96.山の王ランダロス
3人はベルベストタイガーの子供を抱え、斜面を登る。
「あれだ……」
目線の先には巨大な洞穴が見えている。
今のところ、他のベルベストタイガーの姿はない。
「ここら辺まで来れば大丈夫かな?」
3人がベルベストタイガーの子供を置こうとしたその時だった。洞穴の中から、二頭のベルベストタイガーが走り出て、カルマたちの目の前で威嚇する。
「ガルルッ!」「ガフッ!」
「くっ……」
カミルとハウロスはカルマの前に出て武器を構える。
「ガアアアァァ!!!」
すると、洞穴の中から、大きな獣の声が鳴り響き、周辺の大地が震える。
そして、4〜5m程の高さはあるであろう洞穴を天井スレスレを歩く、巨大なベルベストタイガーが現れる。
「この間のやつだ……」
「近くで見ると…やはり大きすぎるな。」
巨大なベルベストタイガーは悠然とカルマたちの方へ向かって歩く。
最初に向かってきた二頭は後ろにさがり、控えている。
「私達は動けなくなっていたこの子を送り届けただけだ。先頭の意思はない。」
カミルは巨大なベルベストタイガーへ向けて話しかける。
「カミル…通じないんじゃ…」
「グルルル」「ガルル……」
後ろに控えた二頭のベルベストタイガーが唸り出す。
「お前らは下がれ!」
「……!!」
なんと。巨大なベルベストタイガーは二頭のベルベストタイガーに向けて言葉を話し、下がるように指示をした。
「言葉を……話した?」
二頭のベルベストタイガーは振り返り洞穴へと帰っていく。
「我が一族の子を助けてくれたこと礼を言おう。」
「喋れるのか?」
「ああ、我の名前はランダロス。一族の長を務めている。」
「ランダロス……この前はよくもやってくれたな。」
「ちょ…ボス」「カルマよせ」
「わはは、威勢の良い人間だな。我を前に怯まなかった人間は2人目だ」」
「2人目?」
「100年以上前に私の額に傷をつけた戦士以来だ。
それに、先日のことはお前らが我が一族の縄張りに入ったからだ。まあ、そのことは許してやる。
さぁその子を」
「ああ。」
カルマはベルベストタイガーの子を地面に下ろす。
「さあ、行きな。」
「感謝する。人間。」
「俺はカルマだ」
「俺はハウロス」「私はカミルだ。」
「ふっ…人間と対話などいつぶりだろうな。
お前達はどこに向かうつもりだったんだ?」
「ベルベスト山を越えて、コロラド連邦領まで」
「そうか。なら、我らが連れて行ってやろう。この子を連れてきてくれた礼だ。」
「え!?」
「山の向こうまで?」
「ああ。」
カルマ達は驚きのあまり顔を見合わせる。
「少し待っていろ」




