77.最強の矛
場面は変わり、ハウロスはカミルと別れ3階を進む。
何人かの逃げ惑う王族の姿が見受けられたが、敵の姿はない。
「よし、このまま階段を見つければ、お母さんのいる4階だぞ!」
「うん!」
ハウロス達は4階の階段は向かうため、廊下を走り抜ける。
「...!」
ハウロスは階段の前まで来て足を止める。
階段の前には矛を持った細身の若い男が立っていたからだ。
「やはり現れたか…ミルズ三傑、矛使いのグロウスだな。」
「ここまで来るとはね。でもここは通さないよ。」
グロウスは軽い口調でニヤリと笑みを浮かべながら槍を構える。
(おそらくボスとカミルがあと2人の三傑を抑えてくれてる……こいつさえ倒せば……)
「笑いが、通させてもらう!」
ハウロスは魔鋼を剣に変形させグロウスへ向かう。
直前で剣を伸ばし長剣へと武器の形状を変え、振り上げる。
「魔術で変形?いや…魔鋼か」
ハウロスはその長剣を振り下ろすが、その瞬間、グロウスは矛を一回転させ、素早い剣速で矛を横に薙ぎ払う。
「……!?」
すると、ハウロスの長剣は両断され、剣先が近くに刺さる。
「最高硬度まで凝縮した魔鋼だぞ……?鋼より硬いはず…」
ハウロスは驚いた。魔鋼は変形するため柔らかい素材と思われがちだが、凝縮度合いによってはどんな素材よりも固くなる特徴がある。
ハウロスは変形のコントロールができるように硬さの度合いもコントロールすることができ、今両断された剣は最高硬度に凝縮したものだった。
「驚くのも無理はないよ。これが僕の応徳剣術 どんなものでも貫き、切断する〈最強の矛〉だからね。」
グロウスはそういうと、矛をくるくると回転させる。
その刃先に触れた地面や壁が切断されていく。
「出鱈目な能力だな…」
グロウスは次々と攻撃を繰り出し、ハウロスを追い詰めていく。
ハウロスも魔鋼の形を変えながら攻撃を受け流していくが、ハウロスの魔鋼はどんどんと切り裂かれていき、欠片が地面に散らばっていく。
ハウロスは多くの魔鋼を仕込んでいたが、底をつき始めていた。
「……っくそ!」
ハウロスは手に持っていた魔鋼を全て切り裂かれると、グロウスから距離を取る。
「底をついたんだね!じゃあおしまい!」
グロウスは矛を振り上げ、ハウロスに近づく。
「がはっ!」
グロウスが素早く踏み込んだ瞬間、ハウロスの肩から血飛沫が噴き出る。




