78.最強の盾
ハウロスは膝から崩れ落ちる。
「はは、あっけなかったね〜」
「勝ったと思った瞬間に隙が生まれる……」
「……?」
地面に切り裂かれて転がっている多くの魔鋼が、突然変形し、グロウスの体を貫く。
「……がっ!?」
「へっ、これでおあいこだ…」
「く…そ、触れていなくても変形ができたのか?」
「どうした?余裕な口調が無くなってるぜ?
魔鋼は魔力が届く範囲なら直接触れなくても変形させられる。俺は生まれつき魔力のコントロールが上手いんだ。3mくらいまでの位置なら魔力をコントロールできる。」
「許さないぞ…きさまぁ!」
グロウスは体に刺さった魔鋼を抜き取り、怒りの表情を浮かべてハウロスに向かう。
ハウロスも負傷した肩を抑えながら立ち上がり、周囲に自分の魔力を高める。
そして、複数の魔鋼を伸ばし、グロウスに向かって攻撃する。
「うぉぁあ!」
グロウスは雄叫びを上げながら矛を高速で振り回し、全ての魔鋼を切り裂き、塵にする。
(こいつ、キャラ変わりすぎだろ…)
そして怒りの感情を露わにしたグロウスはハウロスの前までくると、矛を振り上げる。
(ここまでか……)
「おらぁぁ!」
その時、エクスプロドのローグベルトが突然現れ、以前には装備していなかった盾を構えながらグロウスに突進する。
「あんたは……確か」
「がはは、俺はエクスプロドのローグベルトだ!
団長の命令でお前を助けてやる!」
「お、おいっ!前みろ前!」
ローグベルトがハウロスの声に振り返ると、グロウスが矛を振り上げローグベルトに斬りかかろうとしていた。
ローグベルトはすぐに盾を構え、防御の体制を取る。
「ま、まて!そいつの剣は…!」
ハウロスの言葉が届く前に、グロウスはローグベルトに向かって矛を振り下ろす。
「!!!」
「なぜ斬れない…」
グロウスのどんなものでも切断するはずの矛はローグベルトの盾を切断することなく防がれている。
「ん?何を驚いている。」
「あいつの矛はなんでも貫き切断する応徳魔術が付与されてるんだよ。おまえのその盾はなんなんだ?」
「ふっふっふ、この盾はなぁ、
約50年前に活躍した、"最強のタンク"戦士デグルの盾だ。」
(戦士デグル、確かフリーの天級戦士だが、圧倒的な防御力を売りに各戦士団任務に呼ばれていたという…)
「最強の盾か…」
「がはは、そうだ。フレアローズが緋衣の十魔を倒すことができたのも彼が同行していたことが大きい。」
(うるさいなこのおっさん。だが、これなら…)
ハウロスは立ち上がり、ローグベルトと共に剣を構える。




