。
カウンターより奥に応接室がある。高位冒険者や特殊な事情のあるものがここに通されることが多い。あとはギルドと冒険者間の密談など。
「あなたが推薦など初めてですな。どういった事情があるので?」
「カヨ、全部話すけどいいかしら?」
「うん、全部任せるよ」
「先程も言いましたが、彼女の名前はカヨで、冒険者志望です。私が推薦します」
ここで止めると大きく息を吸った。
「――彼女は記憶喪失です」
「それはまた、想像の斜め上をいきましたな」
「ですが、冒険者に過去は必要ないですよね? それに私が連帯保証人になります」
「あなたがそこまでいうなら問題はなさそうですな。確かに冒険者に過去は必要ないですしな」
ちらりと意味ありげにセイカを見た。
「さて、カヨ殿。冒険者という職業を理解しておりますかな?」
「魔物を狩ったりする何でも屋、ってセイカが言っていました」
「はっはっはっ、何でも屋とは。良い例えですな」
その通りですがな、と続けるギルマスをカヨはじっと見つめる。
「冒険者ギルドはあなたを歓迎します、冒険者カヨ」
大輪の花が咲いたような笑顔になった。
思わずといった様子でセイカがカヨに抱きついた。苦しい、と腕を叩かれてようやく離した。
「では、こちらの用紙に記入を」
名前、年齢、職業、属性など複数事項ある。
「セイカ。わたし名前以外わからないけど、どうしたらいい?」
「ああ、それは名前だけでいいわよ」
ギルマスは何も言わないからそれでいいのだろう。
「Bランクの推薦となるとEランクからにできますがどうされますかな?」
「それでお願いします」
「あなたたち二人はパーティを組むのかね?」
「ぱーてぃ?」
カヨはその言葉を知らないようだ。
「複数人で一つのグループを組むことよ。組むか組まないかは貴女が決めていいわ」
「組む、組まない……」
迷っている。それはそうだろう。急に選べと言われても選べるわけがない。
「カヨ殿。迷うのならば、組んだ方がいい。セイカ殿はある程度冒険者歴があるし、今のあなた一人では危険だろう」
「わたしとパーティを組んでくださいっ!」
彼女は淡く笑って答える。
「もちろんよ」
セイカが自身のギルドカードを取り出した。
「お願いします」
「では、少々お待ちを」
そう言うとギルマスは応接室を出て行った。
「カヨ、勝手にEランクからにしたけれど、良かったかしら?」
「うん、いいよ。全部セイカに任せるって言ったしね」
暫くしてから、ギルマスが戻って来た。その手にはカードが載ったトレーがある。
「こちらがギルドカードです」
カヨはきれいなカードを手に取った。
「もう少し、冒険者について説明をしておきましょうか」
カヨはカードを見つめていた顔を上げ、真剣な表情でギルマスを見た。
「冒険者というのは……」
要約すると以下のようになる。
冒険者は依頼を受けてそれを達成すると報酬を貰える。
依頼には大きく分けてギルドからのと、一般からのと二種類あるがその二つにあまり差はない。強いて言えば、一般からの方がバリエーションが豊かだ。
また、依頼はランク毎に受けられるものが分けられている。
さらに、冒険者は世界共通の職業である。ランクはGランクからSランクまで。現在の最高はAランクとなっている。
個人で活動も可能だが、ほとんどの人はパーティを組んでいる。パーティでもランクがある。
「……ざっと、こんなものだが何か質問はあるかね?」
「いえ、特には」
「細かいことは私が後々教えていくわ」
「これで、手続きは終了です」
「はい、ありがとうございます」
「これから、依頼を受けるのかね?」
「まずは指導からですね。修練場に行ってきます」
これはセイカが答えた。
「修練場は今修理中でね、暫く使えないんだ」
「そうですか。では、おつかい系から始めてみます」
ギルマスがカヨの方を見た。
「さて、カヨ殿あなたは今日から冒険者です。あなたに戦乙女アルテナの加護があらんことを」
祝福を受け、応接室を出た。
冒険者についての説明は、常識のように感じてしまうかもしれませんが、設定としてはっきりとさせたく、またカヨが知らないので、丁寧に書かせていただきました。




