1-2「兄の名はダグラス③」
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その日の夜、久しぶりに家族四人で食卓を囲んだ。
父も母も、どこか安心したような顔をしている。家にダグラスがいるだけで、空気が違った。
「そうだ。お父さん」
食事の途中、ダグラスが口を開く。
「カルマに、剣と魔術の師匠をつけたいと思うのですが」
箸を止めたバトロフが眉を寄せる。
「まだ少し早くないか? カルマは九歳になったばかりだぞ」
「そんなことはありません。台頭していく強い戦士たちは皆、十歳になる前から本格的に学んでいます。それにカルマは既に初級魔術を扱える。独学を続けるより、正しい導き手をつけるべきです」
「うーむ……」
父は腕を組み、低く唸る。
「戦士協会の訓練校はどうするのだ。あと一年で入学できる」
「訓練校では基礎止まりです。優秀な師匠がいれば、入学の必要はありません」
「剣は兄さんが教えてくれるんじゃないの?」
カルマの言葉に、ダグラスはわずかに目を細めた。
「すまんな。俺はしばらくこの街にいるが、依頼が入れば出ることになる。付きっきりは難しい」
「……で、誰に頼む気だ」
父の声は低い。
ダグラスは迷いなく答えた。
「心当たりがあります」
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それから三週間後。
今日の午後、カルマの師匠になる人物が来るらしい。
落ち着かないまま、カルマは午前中にイリーナの家を訪れた。
「こんにちはー」
扉の向こうからイリーナの母親の声がする。
「カルマ君、ちょっと待っててね」
最初はイリーナの母親から警戒されていた。名前のことで苦労してきた家だからだろう。
それでも最近は笑顔を向けてくれるようになった。それが、カルマには嬉しかった。
やがてイリーナが外へ出てくる。
「おはよう。今日は魔術の練習?」
「それなんだけどさ……当分できなくなりそう」
「えっ!?」
カルマは事情を説明する。
.....
「修行かあ……すごいね。でも寂しいな」
「ごめん。でも強くなりたいんだ」
イリーナはすぐに笑った。
「私も特訓する! もう少しで回復魔術できそうなんだよ!」
彼女は攻撃魔術より回復に興味がある。優しい性格そのままだ。
「師匠ってどんな人なの?」
「それが……ちょっと心配でさ...」
両親の顔が曇っていたのを思い出す。
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***回想***
ダグラスが父と母にカルマの師匠候補について説明している。
「魔術・剣術ともに天級に至った人物です。フィルス・アラモ・ディリア」
「……狂戦士フィルスか?」
「はい」
「天級のそこ技術は認める。だが……危険な人物だと聞くが…」
「昔の話ですよ。今はすっかり大人しくなったものです。」
「……そうか」
「はい。俺が保証します。それにこれはとある信頼できる人物からの推薦でもあるのです。」
「誰の推薦だ?」
「天才魔術士とまで呼ばれる天級戦士です。」
「なにっ...あの方の推薦なのか?」
「ええ。」
父は長く沈黙し、やがて頷いた。
「わかった。おまえがそこまでいうんだ。それがカルマの為になるんだろう。」
「ありがとうございます。お父さん。」
***回想終了***
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「なんか心配だね……」
「うん……」
「無理だと思ったら言いなよ。私がお兄さんにガツンと言ってあげる!」
イリーナの言葉にカルマは笑った。
「その時は頼むよ」




