80.グロウスの過去
「やった……か?」
「ふぅ。」
2人は体の傷と安心からその場に座り込む。
「さすがはミルズ三傑、2人がかりでようやくだ。」
「ああ、本当だ…… あ、!!」
ハウロスは驚いた、それは意識を朦朧とさせる様子をみせながらもゆっくりと立ち上がろうとしているグロウスの姿だった。
「ゴードン様と語った…強い国にする為に…」
「?」
グロウスの体は既に限界を迎えていた。だが、彼は立ちあがろうとすることを辞めない。それは、今は亡き恩人と見た夢の為…
〈グロウスの回想(グロウス視点)〉
このミルズ王国は昔、大国カイルディアとコロラド連邦に挟まれた、戦争の絶えない国だった。
国内にはよく炎が上がり、敵国の兵が走り、国民は困窮していた。
グロウスもそんな戦争孤児の1人だった。
幼き日のグロウスは食べるものもなく乞食の様な生活をしていた。
そんな時、街の中を見るからに国の重鎮と思われる人物が馬車に引かれ移動していた。
グロウスはそんな馬車の前に飛び出した。
「なんだ貴様!」
兵士達がグロウスに叫ぶ。
「兵士でもなんでもいい。僕に仕事をください…」
「何を言っているこのガキ…」
「待て!」
グロウスを排除しようとする兵士を見て
馬車の中から男が現れ、それを制止した。
「仕事が欲しいのか…?」
グロウスは返事をすることなく、ただ頷く。
「そうか。なら一緒に来なさい。」
「なっ!?ゴードン様?」
「いいんだ。出しなさい。」
その男はこの国の王であるゴードンであった。
グロウスはそれからゴードンに兵士として育てられた。
グロウスはどんどんと強くなり、ミルズで随一の矛の使い手となった。
ゴードンはある時、グロウスに話をし始める。
「この国は戦争が多すぎる……。
何度も他国が侵略し、土地を奪われたり防いだり、その度に兵士は疲弊し、君のような戦争孤児も出る。
私はねグロウス、他国がこの国を攻めることを諦める程、強くなりたいと思っているのだよ。
そうすれば、国民が傷つくことも、君のような孤児が出ることもないだろう。」
ゴードンのその言葉はグロウスの胸を打った。国の主が民のことを想い憂いているのだ。グロウスはゴードンの力になるために生きようと決心した。
「ゴードン様、僕も陛下と共にこの国を強くするために命をかけます。」
「はっはっは。心強いな。グロウス。頼んだよ。」
それからグロウスは、元天級の戦士だという男が、故郷であるこのミルズに戻ってきているという噂を聞きつけ会いに行った。
そして、ガーディスとラミをゴードン様と引き合わせ"ミルズ三傑"を作った。
それから、ミルズは強くなった。攻められても守ることができるほどに。
特に元天級の戦士ガーディスは強かった。グロウスは彼に筆頭剣士の座を譲り、ミルズ三傑は他国にも名が広がり、今では攻めてくる国もほとんどなくなった。
〈回想終わり〉




