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5周目の人生で異世界を救った話   ~5人目の転生者を英雄へと仕立て上げる兄と、仕組まれた運命に抗う少年~  作者: MINMI
四章 中央国家バルテミア編

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4-5「暗躍する特従①」



(西側地区 魔術士会本部)


 西側地区では、エクスプロドとカレンハートの二団が持ち場となっていた。


 カレンハートとは、女性戦士二名のみで構成された上級戦士団である。


 女性二人だけの上級戦士団という珍しさから階級以上に知名度が高いが、その実力も本物だった。


 特に団長カレンは、ある特徴的な応徳魔術の使い手として知られている。


 ――[毒]。


 正確には、腐食・麻痺・睡眠など、様々な状態異常を付与する魔術を得意としていた。


 そんなカレンハートと、ダース達エクスプロドは持ち場である魔術士会本部へ到着する。


「ここか、魔術士会本部。」


 ダースは三階建ての建物を見上げる。


「意外と小さいな。

 で、おたくらがカレンハート?」


「ええ、そうよ。

 あたいが団長のカレン。

 あなたがエクスプロドのダースね。“新星”と同じ配置なんて光栄だわ。」


「ふっふ、そうか。そうだな。

 それで、あんたらはどこで待機するんだ?」


 ダースは露骨に機嫌を良くしながら尋ねる。


「そうね。あたいたちは周辺を見回りながら待機するわ。

 あなたたちは見晴らしの良い屋上で警戒してくれる?」


「了解した。」


 ダース達は階段を上がり、屋上へ向かう。


「あの人たち大丈夫なのかな?

 あんまり強そうじゃないけど。」


「まぁ、味方がどうあれ、俺達は敵を倒すだけだしな。」


「はっは。さすが団長。その通りだ。」


 三人は屋上へ出て周囲を見渡す。


「特に異常はねぇな……」


「団長! あそこを見てみろ!」


 ローグベルトが異変に気づき、ダースへ声を上げる。


「あ……あれは……」


 遠くに見えるバルテミア城から、黒煙が上がっていた。


 バルテミアは主要都市機能が東側へ集中している。


 戦士協会やバルテミア城もやや東寄りに位置しているため、西端にある魔術士会からは視認しづらい位置だった。


「ダース、戦士協会の方も何か異変が……」


 今度はクレディアが、戦士協会付近に舞い上がる大量の土煙へ気づく。


「……もう始まってるのか?

 お、おい! あいつら、カレンハートを呼び戻せ!」


 ダースは慌てて周囲を見渡す。


 その瞬間――


 三人の足元が淡く光った。


 直後、足裏から激しい電流が走る。


 痺れは一瞬で全身へ広がり、身体が硬直した。


 力が抜け、三人は膝から崩れ落ちる。


「これは……なんだ……」


「うぅ……」

 


「あたい達を探してるのかい?」


 屋上の扉が開き、カレンがニヤリと笑いながら姿を現した。


「これはどういうことだ……」


「私の[麻痺]の魔術を、この屋上に仕込んでおいたのよ。」


「お前……まさか、緋従者(ひじゅうしゃ)なのか?」


 緋従者(ひじゅうしゃ)――。


 魔人ではないが、緋眼の魔人に(くみ)した人間。


 つまり、カレンは魔人側の内通者だった。


「悪いわね。まぁ、そういうこと。」


「まさか、上級戦士に敵のスパイがいるなんて……」


「それにしても滑稽ね。エクスプロドのダース。」


「なん……だと。」


「初対面のあたい達を簡単に信用して、こんな土も何もない屋上へ出るなんて。

 間抜けったらありゃしないわ。」


「くそ……お前!」


 その時――


 コツ、コツ、と足音が響く。


 屋上の扉が開き、一人の魔人が現れた。


 その姿を見た瞬間、背筋が凍る。


 本能が理解する。


 ――明らかな強者。


 カレンハートの二人は、その男を見るなり片膝をついて頭を下げた。


「終わったか?」


「はっ。上級戦士団を拘束中であります。」


「そうか。ならすぐ済ませろ。私は次へ向かう。」


「は。承知しました。」


 魔人はダース達を一瞥すると、そのまま立ち去ろうとする。


「おい、待て。」


「何か用か?」


 魔人はダースは睨みつける。


 だが、魔人は哀れむような目で見返した。


「お前……緋衣の十魔(ひえのじゅうま)か?」


「いや。

 私は征魔様の特従(とくじゅう)――アルバート・レイだ。」


(特従……天級以上の実力者……)


「では、後は任せるぞ。カレン。」


 アルバートは屋上から飛び降り、その場を去る。


「おい! 待て!」


「あんたなんか、アルバート様には眼中にもないんだよ。

 あたいが痛くないよう毒であの世に送ってやるから安心しな。」


「ふっ……わかってねぇなぁ。」


「……?」


 次の瞬間。


 クレディアが上空へ跳び上がった。


「上級魔術――高密火炎光射(フレアレイ)!!」


 杖から激しい炎が放たれる。


「なっ……レイア!」


「はい!」


 カレンハートの隊員レイアは瞬時に前へ出て防御魔術を展開し、炎を受け止める。


「なぜ動ける……」


「私は回復魔術も扱える魔術士よ。

 麻痺程度なら解毒魔術で簡単に治せるわ。」


「かかったフリをしていたのね……忌々しい。

 でも、あんた一人じゃ勝てないわよ。


 それに、解毒できると分かった以上、あの二人は絶対治させない。どうするつもり?」


「お前は一つ勘違いしている。」


 地面へ横たわったまま、ダースが低く笑う。


「この屋上じゃ俺の魔術は使えない。

 ……お前はそう言った。


 だが、俺だって日頃から修行してんだよ。」


「何が言いたいのよ。」


「俺の力を舐めんなって言ってんだ。」


 その時。


 カレンは異変に気づいた。


 魔術士会本部全体が巨大な影に覆われている。


「これは……」


 周囲を見渡す。


 すると、大地そのものがせり上がり、巨大な土壁となって建物を包囲していた。


「触れてないのに……!?」


「触れてなくても、ある程度の距離なら大地を操れるようになってんだよ!!」


「っ……くそぉ!!」


 大量の土砂がカレンハートへ襲いかかった。


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