73.ミルズ王国の真実
カルマの不安は的中した。ガーディスはいとも簡単に立ち上がる。
その腹部は服が切り裂かれ、腹にも横一線の傷が付いてはいるもののその傷は浅かった。
「直撃の瞬間に自ら後ろへ下がったのか?」
「なるほど。確かにお前達は強い戦士になる資質はありそうだ。私がここまで手こずるとは……
だが、運が悪かったな。お前達はここで倒れる。」
「まずい!」
カルマはダースの元へ向かう。ダースもカルマの冷気に凍りついていたからだ。
「遅い……」
カルマより早くダースの前にガーディスが移動する。
「……っくそ!」
ダースは周囲の土を操ろうとするが、その瞬間ガーディスの太刀を浴び、倒れ込む。
「が……」
ガーディスはすぐにカルマに向き直ると、カルマに持っていた剣を投げつける。
剣はカルマの頬をかするように後方へ飛んでいく。
「……!!」
気づいた時には遅く、ガーディスはカルマの後方へ瞬間移動している。
ガーディスはカルマの背中に攻撃する。
「がは……」
カルマもその場に倒れ込んでしまう。
「2人とも致命傷は与えていない。だが、もう立つことはできだろうからこのまま拘束させてもらう。」
「ふざけんなよ……」
「……!?」
カルマは剣を地面に刺し支えながら立ち上がる。
「なぜまだ立つ……」
「お前みたいな剣士がなぜあんな王についてんだよ。」
「私は先王ゴードン様の忠実なる剣士。
そして、我が王が、ドルドス様を次の王へと選んだ。
ならば、私はゴードン様が選んだ彼の方に忠誠を尽くすのみ……」
「それは違うな。」
「なに!?」
「先王ゴードンはドルドスを選んでなどいない!」
「何を言っている。ゴードン様が遺した魔導符を私も直接見ている。」
「ガーディス、ユバルバという闇商人の男を知っているか?」
「ユバルバ?(どこかで聞いた名だ……)」
「ユバルバは元々、先王ゴードンの時代に王宮魔術師としてドルドスに仕えていた。」
「あの……老魔術師か…」
「そうだ。そしてユバルバにはある応徳魔術を持っていた。」
「応徳魔術だと?このミルズは魔術士の教育にあまり力を入れていない。応徳魔術士を持った魔術士など聞いたことがないぞ。」
「ああ。それはそうだ。なんせ、ユバルバの応徳魔術は戦闘では何の役にも立たない物だったからな。」
「何だ。その魔術とは」
「"魔力模倣"だ。」
「……!!」
「ユバルバは他人の魔力の特徴を模倣し同形質の魔力になることができる。」
「そんな魔術に何の意味がある。」
「そうだ。基本的に使い道はない。魔術を追い求める中で偶然編み出したものらしい。
だが…ドルドスはその魔術に目をつけた。
ユバルバはドルドスの指示で魔導符を作らされたそうだ。」
「まさか……」
ガーディスは眉間にしわをよせる。




