2.冒険者ギルド
冒険者ギルドは二階建ての大きな建物だ。一階はギルド、二階は宿屋になっている。
看板には冒険者ギルドルミーノ王国王都ラントル支部と書かれている。
二人がさっきいたところ、正確にはセイカが泊まっている宿屋から歩いて十分ほどの場所だ。
人の出入りが激しく、さらに街の喧騒にも負けない大きな声が聞こえてくる。
また一人、冒険者らしい人が来た。といより、セイカたちのほうに向かって来ている。
「何だ女二人で。ここはお前らのようなのが来るとこじゃねえ。もっといいとこ紹介してやる」
下卑た目で彼女らを見ている。品定めするような、吟味するような目だ。
「誰だか知らないけれど、私たちはここに仕事をしに来ているの。邪魔しないでちょうだい」
周囲の群衆は男に絡まれた哀れな二人と思っていたが、セイカの言葉に驚いた。
セイカは知らないと言ったが実はこの男、この辺りでは有名な人物なのだ。エセのCランク、と。働き口を探していそうな少年少女を見つけるとCランクであることをひけらかし、金持ちに売りつける、というあこぎな商売をしている。冒険者のランクは誰でもわかりやすく、かつ高位だと信用を得やすい。
だから、周囲も哀れな子羊が捕まったと思うのだ。
取り押さえようにも並の冒険者よりも強いし、衛兵を呼んできても冒険者同士の会話だと強引にはぐらかされ、捕まえられない。
「このCランク冒険者のオレを知らないだと!」
「ええ、そうよ。たかがCランクで威張らないで。カヨ、行くわよ」
セイカはまるきり無視して、ギルド内に入ろうとする。
「このオレをたかが、だと! いいだろう、思い知らせてやる!」
男が大きな両手剣を抜いた。非力そうな少女相手に抜剣した男をさすがに周囲も押さえようとした。
その時、一人の人物がギルドから出てきた。セイカと集まった人々はその初老の男性に気付いたが、目の前の男は気付いていないようだ。
「なんだ、結局怖気づいたか?」
男は煽るように言うがセイカは冷静だ。
「いいえ、もっといいのがあるわ。ギルドマスター」
ようやく男も気付いたようだ。
「ぎ、ギルマス! これはっ!」
「とりあえず、両者ともギルドカードの提出を」
セイカの出したギルドカードを見て、男が血相を変えた。
「Bランク冒険者……! ってことはお前」
「わかったかしら? たかがCランクが仕事の邪魔をしないで」
Cランクも十分に強いが、Bランクはより一線を画す。
もっとわかりやすく言うなら、Cランクまでなら頑張ればで誰でもなれる。だがBランク以上は無理だ。圧倒的な強さが必要となる。
「さて、弁明はありますかな、オルセイン殿?」
「……っく」
男、オルセインは羞恥に顔を染めた。反対に群衆は驚き、ざまあみろという感じだ。
あいつの名前、オルセインだったのか、とも聞こえてくる。エセのCランク、という名前は広まっても本名は広まらなかったようだ。
「ないようですね。では、Cランク冒険者オルセインをDランクへと降格する」
「ギルマス! どうかそれだけはっ!」
ギルマスから穏やかさが消えた。
「お前は今までの所業をギルドが見逃していたと思っているのか! 被害者たちが被害を訴えて来なかった、いや訴えられなかったからだ。今度見つけたら降格だけじゃ済まさぬからな! 衛兵に突き出してやる!」
オルセインは憤怒の表情のままギルドカードをひったくるとそのまま走って行った。
「ギルマス、ありがとうございます」
「いやいや、むしろそのままの方が良かったか。そうなればあいつも少しは大人しくなっただろうかの」
「私よりギルマスの言葉の方が重いですよ」
セイカの服がちょんちょんと引っ張られた。
「セイカ、大丈夫なの?」
「大丈夫よ。カヨの方が大丈夫? 怖かったわよね」
「ううん、わたしはずっとセイカが前に立っていてくれたから」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
「セイカ殿、そちらは?」
「この子はカヨ。冒険者志望の子です」
「ぞうでしたか。では中に入って話しましょうか」
周りの野次馬は既に散っているが、まだ少し残っている。
オルセインは、筋骨隆々、見るからにガラの悪い奴というイメージです!




